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リアクション
★ ★ ★
「ミーナの尻尾トリミング店ですー。今なら、臨時開店セールで、ただで獣人やゆる族の皆さんの尻尾をもふもふ……、いえ、トリミングしてさしあげますー。どうぞ、お気軽に御利用くださーい」
公園の中央付近にいくつかの椅子と簡易ベッドを出して、ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)が呼び込みをしていた。
趣味と実益を兼ねた臨時出店である。
「ん。きゅー? んきゅ。きゅ。」
さっそく集まってきたお客さんを、立木 胡桃(たつき・くるみ)が案内していく。
「よーし、始めよーかー。フランカ、お願いねー」
「はーい。じゃあ、最初に霧を吹きますですー」
ミーナ・リンドバーグに言われて、お手伝いのフランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)が、ベッドに横になった獣人のお客さんのふさふさの尻尾に、ハーブ入りのお水をシュッシュッとスプレーした。ふわあっと広がる香りの中、ミーナ・リンドバーグがブラシで尻尾の毛を綺麗に梳っていく。
絡んでいた長い毛が綺麗に解けて揃うと、ハサミを持ったミーナ・リンドバーグが毛先を綺麗に揃えるようにカットしていく。枝毛も丁寧にカットして、のばしっぱなしだった尻尾が綺麗な形になった。
「はい」
「ありがとー」
フランカ・マキャフリーから充電式のドライヤーを受け取ると、ミーナ・リンドバーグがトリミングした尻尾を乾かし始めた。もふもふ、もこもことしながら、熱い風をあてていく。むくむくと起きあがっていく尻尾の毛が、ふわふわに変化していく。
「うん、いい感じだよね」
ほっペたに尻尾をスリスリしてふわふわ具合を確かめながら、ミーナ・リンドバーグが言った。
「はい、完成だよ」
「ありがとう。また、お店を開いたら教えてよね。絶対来るから」
できあがりに満足して、お客さんが帰っていく。
「はい、次の人ー」
フランカ・マキャフリーが、次のお客さんを案内するように立木胡桃に声をかけた。
「んきゅきゅきゅぅー」
なぜか、お客様の案内をしていた立木胡桃の悲鳴が聞こえてくる。
駆けつけたフランカ・マキャフリーが、太い腕でいきなりだきしめられた。
「ふふふふ。かわいいんだな。早く、僕ももふもふしてほしいんだな」
なぜお前がここにいるという感じのモップス・ベアー(もっぷす・べあー)が、両腕に立木胡桃とフランカ・マキャフリーをだきしめあげてミーナ・リンドバーグに近寄ってきました。
「うっ、可愛くな……いらっしゃいませー。どーぞー」
他のお客様の手前、拒絶するわけにもいかないと、ミーナ・リンドバーグがモップス・ベアーをトリミング台であるベッドの上に案内した。
「きゅうー」
「もういやー」
開放された立木胡桃とフランカ・マキャフリーがあわててその場から逃げだす。
「ええっと、尻尾は……」
ドスンとモップス・ベアーが乗ってたわんだベッドを心配しつつ、ミーナ・リンドバーグが尻尾を捜してお尻を見た。あまり見たくはなかったが……。
尻尾、尻尾、尻尾……。
あった。
ちょこんと、小さな尻尾が、申し訳なさそうにモップス・ベアーの巨大なお尻にくっついている。ちなみに、もふもふ度は0である。
さすがに着ぐるみについているなけなしの毛を切るわけにはいかないので、毛玉カッターで、固まってしまった毛だけを切り取っていく。少し禿げた所には、他のお客さんから刈り取った毛を接着剤で貼りつけていった。いっそ、ふわふわの毛に改造しようかとも思ったが、さすがにそれはやめる。想像したら、怖いことになってしまったからだ。
「はい、終わりました」
ふうと、大きく息をついてミーナ・リンドバーグが言った。我ながら、よくやり遂げられたものである。
「どっせー」
モップス・ベアーが、ドスンとトリミング台から下りる。
「ふふふふ。これで、男前が更に上がったんだな」
意気揚々と、モップス・ベアーが可愛い男の子をナンパしに出かける。
「なんか、悪夢だったんだもん。口直しに、とびきりのもふもふ尻尾カモーン」
気を取り直すと、ミーナ・リンドバーグは新しいお客さんを出迎えた。
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