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今日はハロウィン2023

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今日はハロウィン2023
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リアクション

「……イルミンと言えば双子、双子と言えば嫌な予感だが……」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は祭り始まって早々溜息を洩らしていた。
 実はすでにその嫌な予感は的中済みなのだ。
「マスター、私、昨年学習した事を活かし精一杯はろうぃんを満喫致したく思います。すでに沢山お菓子を交換しましたし」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は大量のお菓子にほくほく顔。実はお菓子のほぼ3分の2はベルクが少し目を離した隙に交換した物なのだ。
「……双子とな」
 ベルクはツッコミを入れた。つまりほぼ双子菓子という事なのだ。当然全て悪い方の悪戯付き。
 その事に溜息をついているのはベルクだけ。
 当のフレンディスは
「はい。どれも美味しいそうですからこれを配って満喫しましょう。何だか楽しくなりそうですね」
 可愛らしく包装された悪戯菓子にハロウィンへの期待を込めていた。貰う際に双子に言われた言葉をすっかり信じている模様。
「……あぁ、せっかくのハロウィンだし楽しまないとな(あの不吉な菓子は見ない事にするか)」
 双子菓子を見なかった事にしてベルクはハロウィンコスで無邪気に喜ぶフレンディスの姿をしっかりと目に焼き付ける事に決めた。年に一回の貴重な日なので。
「マスター、ポチ達も今頃、シーサーさん達と楽しんでいるはずですから私達も遊びませぬか?」
 フレンディスは勇気を出して誘った。なぜならベルクが例の魔術師などの騒ぎで疲れているのを癒したく思ったからだ。ただ、デート認識で誘ったのは内緒だが。
「そうだな(……自分に被害が無かったらいいか。どうせ死ぬような悪戯じゃねぇし)」
 ベルクは双子被害について無視を決め込む事にして恋人との時間を楽しむ事にした。これまでの事で双子の悪戯の程度は知っているので何も問題は無い。

 そして、ベルクはフレンディスが双子菓子を配布する様子を予定通り見守っていた。
「美味しいお菓子ですよ」
 ハロウィンの合い言葉を言われるとフレンディスは迷わず双子菓子を渡して被害を拡大させていった。
「マスター、はろうぃん楽しいですね」
 本人は被害については何も気付いていない。
「そうだな(随分減ったな……まー、悪戯菓子の被害でとっちめられるのは双子の方だから気にする事はねぇか)」
 フレンディスが楽しむ様子に和むベルクは随分減った双子菓子を一瞥しつつ答えた。ちなみに心のつぶやきは後ほど現実化した。
 しばらくして
「トリック・オア・トリート!」
「ご主人様、来たのですよ」
 ペトラとポチの助がお菓子を貰いにやって来た。
「ポチにペトラちゃん、可愛いです。どうぞ、双子さんに貰った美味しいお菓子です」
 フレンディスはシーサーになったポチ達と目線を同じくしてから双子菓子を手渡すのだった。
「……フレイ」
 さすがにスルーという訳にはいかないが止めるタイミングを外したベルク。
「うわぁ、おいしそう。ありがとー」
 ペトラは嬉しそうに受け取った。
 双子の騒ぎによく関わるポチの助は
「……ご主人様」
 明らかな警戒の色を浮かべていた。
 しかし、
「ポチさん、だいぶお菓子が集まったからあっちで食べよう」
 ペトラは近くのベンチを指さして雌雄のシーサーと一緒に少しばかりポチの助の一歩先を行く。
「……分かったのですよ」
 決心したポチの助はフレンディスからお菓子を貰い急いだ。
「可愛いですね」
 駆けるポチの助達の姿に和むフレンディス。
「……まぁ、大丈夫だろ」
 ベルクはペトラについてはポチの助が何とかするだろうと読んで双子菓子の被害は心配しなかった。

 近くのベンチ。

「シーサーさん、マスターのクッキーおいしいでしょ」
 ペトラは美味しそうにアルクラントのクッキーを食べるシーサー達に笑いかけていた。
 そんなペトラが自分が食べる用に取り出したお菓子は
「僕たちもお菓子を食べようか。まずはポチさんのマスターさんに貰ったお菓子を」
 フレンディスに貰った双子菓子。
「ペトラちゃん、そのお菓子とこれを交換しませんか」
 危険性を知るポチの助はペトラを双子菓子から守ろうと安全なお菓子との交換を提案。 ペトラを傷付けずに速やかにお菓子を回収するためにポチの助が考えた方法だ。被害に遭って悲しい顔をするペトラを見たくないから。
「交換? いいよ」
 何も知らぬペトラはあっさりと交換に応じた。
 その後、ポチの助とペトラは交換したお菓子を食べる。
「お菓子おいしいね……ポチさん!! その体……」
 交換したお菓子を楽しみながらペトラは隣のポチの助の方を見た。
 途端、言葉に驚きが混じった。
 なぜなら
「……体が光ってるのですよ」
 ポチの助の体がオレンジ色にぴかぴかと輝いていたのだ。
「ポチさん、とっても綺麗ですごいよ!! ねぇ、体は大丈夫?」
 ペトラは驚きを含む弾んだ声を上げるもポチの助の身を心配する事は忘れない。
「……大丈夫なのですよ」
 ポチの助は即答。シーサー達は光るポチの助を興味津々な様子で吠えていた。
「……もしかして」
 ふとペトラは先程のやり取りを振り返り、交換の理由に思い当たっていた。
「どのような効果なのか気になっただけなのですよ!」
 ポチの助はペトラに抱く複雑な心と性格でツンとする。
「ありがとう、ポチさん」
 ポチの助の優しさを知るペトラは嬉しそうに感謝の言葉を口にした。
「……いいのですよ」
 と、ポチの助は一言だけ口にした。ペトラに感謝されて満更でもないようだ。
 とにかく四人はまたお菓子を貰いに歩き始めた。輝く可愛いシーサーポチの助が人寄せとなりたくさんのお菓子をゲットする事が出来た。当然、ペトラは大喜び。ちなみに悪戯菓子はキスミ作であったため効果は本日中に切れたという。

 一方、フレンディス達。
 可愛いシーサーにお菓子を渡してしばらく後。
「ハッピーハロウィン」
「良かったらクッキーはどうかな」
 シルフィアとアルクラントに遭遇した。
「美味しそうですね。ありがとうございます。では、こちらも」
 アルクラントの手作りクッキーに対してフレンディスが出したのは例のお菓子。
「どれも美味しそうね」
 可愛らしく包装されたお菓子に楽しそうに目を迷わせるシルフィア。
「はい。双子さんに貰ったお菓子です。ポチとペトラちゃんにもあげましたよ」
 フレンディスは楽しそうにお菓子の入手経路を告げた。
 途端、
「……双子というと確か妖怪の山で騒いでいた」
 アルクラントは妖怪の山での花見を思い出した。直接は関わらなかったが騒がしいのは見ていたのでどんな感じかは知っている。
「あぁ、あの双子の菓子だ。味は間違い無く美味しいはずだ。ただ……」
 双子をよく知るベルクはこくりとうなずき、ヤバイ菓子である事を伝えようとするがお菓子集めに精を出すポチの助達を発見したフレンディスによって阻まれた。
「……あれはポチ達ですよ。何か新たな忍術を取得したのでしょうか」
 体がオレンジ色にぴかぴか光るポチの助を見て天然発言をするフレンディス。まさか自分が配布した双子菓子のせいだとは思ってなどいない。
「もしかして……あのような感じになるという事かな」
 アルクラントはベルクの前言の続きを察し口にした。
「だな。あれは多分マシな方だ」
 ベルクはうなずき、物騒な推測を口走った。体が光るだけとは双子の悪戯にしてはまだ可愛い方だと知っているので。
「何か、人気者ねぇ」
 シルフィアは笑んだ。輝くポチの助が宣伝となり多くの人からお菓子を貰っている様子に。
 微笑ましい光景を眺め終わってから四人は近くの店に入ったりしてハロウィンを楽しんだ。