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最強アイドルへの道

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最強アイドルへの道
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リアクション

【最強のアイドル決定戦!!】

 ふっ、と会場内の照明が落とされた。途端に、満員の観客席から熱狂的な歓声が湧き上がる。
 オープニングらしい明るい音楽と共に、スポットライトを浴びた五十嵐 理沙(いがらし・りさ)セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)がステージの裾に現れた。
 ユニフォームを基調とした舞台衣装を身に纏った二人は、お揃いの衣装を着たポムクルさんたちと共にステージの中央までやってきた。
「ようこそ、アイドル決定戦へ! 皆さんの声援が今日新たなアイドルの綺羅星を生み出します」
 理沙の声が会場に響き渡り、ステージ上のライトが一斉に点灯する。
「本日の司会進行は、私、シャンバラプロ野球チーム『ツァンダワイヴァーンズ』応援アイドルユニット『ワイヴァーン・ドールズ』の五十嵐 理沙と」
「同じく『ワイヴァーン・ドールズ』のセレスティア・エンジュが務めます。どうぞよろしくお願い致します」
 熱気に覆われた観客席。アイドルたちの名前が書かれた応援の団扇や幕などが散見される。
 友人の応援に集まった人や、既にデビューしているアイドルの応援に来た人、アイドルが好きな人、お祭りごとが好きな人……様々な目的の人々が、一堂に会している。

 時を同じくして、舞台裏。控え室の天井近くに設置されたモニターに映し出される理沙とセレスティアを遠山 陽菜都(とおやま・ひなつ)が見つめていた。
 ステージの正面にずらりと並ぶ特別審査員の紹介が行われていく。今は、ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)が挨拶をしているところだ。全体的に、一癖も二癖もありそうな雰囲気の審査員ばかりである。
「陽菜都、不安か?」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が、陽菜都を見る。
「……大丈夫、ちょっと緊張してきただけです」
 陽菜都はモニターから目を離して、シリウスに笑いかけた。
「全く不安じゃない、って言ったら嘘になると思いますけど」
「ああ、あれだけ練習してきたんだ。陽菜都ならきっと大丈夫だ」
 自信を持って言うシリウス。陽菜都はぼんやりと、シリウスとアピールの練習した時間を思い返していた。


「久しぶりだな、陽菜都。あれからパートナーは見つかったか……その様子じゃまだかな?」
 コンテストを前に、アピール悩み困っていた陽菜都の元へとシリウスはやってきた。
「ええと、その……」
「まぁ今日はアイドルデビューって聞いて見に来たぜ。で、どういう方向で……悩んでる?」
「悩んでいることはいろいろあるんですけれど……一番困っているのは、アピールの方法です」
「そうだなぁ……他に参加する面子と被らずアピールできるお前の魅力ってーと……そうだ。お前、演劇部だったよな? ダンスとか経験あるか?」
 シリウスの言葉に、陽菜都は目を丸くする。
「ダンス……? 」
「よかったら……踊り、やってみないか?」
 シリウスが取り出したのは、踊り子装束だった。非常に布の面積は狭く、胸を覆う部分は激しい動きをすればぺろりとめくれてしまいそうだ。
「こっ、この衣装で踊るんですか!?」
「セクシー系だと美緒がいるけど、いつものお前を出せるなら十分差別化できるはずだ。背丈気にしないでいい衣装だし……オレ用だから、お前のスタイルなら多分ぴったり合うはずだぜ」
「いえ、背丈は大丈夫ですけど、その、すごく見えそうです……お腹とか太ももとか胸とか……」
 陽菜都はシリウスの衣装を手に、思わず赤面する。
「振付や音楽ならオレが手伝えるし……どうだ? 一丁、自分を変えてみないか?」
「…………変わりたい」
 自分を変えたい。その思いは、陽菜都自身が一番強く感じていた。陽菜都はすぐに、衣装に着替えた。
 陽菜都がシリウスから借りた衣装は、丈も裾も胸のサイズもほとんどピッタリだった。
「同じくらいのサイズだろうとは思ってたが、本当にピッタリだな……」
「へ、変じゃないですか……?」
「ああ、似合ってるぜ」
 シリウスにそう言われて少し自信がついたのか、陽菜都は鏡に映る自分自身を見て、よし、と気合を入れる。
「早速練習するぞ」
 こうして、陽菜都はアピールの練習を行ったのだった。


♪ ♪ ♪



 呼び出しがかかり、陽菜都は舞台裏に移動した。陽菜都はエントリーナンバー2。コンテストが始まってすぐのパフォーマンスだ。
「……よし、行ってくるよ」
 エントリーナンバー1の赤城 花音(あかぎ・かのん)が、一つ深呼吸をして舞台の袖に立つ。
「僕も出来る限りの手配はしました。トップバッターだからといって緊張せず、ベストを尽くしましょう」
 リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)は、ひとつ花音に向かって笑いかけた。
「はわわわ……つ、遂に本番が目前に……」
 緊張する陽菜都の顔を、花音が覗き込む。
「陽菜都ちゃん」
「は、はいっ!」
 花音は、陽菜都を安心させるように笑顔を見せる。
「ボク、陽菜都ちゃんが無事にソロデビューできる様に応援してる」
「が、がんばろう……」
「ナチュラルで良いと思うよ」
 花音は、去年全く同じ言葉をリュートに言われた。その言葉を、陽菜都に贈る。
「舞台の上で自然体を作る事は、それ自体が武器だと、ボクは思うんだ。
 だから……この舞台の為に、覚えられた事をシンプルに表現できれば! 次の機会へ繋がるんじゃないかな?」
「そっか……」
 陽菜都は、今回のコンテストが最初で最後のチャンスだと思っていた。このコンテストを足掛かりに、次のチャンスに繋げるという発想をしていなかったのだ。
「そろそろ行かないと。陽菜都ちゃんも、共に頑張ろうね☆♪」
 花音はそう言って、舞台へと向かって行った。