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最強アイドルへの道

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最強アイドルへの道
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リアクション

【ソロ部門】

『エントリーナンバー1……』
 理沙の声とともに、大歓声が沸き起こる。
『観客みんなへ元気を希望を届けたい。そんな想いを抱いて、このステージに立ちます。2022ライブフェスタ優勝者、赤城花音!』
 エンジュの紹介を受けながら、花音はステージの中央に立った。否が応でも鼓動が高鳴る、その感覚に花音は表情を輝かせる。
『今日のステージのコンセプトは、何かしら?』
「今日、ボクから! みんなへ提案するのは! コンセプト! 【未来系『i』ドル☆♪】……だよ!」
 理沙に問われた花音は、少しでも自分の声を届けようと、会場中を見渡した。と同時に花音の背後、ステージ上のオーロラビジョンに『i』の文字が浮かぶ。リュートが手配したものだ。

 ……「I(自分)」、「愛」、「innovation(革新)」、「imagination(想像)」、「intelligence(知性)」……

 花音の言う『i』のコンセプトワードがビジョンに浮かぶ。音響と照明も相俟って会場の熱気は既に最高潮だ。
「花音ちゃんがんばれー!!」
「花音ーっ!!!」
 観客席で花音の名の書かれた幕が揺れ、花音を呼ぶ声がする。
 舞台袖のリュートは、歓声を受ける花音をじっと見つめていた。
「ボクは! みんなが楽しめる様に! 頑張って『歌う』☆♪
 新曲! 『蒼空のフロンティア』行くよぉ〜♪」

 シンセの音が鳴り響いた瞬間、絶叫のような歓声が会場を揺らした。


   辿り着きたい未来があるなら 僕はあの鳥になりたい
   輝く地平線の先 何処までも高く遠くへ
   目覚める感性と直感 蘇る記憶の螺旋
   心の結晶に耳を澄ませば 君も出逢える創造の翼

   真実と虚像の境界線 真心の映る鏡の愛
   信じられる明日を迎えたいなら 前を向くんだ

   蒼空のフロンティア ちりばめられた理想郷
   譲れない願いの衝撃 分かり合えない孤独でも
   生まれる想いを言葉に 繋がり合う絆の心…歌声に乗せて
   一通の手紙 始まる無数の冒険

   不死鳥は灰から蘇る 僕らの描く奇跡


 キレのあるダンス。想いの込められた歌。観客たちの表情も知らず知らずに明るくなり、花音自身もそこから力をもらうようにして最高のパフォーマンスを披露した。
 リュートの手配した映像が花音のパフォーマンスより一層引き立てた。花音の歌を補足するように、その世界に皆を惹き込むように。
「流石、というところか。観客を楽しませようという心が伝わってくる」
「うーん、今回は初っ端が強いですわねー」
 採点する審査員たちの表情は厳しくも、どことなく面白そうだ。

 全てのパフォーマンスを終え、観客に向けて頭を下げた花音の顔は、希望に満ちていた。


♪ ♪ ♪


「つ、次は私の番……」
 陽菜都は、ひとつ深呼吸をしてステージの上を見た。反対の舞台袖に花音が去っていく。
(……うん。いつもの自分で、ナチュラルに、頑張ろう)
 自分自身に言い聞かせるように、陽菜都は胸の中で呟く。シリウスに言われた言葉と、花音に言われた言葉を胸に、陽菜都は顔を上げた。
 自分を変えたい。でも、それは自分を無理矢理アイドルに合わせることじゃない。自分が自分らしくいて、頑張ること。

『エントリーナンバー2、遠山陽菜都!!』
 理沙の声が、会場に響く。大歓声に飲まれるように、陽菜都はステージ上に駆け上がっていった。
 スポットライトを浴びて、陽菜都は大きく観客席に手を振った。
「おおおおーっ!!」
「かわいいー!!!」
 男の人の歓声に、思わず陽菜都は足を止めそうになった。だが、ステージから観客席は遠い。殴ってしまう距離ではない。
(この距離なら……いける!!)
 内心で再度自分自身を励まし、陽菜都は観客席に向き合った。
 最高のステージにしてみせる。そう、強く信じて。