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リアクション
「おい、大丈夫か?」
ベルク・ウェルナートが、ネクロマンサーのもとに駆け寄った。ネクロマンサーは腹部をばっさりと切られており、大量の血と臓物を溢れさせている。
「……俺は……もう駄目みてぇだな」
青ざめた顔でネクロマンサーは言う。口元をかすかに歪めながら、彼はつづけた。
「なあ……あんたに頼みがあるんだ……。あんたが持つ……その杖で……俺にとどめを刺してくれないか……」
ネクロマンサーが、ベルクが持つ『鎮魂歌の杖』を指差す。
「お前、これがなんだかわかっているのか?」
――鎮魂歌の杖。
死者の魂を魔力へと還元し続け、無限の苦痛を与える魔術杖だ。
「……あんたの杖のなかで……償いをさせてくれ……」
「本当に、いいんだな?」
「ああ……」
死をもてあそんだ俺が、死に方を選べるだけ贅沢だ――。赤色を失っていくネクロマンサーの唇が、その覚悟を無言で語っていた。
ベルクの魔術杖のなかに、ネクロマンサーの魂が吸い込まれる。
生命を失う直前。彼は海松に向けて、こう囁いた。
「ニコラを……頼……む……」
「――かしこまりましたわ」
ふたりのやり取りを聞いていたフェブルウスは、「頼む相手を間違えているのでは」と思ったが、いつになく真面目な海松を見て、言葉を呑みこんだ。
「ぐすっ……ぐすっ……」
肉親を失い、号泣するニコラ。
遺言を聞き届けた海松が、彼をぎゅっと抱きしめた。空気を読んで頬ずりは我慢していた彼女だったが。
今度ばかりは、ニコラの方から、海松へ頬を寄せたのであった。
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