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ブラウニー達のサンタクロース業2023

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ブラウニー達のサンタクロース業2023
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リアクション


クリスマスの奇跡・2


 昼。イルミンスール魔法学校、大図書室。

 軍隊での非番を利用してルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)と調べ物をしていた。ただし二人は目的の調べ物が違うため別行動中。
「……これも違う。となると……あれはヒスミとキスミ」
 目的の資料が無く別の場所に移動しようとした時、こそこそと調べ物をする悪戯好きの双子を発見した。
「また何か企んでるかも。ちょっと行ってみよう」
 双子を知るルカルカは気になり声をかけに行った。ルカルカには知る由もないが背後でくるりとブラウニーの人差し指が回っていた。

 双子の所に着くなり
「また何か企んでるんでしょ。ハロウィンで団長達を巻き込んだみたいな悪戯を」
 ルカルカは背後からハロウィンで被害を被った双子の悪戯の事を口にした。
「誰かと思えば……ハロウィンと言ったら悪戯じゃん」
「驚かせるなよ」
 背後から現れたルカルカに驚くなりすぐに言い返す。
「でも迷惑掛けるのは駄目だよ。ほら、ごめんなさいは?」
 ルカルカは柳眉を逆立てきつい口調で注意。
 じっとルカルカの顔を見ていた双子は
「…………ごめんなさい」
 口答えは無駄だと察したのか大人しく謝った。
「よし、許す! 人に迷惑掛けない事で何か人手がいるなら手伝うよ?」
 ルカルカは即許し、双子の手伝いを申し出た。
「それはありがたいけど、どうしてここにいるんだよ」
「というか一人いないぞ」
 ヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)はルカルカがいる理由をキスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)はダリルの事を訊ねた。
「調べ物だよ。ダリルとは別行動。二人が大人しくしてたら何もしないよ」
 ルカルカはニコニコと事情を説明。
「……そんな事よりも調べ物は見つかったのか?」
「何なら手伝うぞ」
 双子は図星を突かれ何とか話題を逸らそうと手伝いを申し出た。
「それなら手伝って貰おうかな」
 ルカルカはここの生徒である二人に手伝って貰う事にした。

 一方、ダリル。
「……これだけでは不十分だな。やはり自宅にある資料も確認しなければ」
 手にある資料を見ながらつぶやくダリルの脳裏に自宅の書庫にある紙の資料の姿が浮かんだ。途端、奇跡が襲いダリルの姿は消えてしまった。

 ダリルが奇跡を知ったのは資料から顔を上げた時。
「……ここはどう見ても自宅の書庫だな。確認したかった資料も目の前にある」
 自分が自宅の書庫の求めていた資料の前にいたためだ。
 目的の資料を手に取った後、
「先程までイルミンの図書室で調べ物をしていた筈だが、どういう事だ。とりあえず考えるのはイルミンに戻ってからだな」
 ダリルは手元のイルミンスールの資料に目を落とした。無許可の資料持ち出しはまずいので。
 するとダリルの身体は自宅から消え、現れた場所はイルミンスールの大図書室、先程までいた場所だった。
 戻って来たダリルは冷静に状況を分析し、ある結論に至った。
 それは、
「……こんな機能は俺にはない。となるとあの双子の悪戯か。有り得るな」
 この学校に在籍する迷惑小僧どもの仕業だと。いつもなら大当たりだが今回は双子ではなくブラウニー達の奇跡によるもの。
 しかし、ダリルは日頃の双子を知るため結論は変えない。
「便利だが思うだけで移動するのではたまったものではないな。さっさと見付けて解除させるか」
 と双子の事を考えた瞬間、ダリルの姿は消えた。

 一方、ルカルカ。調べ物開始から少し経過。
「こっちは駄目だったよ。キスミ、少し一休みしよう」
 ルカルカは双子の片割れを発見するなりその背中に声をかけた。
「ちょっと待て、らしい物見つけたぞ……って、どうしてオレだって分かったんだよ。これも見えなかったはずだぞ」
 声をかけられたキスミは資料から顔を上げて答えるもすぐにおかしい事に気付いた。後ろ姿で見分けの腕輪が見えない状態でルカルカが一卵性双生児である自分達を見分けた事に。
「ふっふっふ……ばれたなら仕方無いね。実は、密かに特訓してたのよ(特訓していないけど、今日は出来そうな予感)」
 ルカルカは不敵な笑みを顔に浮かべつつ内心ではびっくりしていた。
「本当かよ」
 今までにない事に驚愕するキスミ。
「本当だよ。成果を今こそ見せてあげるっ。再び双子当てゲームに挑戦よ」
 ルカルカは腕を組み、挑戦状を叩き付ける。
「よし。ヒスミを連れて来るから逃げるなよ」
 負けられないキスミは急いで兄を呼びに駆けて行った。

 少し後。
「本当に見分けられるのかよ。偶然だろ」
 兄に連れて来られたヒスミは同じように驚いていた。
 ともかく勝負が始まった。ルカルカは目を閉じ耳を塞いで双子は腕輪と立ち位置の交換が始まった。ルカルカの負けが多かった通り雨を一緒に過ごした前回と違い、今回は双子の連敗。
 とうとう双子は
「どっちがどっちだ」
 腕輪を外して挑む始末。
 それでも
「右がキスミで左がヒスミ」
 ルカルカは正解を叩き出す。
「嘘だろー」
「両方とも腕輪してないのにどうして分かるんだよ」
 双子は心底悔しそうな顔。
「どうしてって……それは奇跡だから(どうして奇跡がこれなのかなぁ……何か損した気分。でもクリスマスが終わったら元通りになるから後でも見分けが付くように観察して感覚を覚えさせて全勝出来なくても勝率は上げたいな)」
 ルカルカは些細な奇跡にしょんぼりしつつも色々考えたり。何せ腕輪以外で双子を見分ける手掛かりはヒスミのやり過ぎとキスミの雀の涙ほどの節度ぐらいだから。
「何、しょんぼりしてんだよ」
「すごいぞ」
 ルカルカの内心を知らない双子は素直に感心していた。
「そうだね……それより資料だけど」
 ルカルカは空笑いを浮かべた後、キスミが資料を発見した事を思い出した。
「俺も見付けたぞ」
「これだ」
 双子は改めて資料をルカルカに渡した。
 受け取り確認した結果
「うん。これだよ。ありがとう! 次はルカが手伝うよ」
 当たりだった。次はルカルカの番。
 その時、
「おい、双子、俺にはこんなテレポート機能は付いていない。悪戯も大概にするんだな」
 双子の背筋を凍らせる聞き覚えのある声が降りかかる。
「!!!」
 相手が誰か知る双子は青い顔で硬直。これまでに怖い思いをさせられたためだ。
「ダリル、違う違う。多分、それ奇跡だと思うよ。今日が終わったら無くなる予感しない?」
 可哀想な双子を救うためにルカルカが間に入った。
「……予感か。確かにするが、酷い奇跡もあるもんだな」
「ルカよりはずっと奇跡らしいよ」
 ダリルは改めてわき上がる予感を確認し、ルカルカは溜息を吐いた。
 ダリルの確認が終わった所で
「というか何で俺達のせいにするんだよ」
「そうだぞ。えん罪だ」
 双子がチャンスとばかりに非難囂々。
「その件に関しては謝る。しかし、日頃の行いのせいだ。真面目であれば濡れ衣を着せられる事は無い」
 濡れ衣を着せた事は謝るが、言うべき事は言うダリル。
「……」
 正論に言葉が出ぬ双子。
「……ま、それはさておき団長達に迷惑掛けた仕置きは何が良い? 奇跡でテレポート出来る今の俺からは逃げられないぞ」
 ダリルは威圧的な冷笑を浮かべ、ハロウィンでの双子の所業を口にした。
「!!」
 双子はダリルの冷笑にすくみ上がり済んだ事だと口に出来なかった。
「ダリル、ストップ、ストップ、もう反省して謝ったんだよ!」
 これまたルカルカが双子を救うために間に入った。
「そうなのか?」
 双子をよく知るダリルは念のために双子に確認を入れる。
「……」
 双子は同時に激しく頭を上下に動かした。
 この後、ダリルはテレポートを使用して自分の調べ物に戻り、双子はルカルカの協力を得て魔法薬を完成させた。