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リアクション
★若社長の成長★
「んで……つまりこれは」
「前にもやったところだぞ」
「ぐ……ヒ、ヒント」
「やらん」
ぐぬぅ、とうめいてジヴォートは厳しい教師を仰ぎ見た。その教師、ことダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はそ知らぬ顔でジヴォートのSOSをかわす。
「うわ〜、ほんとにダリルったらスパルタね」
そんな教師と生徒の様子にあっけらかんと感想を述べるのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)。今日は見学に来たらしい。
「でも見合い、か。まあ年頃だし立場を考えると分からなくも無いけど、他に好きな人はいないの?」
「いねーなぁ」
雑談をしながら、ジヴォートはダリルお手製の問題を解いていく。悩みつつも、正解を導き出しているのをみたダリルが、かすかに笑う。そしてそんなパートナーを見たルカルカも笑う。
教えがいについて聞きたかったが、その顔だけで分かる。
「ルカの出会いは軍だったか」
「うん、そうだよなんで知って……って、そっか。PV作ってくれたんだっけ」
「……まず俺、好きとかそういうの良くわからねーから、俺以外のやつらが頑張ってくれたんだけどな」
友人や部下のことをどこか誇らしげに言うジヴォート。そんな彼を微笑ましく思いながらも、ダリルは軽く頭を叩く。
「お前自身、もっといろんな経験をする必要が在るとは俺も思う。分からないからといって他社に丸投げでは成長しないからな」
「う、分かっては、いる……けどわからねーもんはわからねー。
ルカはいつどこで自覚したとかあるのか? なんで、とか」
「え? う〜ん。難しいな。いつのまにかそうなってた。それが恋ってものじゃないかしら?
「なんだよそれ、余計にわからねー」
ついにぐでっと机に倒れこんだジヴォート。ダリルは時計を見て、そろそろ休憩にするかと言った。
「でも今回の見合いはきっと何かの経験になるわ。だって、キッカケは兎も角出会いなのは確かでしょ?」
「そうだな。有意義にするべきだろう。相手の家はかなり古い家系と聞いた。ならばまだ新しい会社のお前にない人脈を持っているはずだ。
仕事に注力したいなら、彼女を通じた人脈と関係を強め、商売の地盤を強化する事は悪い事ではない」
あくまでも冷静に、かつ現実的な意見を述べるダリルに、ルカルカが唇をとがらせた。
「愛を二の次にしないでほしいよ。もちろん、それも一理在るとはわかるけど」
「それを言われると辛いな」
ダリルも笑ったので、彼も分かってはいるのだろう。
「でも、あなたが最後に出した結論のように、焦る必要は無いと思うわ。だけどこの出会いを大事にして欲し……あ! そうだ。手紙はどう?
顔を見なくても良いし、練習にもなるじゃない」
名案だ、と明るい顔でルカが言う。
「そうだな。文を書くというのは表現力を鍛える上でも大事だ。文章を作る力を養うのは良い訓練になる。
うむ。ついで、というと申し訳ないが。ドブーツとライラ嬢にも送ったらどうだ。次回までに3人に手紙を出す。宿題に含めるとするか」
「え、ちょ。俺文章書くの苦手……あ、もしかして他の宿題なしとか」
「あるに決まっているだろう」
「……鬼ダリル」
「何か言ったか?」
「イエ、何も」
勉強会だというのに賑やかな声が聞こえて、たまたま通りかかったイキモは、ふふと笑って仕事へと向かっていった。
こうして若社長はまた一つ成長し、その縁も広がっていく。
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