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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

リアクション

 
 同時刻 紅生軍事公司 大連支社 居住施設
 
「やっぱり……私達と一緒に戦うのは踏ん切りがつきませんか?」
 とある部屋。
 ティーはベッドに座る航に話しかけた。
 
 取り調べを終えた後、監視と怪我の治療、そしてとある目的を兼ねて彼と理沙はここに移送されていた。
 看病と称して航達についていくことを申し出たティーは、彼等の世話を焼いていた。
 
「あんたらと一緒に戦うのも、スミスを相手にするのも、実はやぶさかじゃねえ」
 答える航の声にかつてのような力はない。
「なら、どうして……?」
「疲れちまったのさ。前にあんたに話したこと、覚えてるか?」
「はい……」
「結局俺は、ただの阿呆だったってことだ」
 
 自嘲するように言う航。
 するとティーは彼の手を両手で包み、しっかりと目を見据えて言う。
 
「……阿呆なんかじゃありません」
「え?」
「羽鳥さんは……航さんは、もうこれ以上、自分のように悲しむ人を出さないように……一生懸命戦ってきたんでしょう?」
「……」
「そんなこと、阿呆にはできません。本当に強くて、本当に優しい人にしかできないことなんです……!」
「ありがとよ。けど、励ましてもらったのにすまねえな。俺にはもう、できることはねえよ」
「あなたはまだ飛べるじゃないですか」
「俺にそんな資格はねえ。いいように騙されて、とんでもねえ間違いをやらかした挙句、傷つけ壊すことの先頭に立ってた俺なんぞには……」
 哀しげな瞳で遠くを見るように言う航。
 しばしの後、ティーは彼をそっと抱きしめた。
 
「ティー……?」
「間違えたなら、やり直せばいいんです。人はきっと、何度だってやり直せるんですから」
「……」
「たしかに怖いと思います。本当にやり直せるかどうか不安でしかたいとも思います。でも、私がついてます。あの時、私を助けてくれたみたいに……今度は私が、航さんを助けます。航さんが倒れそうになった時は私が支えますから……」
「ティ……」
「だから……だから……もう一度飛んでください。あなたの翼は、まだ何一つ折れてはいません」
 
 ティーの言葉を聞き終えた後、航は静かに、だが力強く立ち上がった。
「航さん!」
「ティー、もう一度何かを信じてみることにした。今度はお前をな」
「ありがとう……ございます」
 嬉しそうに言うと、ティーは航の手を掴んだ。
「ついてきてください。あなたが戦うことを決意してくれた時、渡すように言われてるものがあるんです」
 航の手を引き、部屋の外に連れ出すティー。
 
 ドアを開けてすぐの廊下。
 ドア横の壁にもたれかかるようにして待っていた理沙はティーに目配せする。
「話は済んだみたいね」
「ええ」
 すると理沙はティーの耳元に口を近付け、小声でそっと耳打ちする。
「どうやら航の翼はあなたのようね。航のこと、よろしくお願い」