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そして、蒼空のフロンティアへ

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「そうだ、結婚しよう」
 唐突にアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は思いました。
 理由はよく分かりませんが、ここに来てパラミタはリア充ラッシュです。このビッグウェーヴに乗らない手はありません。
 そう、これは天啓なのです。
「やっぱり、結婚するなら、一番古いつきあいのルシェイメアだな」
 そう思い込んだアキラ・セイルーンは、迷うことなくルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)の許へとむかいました。
「ルシェイメア、結婚しよう!」
「はあっ!?」
 ド真面目な顔でいきなりそう言われて、ルシェイメア・フローズンの顔が思いっきり歪みました。
「なぜ、わしと結婚しようと思うのじゃ?」
 落ち着きを取り戻して、ルシェイメア・フローズンがアキラ・セイルーンに聞き返しました。
「それは……。ええっと、あのー、そのー、――けじめだ!」
 ちょっと考えてから、アキラ・セイルーンが言いました。即答できないところからして、もうなんだかなです。
「けじめ? けじめってなんじゃ? そうか、とにかくけじめをつけたいのだな。ならば、わしが貴様の部屋に行って、ベッドの下にある物でお焚き上げをしてもいいのだな?」
「それは勘弁」
 即答です。
「語るに落ちたな。ちょっとそこへ座れ!」
 さすがに頭にきたルシェイメア・フローズンが、アキラ・セイルーンをその場に正座させました。お説教タイムの始まりです。
 くどくどくどくど……。
「……」
 くどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくど。
「ううう……。そんなに言うことないじゃないかあ。一緒にいてほしかっただけなのに。もう、誰が結婚なんかしてやるもんかー!」
 もうこねーよーとばかりに、泣きながら逃げだしたアキラ・セイルーンでした。
「やれやれ、貴様は何をしでかすか分からぬから、わしらがずっとそばで見張っててやると言っておったはずだがのう」
 今までの日々、何を聞いておったのだと、ルシェイメア・フローズンは軽く溜め息をつきました。

    ★    ★    ★

「まだだ。きっとセレスティアなら大丈夫なはずだ」
 アキラ・セイルーン、懲りません。今度は、セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)の許へとやってきました。
「どうかしたのですか?」
 洗濯をしていたセレスティア・レインが、アキラ・セイルーンに訊ねました。
「セレスティア、結婚しよう!」
「あらあら、まあまあ」
 この人は何を口走っているのだろうと、セレスティア・レインが哀れみを込めた目でアキラ・セイルーンを見つめました。
「一口に結婚と言いますけれど、いったいいくらかかるか分かっていますか? まず、お互いの両親に御挨拶に行く旅費とお土産代。それから、婚約ともなれば、結納金もかかるんですよ。婚約指輪だって買わなければなりません。我が家の経済状況で、それらが捻出できるとも?」
「ううっ……」
 超具体的な指摘をされて、アキラ・セイルーンが唸りました。無理です。
「いざ結婚式となれば、式場の手配も必要ですし、衣装も整えなければなりません。仲人も頼まなければならないし、招待した人たちに引き出物も……。結婚指輪やら、新婚旅行の費用とか、もう、あげていったらきりがないくらいお金がかかるんですよ。全部でいったいいくらになることやら……」
「で、できれば、最低限の予算で……」
 つぶやくようにアキラ・セイルーンが言いました。
「まあ、式も旅行もなしでもいいかもしれませんけど、せめて指輪くらいは……」
「あ、空き缶のプルタブで……」
 ステイオンタブに切り替わって、今や存在さえ危なっかしい物の名前をアキラ・セイルーンが口にしました。思わず、その場の空気が凍りつきます。
「ふふ、アキラさんが、ほんっっっっとぉぉぉぉに、それでいいのでしたら、いいですよ」
 ニッコリと笑いながらセレスティア・レインが言いました。でも、目が笑っていません。
「すいません、出直してきまーす!」
 全速力で、アキラ・セイルーンが逃げだしていきました。とてもいたたまれなかったようです。
「はい、いつまでも待っていますからね」
 そうつぶやくと、セレスティア・レインはアキラ・セイルーンのパンツをパンパンと広げて、物干しに干していきました。

    ★    ★    ★

「まだ、せめて、ヨンなら……」
 傷心のまま――いえ、自業自得ではあるのですが――アキラ・セイルーンは庭へと出てきました。
 そこには、ジャイアントピヨに餌をやっているヨン・ナイフィード(よん・ないふぃーど)の姿がありました。
「け、結婚してみない?」
 半ばやけでしょうか、唐突にアキラ・セイルーンがヨン・ナイフィードに言いました。
「えっ!?」
 どきっとして、ヨン・ナイフィードがピヨに餌をやる手を止めました。
「で、でも、ルーシェさんやセレスさんを放っておいて私でいいのでしょうか……」
 ドキドキで、ヨン・ナイフィードがアキラ・セイルーンに聞き返しました。
「ああ、二人にはもう断られた」
 しれっとアキラ・セイルーンが答えました。
「えっ、何それ!? 私は三番目!? 二人に断られたから、私なんですかあ。信じられなあい!
 思わず、ヨン・ナイフィードが叫びました。今にも、ビィィィームを放ちそうです。
「ええっと、順番で……」
 アキラ・セイルーンが、よけいなことを口にします。
「そ、そうですね。やはり順番というものがありますよね。多分、私、三人目だから……。だったら、私が二人を飛び越して結婚するなんて……」
「わーん」
 断られたと感じるやいなや、アキラ・セイルーンが脱兎のごとく逃げ去っていきます。諦めが早いです。
「ああっ……」
 まだ最後まで言っていないのに。可哀相だから、私だけでもOKしてあげればよかったかなあと思うヨン・ナイフィードでした。

    ★    ★    ★

「もう、ミャンルー隊でいいや……」
 やけです。アキラ・セイルーン、ついに人間相手を諦めました。
「結婚してくれ!」
「結婚てなんみゃ?」
 ミケが首をかしげました。
「タマたちに結婚を申し込むなんてとんだ変態みゃ」
 タマがどん引きます。
「眠いのみゃ〜」
 トラは、興味すらないようです。
「結婚て知ってるのみゃ! 美味しい御飯がたくさん食べれるのみゃ!」
 ポチが、知った顔で叫びました。
「ごちそう食べれるのかみゃ! なら結婚するのみゃ!」
 ミケが叫びました。
「わーい、結婚みゃ〜、結婚みゃ〜」
 アキラ・セイルーンを中心として、ミャンルー隊が盆踊りのような歓喜の踊りを始めました。
「わーい、結婚だあ」
 もう、やけくそで、アキラ・セイルーンも踊り始めました。
「あらあら、お祝いですね。じゃあ、ごちそうにしましょう」
「わーい、ごちそう、ごちそう!」
 それを見たセレスティア・レインの言葉に、ミャンルー隊から歓声があがります。完全に結婚のことなど忘れています。あたりまえのことですが、ニャンルー隊にとっては、なんだかよく分からない結婚よりも、目先のごちそうです。
 結局、アキラ・セイルーンは、ミャンルーたちにまでフラれたことになりました。
「はあ、疲れた……」
 自分で蒔いた種とはいえ、アキラ・セイルーンがガックリと肩を落として言いました。
「まあ、結婚できなくてもいいかあ」
 別に、今のままで変わらないはずですから。
 しばらく一人になって戻ってくると、すっかり夕飯の準備ができていました。
「遅いぞ」
「今、御飯よそいますね」
「一緒に食べよ♪」
 居間では、三人のパートナーたちが待っていました。まるで家族のよう、いえ、とっくに家族としてそこにいたのでした。