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【蒼フロ3周年記念】蒼空・零 ~2009年~

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【蒼フロ3周年記念】蒼空・零 ~2009年~
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リアクション


第3章 繋がる刻(とき) 2

「来た――!」
 6月15日、東京湾上空。
 巨大な光の繭が生まれると同時に、現れたのは2022年からタイムワープしてきた戦艦だった。それには2022年からの増援と数々のイコンが積まれている。
『団長、お待たせいたしました!』
「うむ」
 戦艦から外部スピーカーを通して発せられたオペレーターの声に、岸で佇んでいた金 鋭峰(じん・るいふぉん)は鷹揚に答えた。
 船艦は降下してきて、そのタラップを鋭峰のもとに降ろす。鋭峰、そしてその他のイコン操縦者やオペレーター役を請け負った仲間たちも、戦艦内に乗り込んだ。
 そして動き出す戦艦。
 同時に、光の繭と戦艦とのちょうど境目辺りに現れたのは、猛け狂う風と闇の坩堝を共鳴させた時空の穴だった。
「インテグラルかっ……!」
 司令室へと急ぎながら、鋭峰が強化ガラスで出来た窓の外を見て憎々しげに叫んだ。
 未来で予想していた通り、インテグラが2009年の世界に現れようとしているのである。
 次々と、穴の中からインテグラルの配下たるイレイザー・スポーンの集合体が現れた。奴らを従えたインテグラルの姿が徐々にその全貌を露わにする。
 その姿はまさしく巨大だった。たった一つの生体であるというにも拘わらず、こちらの戦艦と違わないほどの巨躯を有している。獣を思わせる巨大な大口が左右正面でそれぞれ睨みを利かせ、その間から豪腕が生えている――奇怪な生き物そのものだった。
 中心には、銅像かなにか正体は分からぬが、人型の物体が突き出ていた。まるで阿修羅観音を思わせる、複数の手と身体を融合させた物体だ。あれが頭脳だとでもいうのだろうか?
『各員、戦闘配置についてください』
 イコン操縦者は各自格納庫に収納されているイコンに乗り込むことを指示される。インテグラが繭を破壊しようとする前に、なんとしてもそれを阻止するのだ。
 いま――決戦が始まろうとしていた。


 格納庫では、スタッフや操縦者が総出で慌ただしく動き回っていた。
『イコン操縦者、各自持ち場のセクションについてください。第1から第5部隊まで、準備が整い次第発進せよ。第6部隊は整備管理者の指示に従って武装チェックを受けてください』
 艦内通信を通して、オペレーターである董 蓮華(ただす・れんげ)の声が全搭乗者に伝えられる。
 その指示に従って、整備スタッフも操縦者も、一刻を争う顔で次々と作業に入っていった。
 イコンの操縦者は各部隊に分けられており、それぞれが作戦基準に従って発進している。真っ先に発進を開始する突入部隊もいれば、狙撃部隊は後方でまずはデータ収集に回り、発進を遅れさせている場合もある。
 そんな中、格納庫の一部で巨大なヒヨコがピヨピヨとけたたましく鳴き喚いていた。
「セレスっ! 大丈夫かっ!?」
「ああぁん、ルシェイメアさーんっ!」
 ルシェイメアに呼びかけられたのは、この巨大なヒヨコ――ジャイアントピヨのお世話役として戦艦に乗り込んでいたセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)だった。
 ジャイアントピヨは格納庫が慌ただしく動き出したことで、気性に触れたのかうるわき喚き散らしている。セレスティアはそれを止められずに、おたおたと泣きそうになっていたところだった。
「何をしておるんじゃ、まったく……」
「だ、だって、ピヨちゃん暴れるんですもん〜!」
「とにかく、もう発進時間じゃ。アキラ、出られるか?」
「任せとけ。アリスももう乗り込んでるぜ」
 ジャイアントピヨの上に乗ったアキラがルシェイメアたちに答えた。いったいどのような仕組みになっているのか、ピヨの一部を装甲が覆い、ジャキン――と、機械的な見た目に変形する。
「ワシらは他の搭乗者のサポートに回る。あとは頼んだぞ」
「ピヨちゃん、お腹空いたら戻ってきていいからねー!」
 発進準備に入ったピヨに、セレスティアが旅立つ我が子を見送るような顔で呼びかけた。手にはハンカチを持って、別れを惜しむように泣いている。
「――行こう、アリス」
「わかったワ」
 副操縦者のアリスが答えたのを確認して、アキラは前を見据えた。
 ジャイアントピヨは戦艦を飛び立ち、空に舞った。