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里に帰らせていただきますっ! ~ 地球に帰らせていただきますっ!特別編 ~

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 ■ 惚気を土産に里帰り ■



「どうしても駄目か?」
 聖アトラーテ病院でラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は食い下がってみたが、医師から返ってきた答えはにべもなかった。
「当然です。容態が安定しない入院患者を、遠い地球に連れて行くだなんてことを、医師として許可することは出来ません」
「無理は承知だ。だがそこを何とか頼む」
 結婚してからずっと砕音は病院だったからと言うラルクに、医師は気の毒そうな顔になった。
「それは……お察しします。ですが、今の容態でアントゥルースさんを病院から出すのは、はっきり言って自殺行為です。どうか彼の身体のことを、未来のことを考えて、今回は諦めて下さい」
 無理矢理頼んでみたけれど、地球への里帰りに砕音を連れて行きたいとの申し出は却下されてしまった。肩を落とすラルクに、ベッドから砕音・アントゥルース(さいおん・あんとぅるーす)が申し訳なさそうに言う。
「……悪いな。俺がこんなだから……」
「いや、砕音が悪い訳じゃないから」
 ラルクは慌ててかぶりを振ると、病院を出た。



 結局、ラルクは1人で地球にやってきた。
「ふぅ、やっと着いたな」
 叔父であるアーロン・クローディスのところに顔を出そうかと歩き出したラルクは、ふと見知った顔に足を止めた。
「何でお前も来てるんだよ……ガイ」
 誘った覚えはないのに、ガイ・アントゥルース(がい・あんとぅるーす)がひょっこりと着いてきている。
「いやいや、ラルクの故郷が気になりましてな。どういう場所に住んでて、鍛錬を積んでたのかとか」
 ガイは悪びれずに答える。やれやれと思ったが、ここまで着いてきてしまったのだから仕方がない。
「一緒に来るのは構わないが、アーロンの家にガイまで世話になるわけにはいかないからな。別に宿でも探せよ」
「宿に関しては勝手に探します。だからいいでしょう」
 砕音が一緒に来られなかったことだし、とガイは胸の内で呟いた。

 砕音と回るはずだった故郷を、ラルクはガイを連れて回った。
「小さな町だけどよ。ま、それでもここが一応俺のルーツだしな」
 その当時の思い出話をしながらガイに町を案内した後、ラルクはアーロンの家に向かった。
「アーロン、泊まりに来たぜ。いいだろう?」
「相変わらず唐突な奴だな。別に構わないけどよ。そっちは誰だ?」
 ガイに気付いたアーロンが顎をしゃくる。
「新しく契約した相棒だ」
「ガイと申しやす。以後お見知りおきを」
 アーロンに挨拶だけを済ませると、ガイはではこれで、と宿を探しに出ていった。
「いいのか?」
「ああ、まぁな。じゃあ邪魔するぜ」
 ラルクは遠慮なく、アーロンの家に上がった。


 しばらくゆっくりした後、ラルクはアーロンにニルヴァーナの土産話をした。
「いやーまじで大変だったぜ。生態系そのものが違っててよ。強い奴はわんさかいるわで、探索も思いの外進まなくてよ。暫くはパラミタっつーよりもニルヴァーナに缶詰だったぜ」
 それでも週に何回かは砕音の様子を見に行ってたけどな、と付け加えると、アーロンはくーっと唸った。
「イチャイチャしてんなー」
「まあ、なんだ。その、病院とはいえ個室だし。病人だから無理はさせられないが、まあ、そこは何とかなるもんだし、な。けど、一応我慢はしてるんだぜ。我慢できねぇ時があるってだけでさ」
 ぽり、と鼻の頭を掻くラルクに、アーロンは髪をかきむしる。
「あー、もう惚気はいいから。ちったぁ独り身のこっちに気ぃ使えよ」
「悪い悪い」
 そう言いながらも、砕音とのことを考えるだけでラルクの顔はほころぶ。
「ほんとに悪いと思ってんのかー? 幸せそうな顔しやがって」
 飲まなければやっていられない、とばかりに、アーロンはがぶりと酒をあおるのだった。