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リアクション
「すごいな……とにかく向日葵さん、こいつばかりは本気で共闘しないと倒せないぜ。どっちが倒したとか言ってる規模じゃない」
涼介が改めて、イレイザー討伐を優先するよう勧める。
向日葵もいざイレイザーを目の当たりにして、涼介の提案に頷かざるを得ない。
「う、うん……」
「何だかお困りみたいだね」
「!?」
向日葵が振り向くと、【光学迷彩】を一部解除して顔を出す桐生 円(きりゅう・まどか)。
「つまりあれでしょ。イレイザーをやっつけた方が一発逆転3万点の大勝利になればいいんでしょ」
「そうそう! だって今までと強さが全然違うもん」
「でもこういう場合、どっちが止めを刺したかで揉めそうだよね」
「た、確かに」
「……ふっふっふっふ」
と、思わせぶりな笑いを残して、円が姿を消す。
(思いっきり止め狙ってる……!)
一方で永谷がダイソウに、
「ダイソウトウ、特に『別府』は事故死のようなものだ。こちらは2敗1分といったところだが、イレイザーを見る限りそういう次元じゃない。共に戦おうと思うがどうだろう」
「うむ。どの道、あの3体のモンスターたちは、我々が思っていたようなものとは違う存在のようだ。もしや我々全員、フレイムたんに利用されているのかも知れぬ……」
と、ダイソウはフレイムたんをチラリと見る。
彼は永谷に目を戻し、
「どうあろうとあれはギフトにすぎぬ。フレイムたんが我々とチーム・サンフラワーのどちらを所有者と認めるか、イレイザーを倒した後にその判断は委ねるしかあるまい」
「よし、いこう」
フレイムたんが所有者と認めるのはおそらく止めを刺した方だろう。
ダイソウはそう予想しながらも、フレイムたんへの妙な疑念からそれを確かめる気が起きない。
☆★☆★☆
ダークサイズ本体とチーム・サンフラワーの到着で、一気に人間側の戦力が増す。
「ラルク、待たせたのう!」
「来たなダイダル!……なんだそのぱんだ……」
「……察してくれい」
「……いろいろあったんだな」
いまだにダイダル卿から離れない垂とぱんだ部隊。
グループ化して行動を取るのは、即席のタンポポ隊だけではない。
「子供軍師に後れを取っている場合ではない、私たちももっと攻めるのだ!」
コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)がメタルボディを白く輝かせて、号令をかける。
やる気満々で立つコアの後ろで、
「おっけー♪ その意気で頑張ってね、ハーティオン」
ラブ・リトル(らぶ・りとる)が手を振っている。
「む、ラブ! 前線に立たぬまでも、せめてバックアップをだな……」
「分かってるってー。みんなに力が湧くように、あたし頑張るからっ」
ラブは【マイク】を握りしめ、反対の手で親指を立てる。
「何を頑張るのだ!」
「え? 実況」
「なにいっ!」
「いやー、さすがに何もしないのは悪いからさー♪」
「それは何もしないのと一緒であろう!」
「あ、すみません……」
すでに実況席を作って座る終夏が、コアに謝る。
コアはあくまでラブを叱っていただけなので、
「あ、いや、そういうつもりではなくてだな……」
コアが言い淀んだすきに、ラブが終夏の隣に陣取る。
「さあ、ついに始まりました、というかとっくに始まっております最終戦」
「遺跡とギフトの栄冠は誰の手にーっ♪」
ラブが終夏と共に実況を始めてしまうのを見て、
「仕方のない奴だ……」
と、コアはため息を突く。
終夏とラブは全体を見ながら、
「タンポポ隊は未だ退かず善戦を続けております! ダイダル卿が合流して勢いを取り戻した模様です。後方ではアルテミスが魔力を充填!」
「そんな中おーっと!? 隅でバカハデスとくっちゃべってる一団がおります♪ なぜかハーティオンも加わりにゆくーっ」
モンスターとの戦いで傷つきながらもやって来たハデス率いるオリュンポス。
それをマグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)、近衛 栞(このえ・しおり)、近衛 光明(このえ・みつあき)、リーシャ・メテオホルン(りーしゃ・めておほるん)が労っている。
「激戦が絶えなかったようだな、ハデスよ」
マグナが、顔を包帯でぐるぐる巻きでその上にメガネをかけたハデスの肩を叩く。
オリュンポスは満身創痍で、ハデスはそんな状態の上に咲耶とアルテミスは裸体にバスタオルを巻き、カリバーンに至ってはちょっと溶けてる。
「ふはははは、ニルヴァーナに拠点を構えるならば、この程度のリスクは屁でもないわ!」
ハデスは火傷でひりつく頬に気を使いながら笑い飛ばす。
栞は咲耶とアルテミスの肩に手を添える。
「ご苦労様でした。あとは私たちに任せて」
「どうでもいいけど、服ください……」
「ごめんなさい。無いの……」
「ふえ〜ん」
光明は密かに拾ってきた銃器を手に持っているが、
「はぁ、もったいない。これはニルヴァーナ人がいないと使えないんだなぁ……」
と、武器は捨て、とりあえずハデスの包帯を代えてあげている。
「ところで、私たちはどう攻めるの?」
リーシャがコアを見上げる。
コアはハデスに一声かけつつ、
「高天原博士(ハデス)、ご苦労だったな。見ての通り、タンポポ隊は広く展開してイレイザーの注意を逸らしながら戦っている。私たちは全員の力を合わせ、一点突破で叩こうではないか!」
マグナもこくりと頷き、
「それがいい。栞、俺の起動キーは頼んだぞ。様子見の必要はあるまい。それに加えて『アルテミスの加護』があれば、鬼に金棒だが……」
「す、すみません。【護国の聖域】のことでよろしいですか?」
「あ、すまぬ。選定神の方のアルテミスだ……」
「はうぅ、すみません……」
「い、いや! それはそれで必要だ、是非頼む」
服はないわ名前はまぎらわしいわで可哀そうなアルテミスを、マグナはやたら気を使う。
と言っている間に光明が、選定神の方のアルテミスの元へ行く。
「かくかくしかじかなんだけど、こっちに魔力を割く余力はあるかなぁ?」
アルテミスは集中しながら光明を横目で見、
「ふむ、大して渡せぬがよいか? それに攻撃力を上乗せする効果は期待できぬぞ」
「あららぁ、そうなの〜?」
「我の魔力を人に授けた効果は、主に環境から身を守るものなのだ。攻撃効果があるのは、我から直接発せられたもののみだ」
「へぇ、なんだかややこしいんだねぇ」
「そもそも我は選定神として、街を護っておった神だ。我の魔力もそのようにカスタマイズしておる」
光明はマグナのもとへ戻り、
「……だってさぁ」
「く、そうか。それは残念だ」
と、マグナは拳をはじくが、コアは胸を叩き、
「心配いらぬ! 私たちは一人で戦うのではない。皆の力を合わせれば、イレイザーの何するものぞ!」
と、熱い言葉で勇気づけ、向日葵たちにも声をかける。
「さあ、行くぞ。近接戦闘ができる者は、私の肩に乗るがいい。涼介といったか。イレイザー本体にたどり着くまで、援護を頼む。」
と、コアは両肩に永谷とゲブーを乗せ、ブルーズは頭の上に乗った。
「じゃ、ブルーズ、がんばって」
「天音、まったくおまえは……」
マグナがリーシャから【光条兵器】を抜き出し、
「さあ、いきますよ!」
栞がマグナのリミッターを解除する。
「あ、あたしも!」
向日葵がコアに乗ろうとするが、
「いや、ヒマワリは残るのだ。おまえは……傷つきすぎた」
「は、ハーティオン……!」
服を失っただけだが、コアが言うと何だか熱い。
向日葵も目を潤ませて、それ相応のリアクションをする。
「吹雪け嵐よ、我が敵を凍てつかせよ!」
涼介が【禁じられた言葉】でブースとした【氷術】で、冷気を一点集中して放つ。
「道は開けた! ゆくぞおおおお!」
見送る向日葵を残し、コアやマグナ達は戦地へ赴いてゆく。
ダイソウがそれとなくハデスに近寄り、
「ところでハデスよ。お前はずいぶん顔が広いのだな」
「ふはははは! 俺の人づきあいのよさを見くびってもらっては困るな。オリュンポスとダークサイズの共同支部獲得のため、ちゃんと下準備はしておったのだ!」
と、ハデスは胸を張る。
それを遠目で見ていたラブ。
「それにしても、どうして誰も火傷を治してあげないのでしょうか! 面白いから別にいいけど!」
☆★☆★☆
向日葵やノーン、そして天音と共に残るフレイムたんを、メガネに手を当ててマジマジと見る高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)。
「ふうん。パピヨン型のギフト……ね」
「残念だけど、ガードが固くてスキルで情報は引き出せなかったよ」
天音が肩をすくめる。
しかし鈿女はそれほど動じず、
「あら残念。ならこれは試した?」
鈿女はフレイムたんを持ち上げ、
「ねえ、フレイム。ちょっとでいいから、ホントちょーっとでいいから、お腹の中を見ていいかしら?」
(?)
「うんうん、痛くないから。ちょっとばかりバラして内部構造を見るだけだから。大丈夫だから」
(きゃんきゃん!)
鈿女の本気の目を見てじたばたするフレイムたん。
「フレイムたん、そんなんしちゃだめーっ」
ノーンが慌てて鈿女の腕にしがみつく。
知性はあれど生命ではないフレイムたんだが、ノーンが感情移入してしまうのも仕方がない。
「そう、残念ね……」
「ところで、君はいいのかい? パートナーたちは戦いに出たというのに……」
自分の事を棚に上げて、天音は鈿女に言う。
鈿女はすでに【博識】と【シャンバラ電機のノートパソコン】でイレイザーを調べ上げており、
「んー、まあ弱点と言えば……」
「弱点!? そんなの見つけたのっ?」
向日葵が思わず乗り出す。
鈿女はため息をつき、
「あることはあるけど……内臓なのよね。そんなの当たり前だし、どうやって潜り込むのって話だけど」
と、肩をすくめる。
向日葵はがっかりして、
「炎があるから口からなんて入れないよね……」
「そうねぇ、後は……出るところから入るって手もあるけど……そんなの誰もやりたくないわよね」
「出るとこ?」
なぞなぞのような鈿女の言葉に首をひねるノーンだが、それを理解している者が一人現れる。
「うおお、ようやく間近で見れたが、これが炎に包まれた犬フレイムか。まさに地獄の番犬ケルベロス!」
仏滅 サンダー明彦(ぶつめつ・さんだーあきひこ)はテンション高くフレイムたんを見る。
「熱いぜ、そして暑いぜ! 俺のメイクも落ちそうなほどに! ロックだぜーっ! そのファックな地獄門を開くの俺だあああっ!!」
サンダー明彦は、たった一人でイレイザーに向かって走ってゆく。
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