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リアクション
前兆
真っ先に動いたのは遺跡の保護とジェイダスの護衛もかねて同行したリア・レオニス(りあ・れおにす)だった。ジェイダスのイコンをガードできる位置にシュッツァーの機体を移動する。
「大陸はわずかかもしれないが生き延びる機会を得た。だが根本的な解決にはまだ遠い。
ニルヴァーナの遺跡群には世界存続の鍵があるかもしれない。なんとしても調査団を生還させなきゃな!」
機体のモニタリングをしていたレムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が静かに応える。
「校長の護衛が最優先とはなりますが、撤退の際探索隊の殿を守る位置につくのもいいかもしれません」
リアがジェイダスへの通信を開いた。
「各機動要塞を拠点に防衛線を展開しましょう」
「無論、そのつもりだ。敵の最終目標はこの遺跡だ。全員の脱出までとにかく敵を食い止めねばならない」
「リアはサクロサンクトが使えます。遺跡を目標にこれを作動させましょう。
当機は遠距離攻撃を得意とします。支援としてこの位置から援護射撃もあわせて行うこととします」
レムテネルが言った。
「そうしてくれ」
ジェイダスから短い同意の言葉が発せられ、リアは意識を集中し、遺跡全体に保護を施す。多少の攻撃ならこれで十分しのげる。あとはとにかく敵をここに近づけないことだ。
「指揮を執る校長もまた美しいな。それに見合った実力もある。俺も彼等に負けないようにしたいものだ。
敵の射撃タイプは光属性に耐性があるらしい。ウイッチクラフトなら、光輝属性じゃないから有効だろう」
リアの言葉にレムテネルが頷く。
「弾切れの心配もありませんから、いくらでも撃てるのも強みですね」
遺跡の周辺を取り巻く林ともいえないほどの木立の辺りを哨戒に当たっていた鬼院 尋人(きいん・ひろと)、呀 雷號(が・らいごう)のファーリス、テュール。尋人は探索隊に参加している友人らを懸念して遺跡の護衛を買って出たのだ。海岸線のインテグラル・ナイトへの一斉攻撃が始まるとの通信を受け、彼は遺跡内の調査隊のメンバーの一人黒崎 天音(くろさき・あまね)に連絡を入れてみた。
「これから交戦に入るみたいだ。ジェイダス理事長はまず心配はないと思うけど……そっちも気をつけろよ」
「こっちは大丈夫だよ。必ず無事に戻るから、鬼院は理事長達の事、皆と一緒によろしく頼むね。
イコンで増幅した歌とは違うけど」
通信機越しに激励の曲を口ずさむ天音。
「……君はやれる。お互い無事に役目を果たして逢えたら、キスしてあげるよ」
短い交信を終え、友の無事を確認した尋人の思考はウゲン・カイラス(うげん・かいらす)のことへと飛んだ。
かつての同じ薔薇の学舎の仲間であり、いろいろあった。しばらく前に少しだけ言葉を交わしたウゲンは、以前とはどこか変わっているように思えた。
「元々謎が多い奴だったけど、ますます謎な人になっちゃったなあ」
彼にもし何か目的があるなら、もと同じ学舎の仲間として可能ならば手を貸したいとも尋人は思っていた。
そこに清泉 北都(いずみ・ほくと)のルドュテから緊急通信が入った。
「動かなかったインテグラル・ナイトが遺跡傍の林で影人間と融合して動き出した。至急応援を!!」
「なんだと?」
時は少し遡る。北都は探索対救出までの間防衛ラインを死守せよとのジェイダスのの意図を重んじていた。そして自分達は少しでも敵を減らすことで間接的にジェイダスの負荷を減らし、彼を護ろうと考えていたのだ。その一環として遺跡周辺の見通しのやや悪い地形をパートナーのクナイ・アヤシ(くない・あやし)がイコンのセンサーを使ってチェックしていたとき、朽木の陰に倒れ伏している2体のインテグラル・ナイトを発見したのだった。
「あれは……死んでいるのか?」
クナイがわからないといった様子で首を振る。そのとき、どこからか霞んだ人影のようなものが2体現れ、滑るように倒れたイレイザーの元へと近づいてきた。
「あれは……影人間?!」
影人間はそのまま浸み込むかのようにインテグラル・ナイトの体内に吸収されると、同時にインテグラル・ナイトがゆらりと起き上がった。
「今はとにかく遺跡に一番近い場にいる敵を潰すことが先決だ。調査、考察はあとでいくらでも出来る」
ジェイダスの声が鞭の様に響いた。真っ先に反応したのが至近距離にいた北都のルドュテだった。
「理事長の護衛を頼む」
直ぐにリアのシュッツァーがジェイダスのイコンをサポートできる位置を取った。さらに遠隔攻撃用の武装の準備をレムテネルが迅速に行う。2体のナイトのうち一体がルデュテに突っ込んできた。
「接近戦? 上等、上等、受けて立とうじゃないか」
「当機は白兵タイプを狙いますので、援護射撃と、引き離した後の射撃タイプの撃破をお願い致します」
急場にもかかわらず青変わらず丁寧な物言いのクナイが僚機に伝える。
今回ルデュテは回避と射撃精度重視でチューンしている。機体に加速をつけ、その加速度を乗せてソウルブレードでナイトを鋭く突く。ナイトが手斧を振り上げた。
「遅いな」
北都がにいと笑う。勢いよく振り下ろされる斧を紙一重の差で避け、ソウルブレードがナイトの肘の内関節に向けて鋭く打ち込まれる。深々と地面にめり込んだ斧をナイトは両手で掴み、引き抜いた。やはり多少なりともダメージはあるのだろう。片手で掴んでいた斧が、両手に握りなおされている。そこに後方にいた一体が腕を砲塔のように変化させ、光弾を打ち込んできた。ルデュテは軽やかに動き、斧を持つナイトと自機の位置を入れ替えた。ナイトの馬に似た横腹に無数の光弾が命中し、呻くような吼え声を上げてドサリと斃れた。
その間に尋人のイコンが静かに奇襲のため物陰を移動して射撃タイプのナイトの傍に忍び寄っていた。今回白兵戦も考え、テュールは機体の防御力を大きく上げている。生身でドラゴンに乗って戦闘に出ることに比べればなんということはない。いつもは慎重すぎるくらいの雷號が短く呟いた。
「……今回は、行かせてもらおう」
シュッツァーからは僚機の動きに合わせてピンポイントでナイトの頭部、胸部に向けての射撃が撃ち込まれ、さらに動きを鈍らせる。北都の機体がその眼前でブースターによる猛烈な砂塵をナイトの頭部に浴びせかけ、直ぐに向きを変えるとソウルブレードで素早い突きを何度も入れる。シュッツァーからの射撃も次々と着弾し、ナイトは両腕を振り回して闇雲に光弾を撃ち出した。
「危ないっ!」
リアの機体が直ぐにジェイダスのイコンをシールドで保護する。テュールが渾身の力をこめてナイトの頭部にソウルブレードを突き立てた。四肢を突っ張らせ、激しく痙攣した後、ナイトはずるずるとその場に崩れ落ちた。雷號が組織などを調べるためのサンプルとして、2体の遺骸をコンテナへと運び込んだ。
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