波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

一緒に歩こう

リアクション公開中!

一緒に歩こう
一緒に歩こう 一緒に歩こう 一緒に歩こう 一緒に歩こう 一緒に歩こう 一緒に歩こう 一緒に歩こう 一緒に歩こう

リアクション


第17章 ロイヤルガード宿舎にて

 ロイヤルガードの宿舎の調理室にも、甘い匂いが漂っていた。
 隊員の樹月 刀真(きづき・とうま)が、チョコレート作りをしていたのだ。
 そこに刀真は十二星華のティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)を呼び、彼女を隣の食堂へと誘って、会話を始める。
 その間、刀真のパートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は、2人の様子を気にしながらチョコフォンデュ用の果物を一口サイズに切って、串に刺していく。
(合コンの時に、何かあったみたいだけど……?)
 何があったんだろうと思いながら、月夜は2人の会話が終わるのを待っていた。

「ジークリンデは「シャンバラに混乱を招いたのは、ひとえに未熟な私の過ちです。それは私の罪なです。ティセラが責苦を背負う事はありません」と言っていたよ」
 刀真はアムリアナ女王の言葉を、ティセラに伝えていく。
 ティセラは静かに聞いていた。
 その顔からは、平静を装っていても……僅かな悲しみが感じられる。
「だから君が責任を感じてシャンバラの為に働く必要な無い、と言っても無駄か、それ以外にも君は君なりの理由でシャンバラを守っているんだろうし」
「そう、ですわね」
 ティセラの返事に頷いて、刀真はティセラを見つめながら言葉を続けていく。
「君はジークリンデに似てるよ、女王のレプリカだからではなく心の在り方が……彼女とそれほど多く話をしたわけじゃないけど、それでもそう思う」
「光栄ですわ。ですが、エリュシオンの手に落ちたわたくしと、落ちずにシャンバラを守り亡くなったアムリアナ様が……似ているなどとは、どうか、仰らないでください」
 消えない自責の念を感じて、刀真は軽く息をついた。
 そして、刀真も少し悲しげな顔をして、話を変える。
「環菜が蘇ったと思ったら、白花が扶桑に取り込まれて……俺は最近まで思い詰めていた」
 パートナーの封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)は、未だ扶桑に取り込まれたままだった。
「そんな俺を心配して声をかけてくれたり、白花を助ける為に力を貸してくれると言ってくれる仲間がいて。俺はそいつらが困っていたら力を貸すし、何かあったら悲しいって考えていたけど……それは相手から見た自分も同じなのか、と気付いたんだ」
「あなたには、沢山の仲間がいるのですね」
 僅かな戸惑いの表情を見せた後、刀真は強く頷いた。
「合コンの時は君に偉そうなことを言ったけど俺もそう思えるようになったのは最近でね、彼奴等への感謝の気持ちを形にしたくてチョコレートを送ろうかな? と準備をしているんだけど、君もやるかい?」
「チョコレートですか……。日本では、想いの人やお世話になった男性に女性から贈るもののようですわよね?」
「最近は、友チョコや逆チョコなんかも増えてる。君にも贈りたい人はいるだろ?」
 刀真の言葉に、ティセラが思いを巡らせる。
「……今、君が送りたいと思った人達は、君が傷付いたらそれを悲しんでくれる人。そして、君に手を貸してくれる人のはずだよ」
 その言葉に、ティセラはごく僅かな笑みを見せた。
「一緒に食べよう」
 月夜が、温めたチョコレートを入れた鍋を持って現れた。
 テーブルの上に鍋を置くと、続いて串に刺した果実を持ってくる。
「3人で食べよう……皆で食べたら美味しいよ」
 月夜がティセラに言い、刀真が椅子を引いてティセラに座るよう誘った。
「ええ……いただきますわ」
 腰かけたティセラの脇に回り、刀真は合コンの時に言った言葉を、もう一度口にする。
「君が辛くなったら俺を頼れ、必ず助けるから」
「……」
 ティセラは、軽く視線をさまよわせる。
 はい、とは言えないようだ。
「刀真はティセラに私達と同じ気持ちを味わって欲しくないんだ……」
 月夜が話しながら、皿を並べていく。
「目の前で環菜が殺されたり白花が扶桑に取り込まれた時のことは今でも心に残っているから……だからティセラが辛くなったら私達が助けるよ」
 ティセラは少し考えた後……頷いて、淡い笑みを浮かべた。
「あなたは色々と、背負い込んでしまう方のようですわね。同じロイヤルガードとして……仲間として、互いの負担を背負い合うことができましたら……嬉しいですわ」
 そう、微笑んだティセラに、刀真は右手を差し出した。
「お互いの理由の為に一緒に俺達のシャンバラを護ろう」
「ええ」
 ティセラも手を差し出して、刀真と握手を交わす。
 そしてその後……。
「今日は胸に手を伸ばしてきませんのね」
 クスリとティセラが笑う。途端、月夜が冷たい目を刀真に向けた。
「あ、うん……今日は、必要なさそう、というか、あの時はやり過ぎた、ごめん! えっと、それじゃ食べようか」
 刀真は月夜の視線を躱して席につき、ちょっと慌てながら果実のついた串を手にとった。