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第19章 サバゲー仲間から

 シャンバラ独立記念紅白歌合戦の際、パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)にステージで告白をした七刀 切(しちとう・きり)は、彼女をサバゲー装備販売店に誘い出していた。
「体格的に、これくらいの銃が扱いやすいかも」
 口数は少なくとも、パッフェルは切に合う銃を、真剣に選んでくれた。
「この店、結構種類あるわね……」
「出来たばかりらしいぜぇ」
 さほど表情には現さないが、そのサバゲー専門店をパッフェルも気に入ったらしい。
「それじゃ、勧めてもらったM4のこれと、パッフェル用にAKのこっちも買ってくるな」
「あ……」
 パッフェルが遠慮するより早く、切は2丁の銃を持って会計に向かい、支払を済ませてしまう。

 買い物を済ませた後、切はパッフェルを街へと連れだした。
「今日のお礼に、食べ歩きでもするかぁ。おごるぜぃ」
「礼、なら、これもらったわ」
 パッフェルは銃が入った手提げ袋を軽く持ち上げる。
「銃は選んでもらったお礼で、このお礼は今日一緒にいてくれたお礼だよ」
 そう曖昧な笑みを浮かべる切を、パッフェルは不思議そうな目で見ていた。
 想いをきちんと把握してもらっていないようだけれど……。
 切はパッフェルのことを、好いている。
 だから、こうして一緒にいるだけで幸せだった。
 パッフェルだって、銃を選んでいる時は楽しそうだったし、趣味の話となると、話が弾むこともあった。
「よし、パッフェル!今日はまだまだ遊ぼうぜぃ!」
 切が明るく笑いかけると、パッフェルも穏やかな微笑みを見せた。
「そうね。たまにはこうして、ゆっくり空京を見て回るのも、良いかもしれないわ」
「それじゃー、案内してやるぜぃ。時期的にバレンタイン関係の試食が多いよなぁ」
「バレンタイン……ティセラ達に何ご馳走しよう……それに……」
 パッフェルは切と共に、店を見回しながら考え込んでいく。
(ティセラや……大切な人のこと、考えてんのかなぁ)
 少し切なげに、切はパッフェルを見た。
 彼女には今、大切な人がいるらしい。
 彼女にとって、ティセラ達親友とはまた違った存在。
 その人物がパッフェルの恋人となるのかは、まだ分からないけれど……。
(それでもワイは最後まで諦めませんとも)
 自分と同じように、友達や大切な人の為に、戦う彼女が好きだから。
 切は心の底から、彼女に幸せになってほしいと願う。
 彼女を幸せにする相手が、自分であってほしいと、戦う彼女を護っていけたらと強く思うけれど。
 パッフェルが幸せになるのなら、彼女が選ぶ相手が自分ではなかったとしても、祝福はするだろうと思う。
 心の中では、大泣きするだろうけれど。
「あれ……試食してみたいわ。試食用はないみたいだから、1個購入してみようかしら……。半分こしない?」
「ん、そうだなぁ。パッフェル一人で食べてもいいんだぜぃ? おごってやるって!」
「お金持ってきてるから、平気よ」
「遠慮するなってぇ。これ一つ下さい〜」
 切はドライフルーツを1つ購入して、パッフェルに渡す。
「ありがとう」
 礼を言って受け取ると、パッフェルは2つに割って、半分切に差し出した。
 そして一緒に食べながら「美味しい?」と、問いかけた。
「うん、なかなか美味いぜぃ。チョコレートに合うかも?」
「そう。買って帰ろうかな……」
 パッフェルはチョコレート作りの材料を選び始める。
「バレンタインには、仲間用――ロイヤルガードの宿舎にも、作ったチョコレートを置いておくわ。よかったら、食べに来てね」
「それは楽しみだ〜」
 サバゲー仲間からもう少し近い仲間に、昇格できたようだ。
 その後も、彼女の得意な料理の話を聞いたり、食堂で食事をしたり。
 ゲームセンターのガンシューティングゲームで勝負してみたり。
 そんな風に、2人で楽しい1日を過ごして、友情を深めたのだった。