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第45章 仲直り?

 空京にあるロイヤルガードの宿舎に酒杜 陽一(さかもり・よういち)は訪れていた。
(何でこんなところに……。まあ、学校や宮殿には呼び難いからだろうけれど……)
 応接室で、陽一はそわそわしてしまう。
 陽一を呼んだ相手は、女王のパートナーである高根沢 理子(たかねざわ・りこ)だった。
 長い間、理子を助けてきた陽一は、いつの間にか彼女を愛するようになっていた。
 そして、シャンバラ独立記念紅白歌合戦の時に、思い切って想いを伝えたのだが……。
 理子からは『今は、先生とその、こ、恋人同士になるなんて、考えられません』と、言われ、振られてしまった。
 覚悟を決めて、腹を括って告白したつもりだったけれど。
 後から恥ずかしさと悲しさが込み上げて、その日の夜、陽一は一晩中布団の中で泣いていた。
(だが、俺には告白した責任があるし、情けない所は見せられない。理子様の前では気丈にふるわねば)
 出されたお茶を一口飲んで、乾いた喉を潤し、陽一は理子を待っていた。
 その数分後。
「酒杜先生、こんにちは……!」
 理子が笑みを浮かべながら、応接室に顔を出す。
 護衛についていた契約者を部屋の前で待たせると、一人で部屋へと入ってきた。
「ごめんなさい。忙しいのに来てもらっちゃって。でも、今日確実に会うには、先生にも来てもらった方がいいと思って」
「……も?」
「あ、はい。会いたい人沢山呼んでるんです。バレンタインデーだから」
 そう言って、理子は持っていた袋を陽一に差し出した。
「お世話になってるお礼です。先生もどうぞ」
「ありがとうございます」
 理子の言い方は、義理チョコだと言っているようなものだったけれど、それでも好いた娘からのチョコレートは嬉しかった。
 陽一が微笑みを見せると、理子も微笑んで陽一の前に腰かけた。
「この間は、皆の前で……すみませんでした。義理チョコでも本当に嬉しいし、こうして呼んでくれたことも、凄く嬉しいよ」
「あたしの方こそごめんなさい。結果的に、先生に恥をかかせてしまいました。あ、あのね」
 理子はちょっと赤くなりながら、言葉を続けていく。
「突然だったから、考える時間がなかったの。今まで、そういう素振りがなかったし。あたしが鈍感なだけだったのかな……」
「いえ、想いに気付いたのは最近ですから。余計なご負担をおかけして、申し訳ありません」
「ありがとう……いつもありがとうございます、先生。先生にはいっぱいお世話になってるから、本当はもっとすごいものをプレゼントしたかったんだけれど……。思わせぶりみたいに見えたら、申し訳ないって思って」
 理子は陽一にぺこりと頭を下げた。
「これからもよろしくお願いします。呼び方は理子さんでも、理子でも、スーパーミラクル美少女理子様でも構わないからね!」
 冗談が含まれた言葉に、陽一の顔に笑みが浮かぶ。
 互いに少し赤くなりながら、微笑み合って、お茶を飲んで。
 それから、理子がプレゼントしたチョコレートを一緒に食べることにした。

 蓋を開けると、ブランデーの香りがした。
 それはちょっぴり苦い、大人向けのビターチョコレートだった。