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7


 今日、死者に会えるという話を聞いたネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は一人の顔を思い出した。
 相手の名前は沢城 鈴
 日本にいた頃のネージュの大親友で幼馴染の女の子。
 身体が弱くて病気がちで、入退院を繰り返していて。
 一緒にパラミタへ行こうと、百合園女学院に入学しようねと話していたけれど、帰らぬ人となってしまった女の子。
 ――すずちゃんは、もしかしたらあたしよりヴァイシャリーに来たかったかもしれない。
 パラミタとナラカが繋がるのなら、この場所に彼女を呼べるのなら。
 ようやく彼女の願いは叶うのかもしれない。
 依り代である人形を手に、ネージュは目を閉じて時間を待った。
 人形を持っていない手には、鈴の遺灰から作った人工ダイヤが入ったペンダントを持ち。
 ヴァイシャリーの街の入り口で。
 鈴のためにと百合園女学院のカスタマイズ制服も用意した。短い時間だけれど、百合園女学院の生徒として過ごせるように。鈴の願いを叶えて、楽しませてあげたくて。
「ねじゅちゃん?」
 不意に、懐かしい呼ばれ方をした。
 目を開けると、人形はなくなっていて、代わりに鈴が立っていて。世界がじわり、滲んだ。
「おかえりなさい」
 それでもネージュは鈴へと微笑みかける。鈴も微笑み、「ただいま」と言った。ふわり、両手を広げる。鈴がそこに飛び込んできて、背中に手を回してきゅっと抱き締めた。昔と同じような感触。あの頃の温かさはないけれど。
 ひとしきり再会の抱擁をした後、
「これ。鈴ちゃん、着てみせて?」
 制服を手渡した。
「これってもしかして……」
 学校案内のパンフレットで見覚えがあったのか、鈴が期待を含んだ声でネージュを見る。
「百合園女学院の制服だよ。今日一日、街や学校を案内してあげる」
 首肯して告げた言葉に、
「ねじゅちゃん、本当ですか?」
 鈴が念を押すように訊くから。
「あたしが嘘ついたことあった?」
 ネージュはそう返して、微笑みかけた。
「行こう。美味しいケーキ屋さんとか、可愛い小物屋さんとか、いろいろ教えてあげる」
 もし鈴が居たらこうしただろうということを、色々してやるんだ。
 ――したいことがありすぎて、一日じゃきっと、時間は足りないけれど。
 それでも、今できることをしよう。
 精一杯楽しもう。
「はいっ」
 手を取り合って、二人は歩き出す。