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《VS ハイナ・ウィルソン》

「ええぃ!だからわちきは、油断は禁物だと言ったのでありんすよ!なのにみんな――」

 次々と破れていく校長たちに、歯噛みするハイナ

「そういきり立つな。どうせオマエも、これから負けるんだ」
「だ、誰でありんすか!」

 どこからともなく、スマートなシルエットとパープル機体色が特徴的な、イコンが現れる。
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)の乗る、絶影だ。

「総奉行・房姫直属特務隠密、紫月唯斗。よ、偽者さん。ぶっ飛ばしに来てやったぜ」
「しかしハイナの姿で巨大化とは、よくやる気になったのう。もはや、猥褻物陳列罪レベルだぞ?」

 呆れ果てた、という顔をするエクス。
 房姫に変身して説教してやろうかとも思ったが、『人格は別』という情報を思い出し、止めておいた。

「わちきは、皆のようには行きませんえ!」

 両手の【花散里】で斬りかかるハイナ。
 絶影は、それを【鬼苦無】で弾き、かわす。
 目にも留まらぬ速さで交わされる剣戟。
 ガキィン!という音と共に、火花が散り、両者の刃がガッチリと組み合う。

 動から静へ。戦いは一転して、力の勝負に移った。

「成程。確かに速さは中々の物だが、重さが足りん。所詮、キーの再現力もこの程度と言う事か」
「ナニをっ!」

 その言葉にカッとなって、刀に力を込めるハイナ。
 絶影はハイナが前に出るのとタイミングを合わせ、後ろに引いた。
 同時に、鬼苦無を高く放り上げる。

「なっ……!」
「『氷華封結陣』、参る」

 ハイナの身体スレスレ、最小の軌道を描いて背後に回り込みながら、足に斬り付ける絶影。
 【氷獣双角刀】から冷気が迸り、ハイナの足を凍らせる。
 完全にハイナの死角に入った絶影は、独楽のように回転しながら、ハイナの周囲を回る。

「きゃあァァァ!」

 連続して斬りつけられ、次々と爆発を起こすハイナ。
 1回転半して再びハイナの前に現れた絶影は、双角刀を大きく左右に引くと、力一杯ハイナに突き刺した。
 双角刀はハイナの腕を貫通し、身体にまで達する。
 そこに、先程宙に投げた双角刀が、ハイナ目がけて落下して来た。
 既に足を凍りづけにされ、両腕を身体に縫いつけられたハイナには、避ける術がない。

「い、いやぁァァァァーーー!」

 恐怖に目を見開き、叫び声をあげるハイナ。
 鬼苦無は、正確にハイナの胸を刺し貫く。

 苦悶の表情を浮かべたまま、ハイナは爆発した。