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校長帝国を倒せ!

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《VS 桜井 静香》

「そ、そんな……。みんな……、みんなやられちゃうなんて……」

 何の戦闘能力も無いが故に、一人戦いの成り行きを見守っていた桜井 静香(さくらい・しずか)は、その場にへなへなと座り込んだ。

 最強を信じて疑わなかった校長連も、今や残っているは自分とティフォンのみだ。

(そうだ!まだティフォンが、兄様がいる!兄様なら、こんな奴等みんなやっつけてくれるわ!)

 静香は、最大最強の校長の存在に希望を取り戻すと、彼のいる帝国城へと駆け出した。


「桜井校長ですか……。やりづらいですね……」

 これまで戦場上空にあって、ひたすらに戦況をカメラに納め続けてきたオクスペタルム号
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)はそのブリッジで、逃げて行く静香の後ろ姿を、痛ましげな顔で見つめていた。
 いくら偽物でしかも巨大とはいえ、抵抗する手段もなく、必死に逃げて行く者を攻撃するのは、やはり気が進まない。

「御神楽君……」

 カメラを向けている卜部 泪(うらべ・るい)も、気持ちは同じようだ。

「待てー、悪人めー!逃さないよー!」

 ただ一人、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)のみは、超ノリノリで静香の跡を追いかけている。
 何度も後ろを振り返り、泣きそうになりながら必死に逃げる静香。

「全砲門、開けー!てっー!」

 脳天気な声で、発射ボタンを押すノーン。
 左右の舷側に並んだ【デッキガン】や【ミサイルポッド】、船首の【ガトリングガン】が逃げる静香を自動的に追尾して、弾丸の雨を降らせる。

「キャーーー!」

 頭を抱えて、その場にしゃがみ込んでしまう静香。

「の、ノーン……。て、手加減とか……しないの?」

 余りの情け容赦無い射撃っぷりに、思わず声が出てしまう陽太。

「なんで?あの静香ちゃん、ニセモノなんだよね?」
「う、ウン。そうだけど……」
「あのニセモノ、悪いヤツなんだよね?」
「そ、そうなんだけど……。ほ、ホラ!可哀想とかさ、あるじゃない?」
「『悪人にかける情けはねぇっ!』って、昨日やってた時代劇で言ってたよ?あれって、間違ってるの?」
「い、いや〜。間違っては無いと思うけど……」
「あってるんだね、よかった〜。よしっ、それじゃそろそろ、必殺技の出番だね!」

 嬉々として必殺技ボタンの前に立つノーン。
 静香はと言うと、もはや腰が抜けてしまったのか、半ベソをかいたまま立ち上がる事も出来ない。 

「げ、元気だして、御神楽君。御神楽君の気持ち、私はよくわかるわ!」
「あ、有難うございます、先生……」

「いっくよー!!ファーイナルウェーイブ!!!」

 パァン!と景気のいい音を立てて、ボタンを叩くノーン。
 艦首のドリルを回転させながら、オクスペタルム号は静香に向かって突っ込む。

「に、にいさまーーーっ!」

 ドリルに跳ね飛ばされた静香は、バッタリと倒れると、大爆発を起こした。