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年の初めの『……』(カギカッコ)

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年の初めの『……』(カギカッコ)
年の初めの『……』(カギカッコ) 年の初めの『……』(カギカッコ)

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●朝のポートシャングリラ

 まだ夜の気配が残っているような気がする。
 港付近にあるため海風で、ポートシャングリラの朝はとにかく寒い。
 けれど現在、神条 和麻(しんじょう・かずま)は寒さを感じていなかった。むしろ暑いくらいだ。ずっと身体を動かしているから。
 彼は大急ぎで屋台を組んでいた。
「朝だし客もまだまだいないだろうと思っていたが……」
 シャングリラが開店してから、和麻はゆるゆると入ってきた。彼は客ではなく仕事のために来た。具体的に言うと屋台、それも甘くてアンコたっぷり、熱々で、おまけに価格破壊の格安というたい焼き屋の運営に来たのである。
 たい焼きというのはいわばおやつなので、朝っぱらからそう売れるものではない。ゆえにゆっくりと来て、早売りのバーゲンなんかも覗いてみて、昼前くらいからおもむろに売り始める気の和麻だった。
 ところがなんということか、屋台が軒を連ねているあたりに来てみると、もうさっそくどこも開店しており、人気店にいたっては行列ができているという有様。
(「そうか……朝イチの福袋目当てに押し寄せた客が、買うもの買って小腹が空いたから来てるってのか……」)
 屋台の前でたたずんでいると、「たい焼き屋さーん、オープンまだー?」と、親に連れてこられたとおぼしき子どもに呼びかけられた。
 こんなときこそ稼ぎ時、幸いすぐにでもオープンできる状況なので、大慌てで彼は材料を取りに戻って屋台を組んでいるのだった。
「お腹が空いてる子どもたち、待ってろよ! すぐに開けるからな……!」