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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

リアクション

 葦原明倫館のアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)もパートナーのルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)アリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)と連れ立って、コースを見て回った。
「ワシは気乗りせんのじゃが……」
 楽しそうに下見をして回るアキラとアリスに対して、ルシェイメアは浮かない顔で遅れて付いてくる。
「やっぱりワシは観客席で応援でもしてることにしよう。がんばってくるのじゃぞ」
「そんナー、3人で出ましょうヨ」
「そうだよ! せっかくだからルーシェも一緒にやろうぜ」
「ワシもか? じゃが頭数が増えると、その分重たくなって、スピードも落ちてしまうのではないかの」
「俺のペットはンなくらいでへたばるほどヤワじゃねーよ。それにアリスの体重なんてあってないようなもんだし、人が増えればその分手も増えるし安定感も増すだろう?」
「まあ、確かにそうじゃが……」
「頼むぜルーシェ! 俺にはオメーの体重が必要なんだ!」

 スパアアアアアアン!!

「ぐおおおぉぉぉぉ……」
 頬を張らして、雪の上をのた打ち回るアキラ。
 ルシェイメアは追い討ちをかけるように、アキラの頭を踵でグリグリ踏みつけた。
「……貴様とは一度じっくりと話をせねばならんようじゃの。……じゃが、まあよい。そこまで言うのならワシも一緒に参加してやるとするかの」
 その後はルシェイメアは率先してコースを見て回る。コース上のでこぼこやアイスバーンをしっかりチェックすると、籠手型HCに記録していった。
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)は、空飛ぶ魔法で上空を旋回するシャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず)に手を振った。
 シャロンも手を振り返すと、目印になりそうな目標物をチェックする。ロザリンドとメリッサがコースの細かな所を、シャロンが広く全体を見て、理想的なルートを探していた。
「わーい! 雪だー!」
 もっともメリッサは雪遊びをしている時間が多かったが。
「ここは内側を通り抜けたいけど、凍り付いて滑りそうですね」
 下りの連続する急カーブで、ロザリンドが携帯電話でシャロンに確認をとる。
「無理に内側を通り抜けるより、多少膨らんでも安全なルートを通りましょう。コースアウトすれば、かなりの時間のロスにつながりかねませんわ」
 ロザリンドは地図のラインを訂正した。
「ねーねー、ココア飲むー?」
 メリッサが勧めるココアをロザリンドが美味しそうに飲み干した。
「明日も持ってくるねー」
 レースではメリッサに御者役を任せることになっている。獣人のメリッサならではの、ペット達との意志の疎通を考えてのことだ。
「シャロンも飲むー?」
 ロザリンドの携帯電話から、「後で頂くわ」との返事があった。
「うん、わかったー」

 ほぼ同じ時間帯に、冬季ろくりんピック本部では、運営を担当する生徒達が最後の会合を行っていた。
「じゃあ、分担はこれで良いですね」
 出席者に卜部 泪(うらべ・るい)が確認を取る。
 空京のテレビ局の看板アナウンサーである泪は、運営に参加した火村 加夜(ひむら・かや)のたっての申し出により、中継を担当する班にいた。
 加夜は一緒に実況を希望していたが、何よりも彼女の経験や知識を生かして、放送・中継を担当するグループのリーダーになってもらっていた。
「リカインさん、会場のアナウンスや案内役をお願いします」
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が微笑んで一礼した。
「総合司会として、ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)さん」
「おう! よろしく」
 リカインの隣に座っていたアフロヘアーでサングラスをかけた強面の男が挨拶する。
「それとキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)さん」
「はーい、よろしくネ」
 ろくりんくん着ぐるみを着用したゆる族の生徒が立ち上がる。着ぐるみ故に性別は不明だが、カツラと水着の胸当て(ブラ?)で本人は女性と主張している。
「最初はヴィゼントさんと司会をお願い。その後はイーオンさんと解説ね」
「わっかりましター」
「それで、そのイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)さんは解説をお願いします」
「任せておけ」
 イーオンは腕組みしたまま了解した。
藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)さんは、宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)と組んで、撮影を担当してください」
「わかりました」
『俺は適当に土産でも売って小銭を稼ぎたかったんだけどな。お嬢に呼ばれちゃ仕方ないか』
 蕪之進は優梨子にささやく。
「お嬢、これってバイト代は出るんでしょうね」
 優梨子のキョトンとした顔を見て、蕪之進は答えをあきらめた。
「実況レポーターは2組。加夜さんと私の組、セレンさんとセレアナさんの組ね。それぞれにカメラが付くのでよろしくね」
 3人の女生徒から「はい」と返事があった。
「あのー」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と共に参加していたセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が手を挙げる。
「実況のコツってありますか? 泪さんなりのものでも良いんですが」
「そうねぇ……」
 泪はアゴに人差し指をあてて考える。
「主役は自分じゃないってことかしら。ついあれもこれもと伝えたくなって、余計なことまで話してる時があるの。でもこれって結局自己満足なんですよね」
 セレアナは横に座るセレンフィリティのわき腹を突っついた。
「よーく聞いておきなさい」
「なんであたしに言うのよ。まるでいっつも余計なことまで言ってるみたいに聞こえるんだけど」
「よく分かってるじゃない」

 その横では救護を担当する班も、打ち合わせを行っていた。
 専門性もあってか生徒は少なかったものの、それでもヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)、佳奈子のパートナーのエレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)が参加していた。
 ヴァイス・アイトラーは、スノーモービルを持っていることから、地上からの監視を担当することになった。
「可能なら治療を、それが無理な場合には、指示を受けつつ搬送を頼みます」
 救護班のリーダーからヴァイスが仕事内容を聞く。
「ペットや従者の種類が分かれば、ある程度の備えができるんだけど……」
 ヴァイスの指摘にリーダーがうなずいた。しかし返事は冴えないものだった。
「一応、事前にアンケートをとってある……が」ヴァイスを始め、救護班のメンバーにペットや従者のリストが配られる。しかし空欄や未定が多い。
「駆け引きか……」
 ヴァイスはため息をついた。
 それでも申し出のあったものをみれば、狼やセントバーナードなど犬系のペットが多いことが分かる。
「あとは臨機応変にってとこか。交代ポイントにある程度準備しておけば足りそうだな」
 布袋佳奈子とエレノア・グランクルスは上空からの監視に振り分けられた。
「怪我やトラブルなんて無いに越したことないけど、その時は連絡係でも運搬係でも、何でもするので任せてね」
 佳奈子とエレノアの発言に、参加者から拍手が起こった。

 いよいよ明日がレースとなる深夜。
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)が懸命にスコップで作業をしていた。
「お、オリュンポスの栄光のためにも……頑張らねば。し、しかし……」
 大きな雪玉をひとつ仕掛けたところで、体力不足が露呈した。普段は魔鎧やイコンなどの研究に従事しており、完全にインドア派である。
 レースを攪乱するためにたくさんのトラップを計画してきたものの、用意を完遂するだけの実行力が伴わなかった。
「む、無念だ」
 とうとう雪玉の前に倒れこんだ。