波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

リアクション公開中!

【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

リアクション

 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)羅 英照(ろー・いんざお)の番になると、シャンバラ教導団であろうと思われる一団から拍手が起こる。
「私が必要とされたのでね。全力でそれに答えようと思う」
 勧誘したルカルカが満足そうにうなずいた。
「もちろん狙うは優勝よね。参謀長の協力を得られたからには、可能性は小さくないはずよ」
 ソリに3人で乗ることについて聞かれると夏侯 淵(かこう・えん)が答える。
「ルカはともかく、俺は軽いからな。実質2人分だぜ。小柄なことが利点にもなるってことさ」
 背後の「ルカだってそんなに重くないわよ」との声を無視して、夏侯淵がしゃべり続ける。
「防寒着も揃えたし、三人一丸となり連携さ。ルカや羅殿と共に、真剣に楽しく駆けられればな」
 夏侯淵の答えにシャンバラ教導団だけでなく、観客一同から拍手が起こる。
 再びマイクがルカルカに戻る。
「シルバーウルフの8頭立てで行くわよ。機動力もパワーもあるし、安定性や旋回性、低体温性からも良いしね。状況によって変えるところもあるようだけど、時間のロスを考えれば交代はしたくないわ。それに飛ぶより走る方が、物理学的に力をより移動力に変換できるのよ」
 自信満々で大きな胸を張った。
「スキルもいろいろ考えてるけど、こっちは秘密かな。正々堂々と勝負するわよ」

「鈿女さんが一番かと思ったが、ルカルカさんも捨てがたい……うーむ、形も大事だが大きさも肝心…………さて」
 マイクを向けられた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は何事かを考えていて、応答がなかった。パートナーのリース・バーロット(りーす・ばーろっと)が急ぎ押しのけると応対する。
「ああ、私が話しますから。今はレースに専念させてますので」
 そう語る彼女もなかなかのボリュームだった。観客席から「ほぅ」とため息が出る。
「はい、パラミタホッキョクグマとフェニックスとサンダーバードを用意しました。バランス良く配置することで、パワーも機動性も発揮できるはずですわ」
 リースがホッキョクグマの頭をなでる。
「あとはスキルを適時使えば、かなり効果的にレースができるはずです。もっとも展開次第ですので、先頭ではなく2番手グループくらいにつけて行くかもしれません。それでもラストスパートは一気に……ですわね」
 相変わらず何事かを考えている小次郎をよそに、リースが説明を終える。
 知的な笑みがスクリーンに映ると、男性の観客から歓声が起こった。

 司会者に負けず劣らずの、スキンヘッド男と空飛ぶマンボウコンビがスクリーンに映る。
 しかもソリには迷彩塗装がバッチリされている。無論、真っ白な雪の上では目立つことこの上ない。
「パフォーマンス賞狙い……え? 無いのか?」
 アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)はインタビューそっちのけで、運営担当を探しに行こうとしていた。
「ああ、すまん。つい……な」
 そこにウーマ・ンボー(うーま・んぼー)が割り込んでくる。
「冬の祭典、ろくりんぴっくに参加出来て、光栄であるぞ。参加するからには、全力を尽くさねばならぬ」
 どんな仕掛けか魔法か見ている人にもさっぱりだったが、エラか羽かを羽ばたかせて独演が続く。
「漢には引けぬ戦いがあるものだ。アキュートよ、我らが本気、見せてやろうぞ。以上」
 言うだけ言って、ソリに向かって飛んでいく。
「すまねぇ、ああ言うヤツなんだ。でもこれだけやる気になってるのは珍しくってな。もっとも空回りすることも多いんだが、大食い大会みたいに……、ああ、いやこっちの話だ。勝負となれば何事も受けて立つ。それだけのことよ」
 最後にカメラに向かってポーズを決めた。

 シャンバラ教導団のクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)は、強気な視線をカメラに向けた。
「やるからには優勝を目指すが、最終的な目標はあくまでも西シャンバラチームの勝利だ」
 クレアが答えると、西チームの観客から拍手と歓声が上がった。
「パラミタセントバーナード、シルバーウルフ、賢狼を用意した。引き手も乗員も、状況を考えて適宜変えていく。時間のロスは覚悟の上で、これが最善の形と思われると思う」
 強い瞳のまま表情を変えることなくクレアは淡々と答えた。
「オレは登りと湖フィールドまで、あとはボスに任せるぜ」
 クレアに比べれば、エイミーもいくらか気安さは感じさせるものの、必要なことだけ語ると、ペットの世話へと戻る。
「妨害行為? 自分から仕掛ける気はないが、やわな当たりなら弾きかえすだろうな。それに不正を目撃したら、厳正厳格に対処してもらう。それが西チームであってもだ」
 クレアも答え終わると自らカメラを後にした。
 
 一転、ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)アリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)の愛らしさがスクリーンを占拠した。
 アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)も映っているはずなのだが、ボサボサ頭に眠そうな顔つきでは、誰も注目する人はいなかった。
「コースの下見も十分にしたからのう、突発的なアクシデントでもない限り、わし達に死角はないはずじゃ」
 ルシェイメアが満足の笑みを浮かべる。
「アキラー、何してるのヨー」
 アリスに促されて、アキラがマイクの前に来る。ようやく観客にもアキラがメンバーの一員であることが分かる。
「ペット好きの俺としちゃ見逃せないなって。正々堂々と勝負するぜ!」
 眠そうな顔がいくらか、覚めた目つきになって答えた。それでもカメラはルシェイメアを写しがちだ。
 そんなルシェイメアが声を落として体重を話題にする。
「ところでさっきの30キロと言うのは本当か? 身長は? うーむ、いや、アキラがやたらにわしの体重を必要としとるのでな。もう少し絞った方がよかったかのう」
 アキラが素早く反応する。
「いや、ルーシェ! オメーの体重はそれくらいで良いぜ! 適度にフクフクとしてた方が……ウギャッ!」
 ルシェイメアの箒の柄がアキラのみぞおちに突き刺さった。
「見苦しいところを見せたな。まぁ、レースを楽しみにしとってくれ」

 白波 理沙(しらなみ・りさ)の率いるチームがインタビューを受ける。
「4人は多いかしら。でも女の子2人とゆる族と獣人だから、重さはそれほどではないのよ」
 ランディ・ガネス(らんでぃ・がねす)ピノ・クリス(ぴの・くりす)、そして誘われた雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)が並んでいる。
「ソリを引くのも、雪だるまとパラミタペンギンとパラミタセントバーナードだから、十分余裕もあるしね」
 カメラとマイクが雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)に向けられる。
「ソリの経験はないけど、理沙達としっかり練習しましたわ。もう私達に勝てる相手なんていないんじゃないかしら」
 長い金髪を書き上げて高笑いする。乗員を依頼されたときとは大違いになっていた。
「えっ? 4人の中で私の体重が一番重いのではですって?」
 雅羅は振り返ると、理沙とランディに体重を尋ねる。ゆる族のピノ・クリスは明らかに軽かった。
「オレ? 45キロだぜ」
 あっさり口にしたランディ。「教えない」と抗弁する理沙だったが、やがて雅羅にそっと耳打ちした。数字を聞いて青ざめる雅羅。
「ま、まぁ、大した差ではありませんわ。ほんの1桁の差くらい」
 高笑いする雅羅だったが、スクリーンに映った表情はいかにもぎこちなかった。