リアクション
「ぞろぞろと出てきますね。楽しくなってきました」 ○ ○ ○ 「後で見直した時に、何かを再発見できるかもしれんからな」 地上でも、デジタルビデオカメラで、格納庫周辺の様子や、取引を記録している者がいる。武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)のパートナーの武神 雅(たけがみ・みやび)だ。 神楽崎優子の許可はとってある。 発見状況や保存状態、取引条件を記録しつつ、撮影しておけば、資料として使えるはずだ。 「それにしても、面白そうな奴らが沢山いるじゃないか。探索後の打ち上げが楽しみだ」 カメラにパラ実生を写しつつ、雅は軽く笑みを浮かべた。 「よろしければ、お弁当食べてください。お腹が空いていては、探索できませんから。お茶もどうぞ」 牙竜のもう一人のパートナーの龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)は、優子に確認をとった後で、弁当とお茶を配って回っていた。 パラ実生にも、教導団員にも、そのどちらでもない者にも。立場関係なく。 「無線機もお使いください」 インカムタイプの無線機もパラ実生にも配っていく。 「後から来たヤツらに連絡することなんてねーよ」 「発見したものについてだけではなくて、罠や警備機晶ロボットと遭遇した時に、知らせていただけましたら、助けにいけますから」 そう優しく微笑んで、灯は不良達にも無線機を持たせた。 「発見したものの鑑定は、あちらで行わせていただきますので、何か見つけましたら来てくださいね」 灯は鑑定所の場所を教えた後、別のグループに弁当を配る為にその場から離れて。 「変な薬とか入ってないぜ。なんなら交換してもいい。まだ機晶姫が暴れてるようだし、しばらく様子を見ながら、情報交換をしないか」 弁当とお茶を持った牙竜がそのグループに近づき、地べたに座って弁当を食べ始める。 竜司達から取引内容をも聞いていた不良達は、まだ少し疑っているものの、今強引に探索するよりも様子を見た方がよさそうだと、気づいていた。 弁当を食べながら、牙竜の言葉に耳を傾けていく。 「全部でどれくらい集まってるんだ? 1つのグループじゃなよな。ここの格納庫、遺跡ってほど広くはなさそうだけど、なんで探索難航してるんだ?」 そんな風に、牙竜は不良達に問いかけていく。 「ドアが開かねーんだよ。で、グループで開けようとしてるんだけど、邪魔が入って作業がすすまない」 グループ数は定かではないが、30人ほどの不良達が集まっているようだ。 協力して、時間をかければ壁を壊すことも不可能ではない。 「開かねーってことは、大事な物があるに決まってるんだけどよ!」 「まあ、大事なものはあるかもしれないが、それが価値のあるものかどうかは分からないからな。壁や柱は無闇に破壊すると、崩れる可能性あるぞ」 もぐもぐ、弁当を食べながら牙竜はそう言う。 「ドアはこっちの技術でなんとかなると思う。その後の探索はみんなでやろうぜ。争奪戦……というか、早い者勝ちになるだろうけれど、こっちが欲しいのは金目のものじゃないし、優子さん達と奪い合いにはならないと思うぜ?」 危険を排除し、通れるようにしてくれるというのなら、まあそれでもいいとそのグループのリーダーは言う。 「それとさ、この仕事が終わったら宴会を開こうぜ、若葉分校で打ち上げやるみたいだから、皆でそっちに顔出すのもいいかもな」 「おーそりゃいいな。エロサイトっていうのにも、興味あるしな!」 そんな言葉と同時に、ようやく不良達の笑みが見れた。 「危ないですから、こちらの岩陰で待っていてください。危険がなくなりましたら、皆さんにも必ず声をかけますから」 若葉分校生の関谷 未憂(せきや・みゆう)は、怪我をした不良達を岩陰へと運んだり、引っ張ってきていた。 「くっそー、壁破壊した奴ら、一発殴らねぇと気が済まねぇ!」 「……けんかは……だめ……」 不良の手を掴んで止めたのは、プリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)だ。 「……みんなで、たべて……まつ……」 プリムは持ってきたお菓子を、不良達に握らせたり、ぽけっとに押し込んだりしていく。 「バレンタインが近いですし。チョコレートとか如何ですか?」 未憂は治療をしながら、微笑んだ。 「お、おう。殴るのは後でいいか」 チョコレートという言葉に、結構あっさり不良達は陥落した。 「ケガがなくても、よろしければ休憩していってください。チョコレートの他にも、パンやプリムが持ってきたお菓子もありますから」 お菓子が入った箱を、リーダーの少年に渡して。 未憂は怪我人を、ナーシングや応急手当の知識、リカバリ、ヒールの魔法で優しく、丁寧に治療していく。 「どーぞ、召し上がれ♪」 リン・リーファ(りん・りーふぁ)は、ギャザリングヘルスのスープに、香辛料を入れた者を不良達に渡していく。 「これ、飲み物か?」 「うん、スープだよ♪」 未憂に味見してもらっており、見かけはともかく、味には問題はなかった。 リン自身も飲んでみせる。 「……のむ、あたたまる、ちからでる……」 プリムも受け取って、一口、スープを飲んだ。 訝しげな顔をしながらも、不良達も飲み、そしてお菓子を摘まんでいく。 「しかし、なんなんだよ、あいつらは。お前等もだけど」 「えっとねー。ここで見つかった月まで行ける船が今壊れちゃってて、シャンバラの女王さまが困ってるんだって。で、修理する部品を探して、ここに来たらしいよー」 不良の愚痴に、リンが答えていく。 「すっごいちっちゃくても良い部品だったら買ってくれるんじゃないかなあ? 宝探しみたい。一攫千金も夢じゃないよねロマンだねー。たくさん部品を見つけて協力してくれたら、シャンバラの偉い人が大荒野でも携帯使えるようにしてくれるかもだってー」 「携帯? そんなもん、もってねぇし」 「若葉分校に、置くらしいよ。そこから電話したり、ネットしたり出来るんだって」 リンの話を、ふーんと、不良達は聞いていく。 「よかったら、他の子達にも教えてあげてね! あ、そうそう」 少し離れた位置で待機している者達――第七龍騎士団のルヴィルと従龍騎士の方を指差して。 「あの人たち、エリュシオンの騎士なんだってー。ちょう強いみたいだよ。あたしも前に助けてもらったこと、あるんだよー」 「強いって聞くと、倒したくなるぜ!」 「そ、それは待ってください。戦うのなら、龍騎士より、恐竜騎士がお勧めですよ! でも、今日は探索を優先しませんか」 未憂がフォローし、プリムは幸せの歌を歌いだす。 そうして彼女達は、可愛い女の子からのお菓子と、天使の治療という無意識な懐柔で留めておくのだった。 |
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