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死いずる国(前編)

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死いずる国(前編)

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PM2:00 合流と別れ

「いや〜皆さん大人数で、取材の甲斐があります!」
「……(ぺこり)」
「誰だ貴様は」
 オヅヌを出た理子たちに、突然二つの影がすり寄ってきた。
 即座に理子とハイナを守る面々。
 その中の、フリーレ・ヴァイスリート(ふりーれ・ばいすりーと)が警戒心むき出しのまま二人に問う。
「初めまして、河北日報の神宮寺 翔(じんぐうじ しょう)と申します。隣は、神宮寺 櫂(じんぐうじ かい)無愛想ですが、弟です」
「……よろしく」
「記者? よくもまあこんな状況の中で……」
 酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)が呆れたように呟く。
「ええ。私がカメラ担当、弟が記事担当」
「逆の方が向いてるんじゃないか」
 各方面にカメラを向けながらぺらぺらとしゃべる翔と、むっつり押し黙ったままの櫂。
 そんな二人に軽口を叩きながらも、陽一は警戒を怠らない。
 今の所、彼らに敵意は見られない。
 しかし、だからといって油断していい事にはならない。
 特に、理子には一歩たりとも近づけさせたくない。
(……ちっ)
 陽一と壮太ら理子を護る面子の警戒に、櫂は小さく口の中で舌打ちした。

「あれ、貴仁……は、行かないの?」
「ああ」
 九条 ジェライザ・ローズは、オヅヌから動かない鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)に思わず足を止める。
「ええ。俺には俺の考えがあるので、皆さんとは別行動をとらせていただきます」
「そんな」
「大丈夫、死ぬつもりはありませんから。俺は宝珠ではなくオヅヌ周辺が気になるので、調査しながら生き延びてみようと思っています」
「あ、あの、それなら私も残る!」
「えー!」
 突然の硯 爽麻(すずり・そうま)の言葉に驚きを隠せない鑑 鏨(かがみ・たがね)
 爽麻は言い訳するように続ける。
「私も、その、オヅヌが気になってたし……」
 途中、ちらちらと貴仁の方を見るが、当の本人は気づいた様子もない。
「……爽麻が言うなら、それに付き合うよ」
 鏨が諦めた様子で頷いた。
「分かったわ。気を付けて」
「そちらも」
 理子と貴仁は小さく頷き合った。