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デスティニーパレードinニルヴァーナ!

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リアクション


第二章


『ようこそデスティニー・セレスティアへ!!!』
 ゲートを抜けた先。
 先ず目に飛び込んできたのは、そう書かれた横断幕だった。
「これが遊園地、なのね」
 辺りを見回し、ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)はポツリと呟いた。
 知識としては知っているけれど、実際に足を踏み入れるのは初めてなのである。
「夢の国って話だけど、一体何がそうなのかな?」
 疑問を口にするけれど、それに返ってくる言葉はない。
「あ……今日は一人で来たんだった……」
 隣を歩くはずのパートナー。しかし、今は別行動中。
「しょうがないよね……でも、ここは夢の国って言うくらいだから、楽しめる、のかな?」
「ルシアちゃん!」
 自問していると、背後から呼び止める声が上がった。振り返ると、そこには親友の桐生 理知(きりゅう・りち)北月 智緒(きげつ・ちお)が手を振ってこちらに歩いてくるところだった。
「あれ? 今日は一人?」
「ええ、そうなの」
「そうなんだ、珍しいね」
 他意はないのだが、事実を突きつけられて少し顔の曇るルシア。しかし、それも一瞬。すぐに笑顔へ戻る。
 その微妙な変化に気付いた智緒は、「ねえ、理知」と小声で耳打ちする。
「ルシアちゃん、ちょっと無理してない?」
「うん、私もそう思う」
 理知も些細な機微に感づいていた。
「どうかしたの?」
 コソコソと話し合う二人に首を傾げるルシア。そして、
「ルシアちゃん、一緒に遊ばない?」
「一人より二人、二人より三人。大勢の方が楽しいよ!」
 行き過ぎたお節介にならないよう心がけ、彼女達は誘いの言葉を掛けた。
「そうね、そうしようかな」
「よかった! よろしくね!」
 二人が笑みで迎えると、ルシアの表情も自然と綻んだ。
「それで、ルシアちゃんは何に乗りたい?」
「えっと……初めてで良くわからないの」
「それなら、ジェットコースターに行こうよ!」
「最初は絶叫系でテンションあげないとね!」
「丁度完成した新しいジェットコースターがあるみたいだよ。先ずはそれに乗ろ!」
「それってどこに……」
 キョロキョロ伺うルシアに対して、二人は両側から、
「あっちだよ!」
「さ、行こう行こう!」
 ルシアの手を握って先導した。


 その光景を影から眺めていた夏來 香菜(なつき・かな)
「子供っぽい乗り物に浮かれてるわね」
 ふんっと鼻を鳴らし、去っていくルシアたちを見送る。
 話が聞こえていたわけではないが、行き先はわかる。一直線にジェットコースターへと向かっているのだから。目で追う必要も無い。
 視線を外して目を閉じ、腕を組み、
「私に言わせれば、あんな乗り物は序の口よ。ただのお遊びだわ」
 とふんぞり返ってのたまっているのだが、瞑ったはずの目はうっすら開いてルシアを見ている。
 余程ルシアのことが気になるのか、自分も遊びたいのか、はたまたその両方か。どちらにしろ、表に出しては恥ずかしい感情だと思っているのだろう。
「あれ、香菜ちゃん?」
「ひっ、ひゃあっ!?」
 だから突然掛けられた声に過剰に反応してしまった。
「ど、どうしたの?」
 あまりのリアクションに驚いた杜守 柚(ともり・ゆず)はついつい謝ってしまう。
「ご、ごめんなさい」
「あ、いえ、そんなつもりは無いのよ。こちらこそ、ごめんなさい」
 二人で頭を下げると、同時に噴出した。
「偶然だね。こんなところで会えるなんて」
 笑い合う彼女達に杜守 三月(ともり・みつき)はそっと加わる。
「僕達は遊びに来たんだけど、香菜はどうしてここへ? 一人?」
「えっ、そ、それは……」
 口ごもる香菜。彷徨わせた視線は無意識にルシアの向かった先へ。
「香菜ちゃんも遊びたいんですね。それなら、私たちと一緒に遊びましょう!」
「それがいいね。どうかな?」
「わ、私は別に、遊びに来たわけじゃないけどっ!」
 誘いに否定を重ねるが、どう見ても本気ではない。それがわかる柚と三月は優しく微笑んで、
「こうして会えて嬉しいです。これで一緒に遊べたら、もっと嬉しいです」
「だから僕達を楽しませるために遊んでくれないかな?」
 彼女の性格を考え、誘い方を変えてみた。
「そ、それなら、一緒に、行くことも、やぶさかでは、ないわね」
 もう一押し。
「ダメ、ですか?」
「お願いだよ」
「そ、そこまで言うならわかったわ。一緒に行ってあげるわよ」
「ホント? ありがとうです!」
 大喜びの柚。三月も声には出さないけれど、嬉しさは伝わってくる。
「それで、香菜ちゃんはどれが好きかな?」
「私は……」
 ついつい目が向いてしまったのはジェットコースター。好きと言うよりも気になって仕方がないのだろう。
「ジェットコースターか。遊園地の定番だよね」

 そうして連れて行かれたジェットコースターの乗車場。
『高みへ登る高揚感、急降下の開放感、終わった後の充実感。
 恐怖と興奮と歓喜の連続は、楽しい瞬間を演出してくれるのじゃ! BY草薙 羽純』
 と書かれた感想版に、柚は少し震えた。
「私、ジェットコースターは目を瞑ってなら乗れます……」
「え、そんな、無理しなくても……それに私は――」
「だ、大丈夫です。香菜ちゃんと一緒ならどれも楽しくなっちゃいます」
「心配なら、はい」
 手を差し出す三月。
「皆で手を繋げば、怖さも和らぐよね?」
「ありがとう!」
「はい、香菜も」
「し、仕方ないわね……」
 渋々といった体で柚の手を取る香菜。
 そして着席。
 乗ったコースターは上昇を続ける。
「いよいよだね」
「うっ、意識しないようにしてたけど……ドキドキしてきたわ」
「怖いけど……一緒なら、うん、楽しいですっ!」
 そして皆、歓喜の声を叫んだ。


「楽しかったね、ルシアちゃん!」
「イコンで慣れていたつもりだけど、自分で操縦しないとなると全然違った感じがするのね」
「それがまたいいんだよね!」
 一足先に降り立ったルシア、理知、智緒。思い思いの感想を述べ、「また乗ろうね」と締めくくり、会話をシフトさせる。
「次は何に乗ろっか?」
「うーん……?」
 考え始めたルシアの目に、一種異様な建物が映った。
「あれは何?」
 ボロボロの建造物。塗装も塗りっぱなしに垂れていたり、穴が開いていたり、夢の国などには似つかわしくないであろうもの。
「多分、お化け屋敷……だよね?」
 疑問系なのは、理知自身も判断がつかなかったからだ。
 誰の手にも付かず、開園当初から設置されているお化け屋敷。
 でも逆に、寂れた感じと朽ち具合が異常なほど雰囲気を出していた。
「これって、まだやっているのかな?」
「みたいだよ。智緒、入ってみたい! リアルな廃墟みたいで面白そう!」
 ちょっと失礼だけれども、一理ある。
「ね、ルシアちゃんもいいよね?」
「うん、行ってみたい」
 絶叫系で少し張っちゃける事ができたのか、自然な笑顔が零れるルシア。
「やっぱり、笑ってるほうが楽しいよね!」
 今度は三人一緒に、前へと踏み出した。