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アーリー・サマー・ニルヴァーナ

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アーリー・サマー・ニルヴァーナ

リアクション

13)


宮殿都市アディティラーヤのVIP御用達な高級レストランにて。

御神楽 陽太(みかぐら・ようた)
御神楽 環菜(みかぐら・かんな)
そして、ツァンダの町の精 つぁんだ(つぁんだのまちのせい・つぁんだ)は、
会食を行っていた。

「昔、お世話になって……はいないような気がしますが、
ひさしぶりにお話できてうれしいです」
「ああ、ざんすか内乱の頃か……基本、僕、ひどい目にしかあってなかった気がするけど」
「地祇(ちぎ)の大騒ぎに陽太も参加してたの?」
そんな昔話をしつつ、
陽太は、本題である商談を持ちかけた。

「ツァンダでつぁんだが取り仕切っているモンスターレースがありますよね。
あれに、俺の個人的な資産を投資させてほしいんです。
最大で、1000万ゴルダほど出資するので、
大々的なレースを企画して
モンスターレースでツァンダの街をさらに賑わわせることができないかな、と思って」
「いっせんまんごるだ!?」
つぁんだが目と口を開いて固まる。
1ゴルダ100円から500円と換算した場合、
1000万ゴルダは、およそ、10億円から50億円である。

「あ、これは、俺の個人的なお金ですから、
環菜と一緒に経営している鉄道会社のお金とは関係ないですよ。
ただ、ツァンダへの需要が増加すれば、
現時点ではまだツァンダには伸びていない
鉄道路線を引く強い動機として機能するかもしれませんし」
さらに、陽太は宣伝広告や設備投資の協力も申し出た。

「1000万ゴルダか……ふふ、へへ、ふへへへ」
「もちろん、持ち逃げは厳禁ですからね」
「僕がそんなことするはずないじゃないか」
つぁんだが、あきらかな棒読みで言う。

話を黙って聞いていた
環菜だったが、ふと、料理のフォアグラに目をやる。

「そういえば、フォアグラって、
ガチョウを狭い場所に閉じ込めて、
無理やり高カロリーの餌を食べさせて、
脂肪肝を作るのよね」
「へえ、よく知ってますね、環菜」
陽太は感心するが、
つぁんだは、環菜の目の光にビクリとする。

「ところで、話は変わるけど、
ギリシャ神話には、
火を盗んで人間に渡したプロメテウスが、
山の頂に縛り付けられて、ハゲタカに肝臓をついばまれた話があるわね」

「そうなんですか、環菜は物知りですね」
陽太は、なぜ、環菜が今、そんな話をしたのかわからないが、
自分の愛する妻は教養があるなあ、と思って、誇らしく思っていた。

一方、つぁんだは、環菜の発言の意味の真意を感じて、
がくがく震えはじめる。

「あれ、どうしたんですか?」
「ななななななななんでもないよ!」
にっこり笑う環菜の視線が、
「私の愛する夫である陽太を裏切るようなことがあったら許さないわよ」
と言っているのを感じて、
つぁんだは、慌てて陽太に答える。

「もちろん、ツァンダの町の発展のために!
君の出資を受け入れるよ!
よろしくね!」
「ありがとうございます!」

陽太は、交渉が無事に成立したと思って喜んだ。

こうして、3人は、あれこれ今後についても話しつつ、
楽しく(?)会食を続けるのであった。