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魂の研究者・序章~それぞれの岐路~

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魂の研究者・序章~それぞれの岐路~

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 第32章 作戦会議

 ノーンが合流すると、覚は彼女と望に予定を実行すると改めて言った。全員で病院に入り、窓辺に丸テーブルとソファセットが幾つかあるだけのエントランスに入る。内部は、とても病院とは思えなかった。着替えてくるというルカルカとダリルを待つ為にソファに座り、暖房の効いた空気の中でノーンは陽太に連絡を取る。パートナー間通話の利用で、すぐ近くで話しているように陽太の声はクリアだった。
「おにーちゃん、サトリさんに会えたよ! それでね……」
 これからリンの所に行くと報告し、その際の作戦について説明する。
『そうですか。サトリさんも全てを知った上で話しに行くことになったんですね。作戦については……状況が状況ですから、対策が多くて困ることはないと思います。今、メモを取ったので俺達の方でも相談してみますね』

「……それで、これが予定している作戦だそうです」
 1度電話を切り、陽太はノーンから聞いた話をリスト化したものをテーブルの中央に置いた。
「どうですか? ラスさん。気になる点とかはありますか? 何か他に必要そうなこととか」
「そう言われてもな……」
 帰れというのはもう諦めたらしく、ラスは緊張感が抜けた様子でリストを見遣る。
「俺達が殺された状況も判らないわけだし、何を言い様も……いくら対策したって時と場合によっては失敗するだろ。まあ、しないよりはマシだろうけどな」
 陽太はそれを聞きながら考える。確かに細かい状況までは不透明なままで、自分達が持っている情報はかなり限定されている。もっと詳しいことが判れば、更に有効的な方策が取れるかもしれない。
「フィアレフトさんにも聞いてみましょうか。直接見てはいなくても当時の事件を知っているわけですし、何かアドバイスをくれるかもしれません」
「あいつに? ……そうだな。一応電話して……」
 携帯を操作しかけたラスは、そこで何かに気がついたようだった。バツが悪そうな顔で陽太に電話を放ってくる。
「……掛けてくれ。そして代わりに怒られてくれ」
「……?」
 何かやったのかと思いながら電話を掛ける。
『やっっっっっと電話してきてくれましたね〜〜〜〜〜〜』
 すると、おばけやしきとかで出会いそうな語調のフィアレフトの声が聞こえてきた。
「…………?」
『出て行ってしまったのは仕方ないです。ミサイルを使ったのも仕方ないと考えて千歩譲って許します。機能を付けたのは私ですし……でも、電話くらいはしてきてください! あの後どうなったのかも全然分からないし……それは私も一時空に居ましたけど、留守電くらい入れられますよね? というか、管理人さん誤魔化すの大変だったんですよ? 何で私が嘘吐かなきゃいけないんですか何で私が怒られなきゃいけないんですかー!!!』
「あ、す、すみません、陽太です……」
『へっ!?』
 電話の向こうが長々と沈黙する。『……………………』となっている隙に、陽太は事情と現状を説明した。作戦リストの内容も読み上げる。
「それで、フィアレフトさんの意見も聞きたいんですが……」
『そ、そうだったんですか、ごめんなさい。え、えーと、その作戦でサトリさんが助かるかどうかってことですよね。結論から言えば、判りません。私も変更しようとしている状況の未来は……いえ、もう殆どの細かい未来については確約することは出来ませんし、軽々しい事を言って期待させてしまうのも良くないと思うので……。ただ……』
「ただ?」
『その作戦にもう1つ付け加えるとなれば……何を出されても絶対に食べない、ということでしょうか』
 その言葉の意味は、すぐに理解できた。口にするものを警戒する理由は、1つだ。
「毒を使う可能性があるということですか? でも、確かリンさんは……」
『自分のいる場所が病院だと思っていないので、劇薬関係を盗んだりするのは考えもつかないと思います。でも、一般で手に入るものの中にも、危険なものはありますよね?』
 こんな事になると思っていなかったので、言わなかったんですけど……と前置きして、フィアレフトは続けた。
『私の世界では、サトリさんは刃物で、おじさんは最終的に毒物に因って亡くなったと聞いています。おじさんは仮にも契約者ですから、急所に当たらない限り物理的な方法ではそう簡単に死にません。凶器への警戒は充分しているようなので、それに加えて毒物への警戒もしてください、と伝えてください。今回がどうなるかは私にも分からないので、一応、です』
「……分かりました。すぐに伝えますね。他には、何かありますか?」
『他に……そうですね。ピノさんの不機嫌ゲージがどんどん上がっているので、出来ればそろそろ戻ってきてくださいっておじさんに言ってください。私は怒らないのでって』
「えっと……」
 さっき怒ってましたよね、とは言わない方が良さそうなので、陽太はお礼を言って通話を終えた。伝言を伝えると、リストを見ていたラスは「げ」と物凄く嫌そうな顔をした。
「それで、何か気になることはありましたか?」
「あるっちゃあるけど、あえて言うなら……」

「え、Pキャンセラーは効かない?」
「たぶんだけど、って言ってたよ!」
 着替えてきたルカルカ達に、ノーンは陽太からの話を伝える。Pキャンセラーは、あくまでも契約者の能力を封じるアイテムだ。パラミタ人と契約していない地球人の超能力に効果があるかどうかは保障できないのではないか、という話だった。
「だから、効いたらラッキー、くらいで効かないことを前提にして使った方がいいだろうって!」
「その方が安全かな……? 後は毒ね。飲み物とか用意することになったら、サトリが淹れた方がいいかもね。一応、お水買っていく?」
 そして、水だけ追加で購入して5人は5階へのエレベーターに乗った。