リアクション
「そうね。優子さんのお考えは?」 ○ ○ ○ ○ パラ実生達が集う分校を、優子は真直ぐ見据える。 戸惑いも、勿論恐れも見せない。 魅世瑠は凱旋行進の露払いとばかりに、先頭を歩き、分校の入り口まで歩く。 ……なんだか、喫茶店の入り口前に左右縦ニ列に並んでいる様子に、優子が軽く眉を顰めた。 「整列ぅ!」 魅世瑠はパラ実生の列に並ぶ。 途端、パラ実生達が背筋を伸ばす。 「優子様、遠路はるばるお疲れ様でごぜえやす」 「お疲れ様でごぜえやす!」 パラ実生達が魅世瑠に続き、深く頭を下げる。 優子は思わず絶句。 キャラは頭を抱える。 「ろ、ロザリンド。こういう場合の反応は?」 優子が尋ねるも、ロザリンドはふるふると首を振る。 「すみません。本馬車の中においてきてしまいました」 「そ、そうか……」 「さ、さ、どうぞ中にお入りくだせぇ。野郎共が待ってますんで」 魅世瑠に躾けられているブラヌが、手の平を喫茶店の方に向けて、優子一行を誘う。 「……ご苦労」 一言だけ言うと、わき目も振らず優子は真直ぐパラ実生が作った道を歩き、店内へと入るのだった。 「おーほっほっほ! 優子様、こちらにいらして下さいませ♪」 ブラヌの案内で、一旦磨きぬかれた特等席に腰掛けた優子だが、百合園のロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)に腕を引かれ、キッチンへと引っ張られる。 「七草粥をお作りしようと思っていますの。野草を切るの手伝って下さいませ! そちらのあなたもお願いしますわ!」 ロザリィヌが見定めるような目で優子を見ているパラ実女性徒を引っ張り込んで、並ばせて包丁を渡していく。 「四天王が包丁なんて、何を下ろすつもりですかぃ」 若干声を震わせて、女性徒は僅かに優子から離れロザリィヌに渡された野草をザクザク切る。 「ふふ……刃物の扱いなら任せてくれ」 飾り物のように座っているよりは、キッチンに立って仕事を与えられていたほうが落ち着くらしく、優子は軽快な音を立てて野草を手際よく切っていく。 「……しかしこれ食べられるのか? 見たこともない野菜だが」 「大丈夫ですわ! この草は茹でると苦味がなくなりますわ! おーっほっほっほ!」 公園でのダンボール城生活で鍛えた、ロザリィヌのサバイバル料理だ。 ファーストフードなどにも行かない優子としては、本当に大丈夫なんだろうかと不安に思いながらも、切った野草をざるに乗せて水洗いをする。 四天王に負けていられないと、パラ実の女子達も包丁を野草に叩きつけていく。 「まな板が傷つくぞ。野菜を左手でこう押さえて、包丁はこう押すようにして切るんだ」 切り方を押していく優子の姿は、四天王ではなく面倒見の良いお姐さんであった。 「し、四天王? こ、この部分は食えんのか?」 おどおどとだが、優子に質問をしてくる者も出始め、ロザリィヌは高笑い連発で微笑ましげに見つめる。 恐れられるだけではなく、好かれ、溶け込めるようにと思い誘ってみたのだが、なかなか良いカンジである。 「優子四天王、簡単でいいので挨拶お願いしますぅ〜」 キャラがキッチンに顔を出し、困惑気味の優子をカウンターに連れ出した。 農家の方々の許可を得て、喫茶店は分校生の貸切となっていた。 カウンターの前、奥の席、それから窓の外にも多くのパラ実生が集まりカウンターに目を向けている。 歩や、料理担当の者達がお節や飲み物の配布を終えて、カウンターに戻ってくる。 最後に、優子にジュースを注いだグラスを渡した。 「あの方が番長ですぅ〜」 キャラが目を向けた先には、パラ実の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)の姿がある。 腕を組み、仁王立ちしながら竜司は優子を見定めていく。 口には出さないが、竜司は優子の存在がずっと気になっていた。 竜司は女で、しかもお嬢様学校である百合園生なのに、優子が何故C級四天王になれたのか非常に気掛かりだった。 厳つい、ガタイの良い、ゴリラのような女を想像していたが……。 目の前の女性は華奢ではないが、細い。 女にしては長身で、引き締まった体をしているとは思う、が。 パラ実の女と比べて、まるで派手さがない。肌も白い。 そうか……。 この女。強くてカッコいいイケメンと噂のオレに会うために、毛剃りして、化粧してきたんだな! と竜司は思った。 その優子が竜司の方へ目を向ける。 「番を張ってる吉永だ」 そう、竜司が名乗ると、優子はふっと笑みを浮かべた。 「神楽崎優子だ。宜しく頼む」 端正な顔の微笑み、軽く自分に頭を下げたその様に竜司は思った。 (マズイ、この女オレにホレてやがる!) そして深く考え込む。 (C級四天王に告られたらどうすンだ? 無論オレの方が数倍強くてイカスが、ここはコウサイは自分もC級になってからが無難かァ? それまではオレの女、愛人ってところだなァ!) ……などと脳内で結論を出す。 「明けましておめでとう。こんなに沢山の……仲間が集うとは思ってもみなかった」 厳しくも優しさを含ませた目で、優子は皆を見回した。 「自分の根城で事件があってな。部隊を率いて乗り込まければならない関係で、しばらく顔を出せそうもない」 言って、優子は隣に立つ亜璃珠の肩に手を乗せた。 「彼女は私の相棒にしてブレーンだ。皆、彼女の命に従い、学生生活を謳歌するように!」 生徒会長の魅世瑠が近付いてグラスを持ち上げる。 「んじゃ、カンパーイ!」 「乾杯!」 次々に乾杯の声が響き、拍手、笑い声、口笛が飛んだ。 |
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