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リアクション
「僕も里親に立候補いたします。パートナーが反対する可能性もありますが、女の子なら僕達と一緒に、安心して生活が出来るのではないかと思います」
葉月は嫉妬して反対をするパートナーの姿を思い浮かべ、少し苦笑気味で立候補をする。
「ここで泥まみれになり、健康的な生活を過ごしているようには見えますが、今後のことを考えるとやはり子供達はしかるべき里親の下で育った方が良いかと思いますし、美羽さんが仰ったように、学園に通わせる必要もあるでしょう」
「葉月は蒼空学園生だが、白百合団に長く力を貸してくれている信頼できる人物だ」
優子がそう口添えすると、マリザとマリルが頷く。
「子供達と少し遊んであげてね」
「惹かれあう子がいましたら、どうぞよろしくお願いいたします」
「はい。では分校から戻ってきてから、しばらくこちらに滞在して子供達と共に過ごしてみたいと思います。……分校には連れていけませんよね、途中盗賊退治をするみたいですし」
葉月はそう言い優子を見ると、優子が軽く笑みを浮かべて頷いた。
「ボクも預かってもいいよ。……ううん、預かりたい」
カレンも意を決す。
カレンはその後の一連の運営が気掛かりで別荘で雑用の手伝いをしていた。
ミルミに関しては散々な印象があったけれど、ルリマーレン家の多大な妖精達への支援や、農家の人達への交渉を見ているうちに、ミルミもそんなに悪い子ではないのだと気づいていた。ただし、カリスマは皆無っぽいけど。
「マリザ、マリル達はもとより、ミルミも古王国の子孫として背負うものがあるはずだし、最近は結構頑張ってる……ようにも見えるし。ボク自身は自由に動ける身だし、イルミンスールの寮にある部屋は、妖精の子供達が遊ぶのにも不自由しない。最近はザンスカールに精霊の姿も増えたし、妖精だって全く違和感無いから、気兼ね無く外にも出られるよ」
「そうね。地球人が建てた6つの学校のことは簡単に聞いてはいるんだけど、やっぱり一番早く馴染めそうなのは、イルミンスールじゃないかなぁとは思う」
カレンにマリザがそう答える。
「私達もいつもここにいられるわけじゃないけど……。子供が寂しいって言ったら、ここに連れてきてくれますか?」
マリザがカレンに問いかけた。
「勿論。イルミンスールでできた友達も連れて、遊びに来るよ」
カレンがそう答えると、マリザとマリルは微笑んで「お願いします」とカレンに言ったのだった。
「環境も教育面でもイルミンスールが一番でしょうが、やはり人手と資金面はすぐにはどうにもならないでしょう。自分も1人でよろしければ、お預かりすることが可能であります。自分は教導団員であります。安全面は保証いたします」
真紀の言葉に、マリル、マリザは少し戸惑いの目を見せる。
「鏖殺寺院との戦いが激化する中で、里親に志願した自分が何らかの不慮の事故にあう可能性も考えられなくもありません。そういった際にも、すぐこちらと連絡がつくよう予めネットワークを設けておき、普段も出来る限り子供たちが不自由なく生活できるよう気を配ってあげたいと思っています」
真紀の言葉に、マリルが頷く。
「子供達の中には鏖殺寺院を憎んでいる子もいます。戦いに出ることがいいのかどうかはわかりませんが、教導団員として戦うことを望む子もいるでしょう」
「間違った方向に走らないよう、注意してあげてね」
マリルとマリザの言葉に、真紀は「了解であります!」と敬礼をする。
「すぐには無理だとは思いますが、人物的に問題がないようでしたら、あの者達も……」
優子が振り向いて、後ろを指した。
優子達が座るソファーの後、部屋の隅には妖精の子供達と、優子に付き添って訪れた分校所属希望者達が玩具で遊んでいた。
視線に気づいて、まず近付いてきたのはパラ実の鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)だ。子供を1人、抱きかかえている。
「何でこんなに孤児がいるんだ?」
分校で農業を学べると聞き優子についてきた洋兵だが、孤児だという妖精の子供達を放っておけなくなっていた。
彼の問いに、子供達がここにいるわけ、里親を探していることをマリル、マリザ、その場の皆で説明をしていく。
「……例え、義理の親でも『親の愛』っていうのは偉大だ」
洋兵も孤児だった。
「……子供ってやつは親がいなくても育つが……愛情を受けなかったら、どこか壊れちまう……おじさんみたいにな」
言って、子供を下ろして頭を撫でた。
不思議そうな目で、子供は洋兵を見上げている。
「ここがだめだとは言わないが……俺は1人でもいい。愛情をもって、力になってやりたいだ。おじさんみたい思いをする子は、1人でもいない方がいいだよ」
「ここから見てたけれど、良くしてくれていたわよね」
マリザがマリルを見る。
「ええ。すぐには決められませんけれど、一緒に過ごしてみて考えが変わらないようでしたら、そして子供達もそれを望むのでしたら、お願いしたいです」
マリルがそう答えると、洋兵は子供をひょいっと抱き上げる。
「きゃっ、きゃははっ」
子供は少し驚きながらも嬉しそうに笑い出した。
「よろしくな」
「うん、おじさん♪」
子供はぎゅっと洋兵に抱きついてきた。
「私も立候補してもよろしいですか?」
蒼空学園の浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が生徒手帳を手に近付く。
翡翠は分校への所属を希望しており、腕試しと見聞を広める為、優子達と共に盗賊退治に繰り出す予定だった。
その途中、たまたま訪れたこの別荘で、出会った妖精の子供達を翡翠も放っておけなくなっていた。
「私では里親としては幼すぎるかもしませんが……。やはり子が幸せになるには、傍で守ってくれる親は絶対必要ですから。それは、地上もパラミタも変わらないはずです」
翡翠は親に捨てられて、親の愛を知らずに育った。
冬だから、だけではなくて。
身寄りのない寂しさはとても寒いものだから。
翡翠自身には、拾ってくれた師がいた。
だけれど、ここにいる妖精達全てに、そういった人物が現れるかどうかは分らない。
「微力でも私はお手伝いしたいです」
話が苦手だから、上手く気持ちを説明できるかどうか不安だったが。
子供を見て、触れ合ってから意志は決っていた。
「私に1人、任せてはいただけないでしょうか?」
「ありがとう……あなたと同じくらいの子もいるから。友達としてでもいいかもしれないわね」
「蒼空学園生のようですし、小さな子でも、なつくようならお願いしたいわ」
マリザとマリルの言葉を受けて、翡翠は丁寧に頭を下げた。
「お2人の大切な子供を、ちゃんと守らせていただきます」
「あたしは薔薇の学舎だけどっ、1人くらいなら責任もって預かれると思う」
湯島 茜(ゆしま・あかね)もまた、マリザとマリルに生徒手帳を見せる。
茜も、孤児だった。
後に裕福な家に引き取られて、養子として厳しく育てられた茜も、身寄りのない妖精達の姿になんだかいたたまれない気持ちになっていた。
自分は今、裕福なわけではないけれど。通う学校も、住む場所もある。
1人だけなら、一緒に暮すことだって出来るだろうと思って、再び茜はこう言った。
「子供として、友達として、大切にする。一緒に成長していけたらと思う」
マリザが頷きながら微笑する。
「そうね。とりあえずしばらく一緒に過ごしてみてね。仲良くなれる子がいるようなら、頼みたいわ」
「それじゃ、話、してみるね。あ、お菓子少し貰ってもいい? 子供達と一緒に食べたいな」
「どうぞ」
菓子を持って、茜は子供達の方に向かっていった。
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