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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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 走り去った山葉だったが、そこを茅野 菫(ちの・すみれ)に捕まった。
「さ、デートデート」
 ずるずるっと菫は山葉を連れて行き、パビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)と共に美容室に向かった。
「このツンツン頭を活かしつつ、清潔感のある感じがいいわよね」
「清潔感?」
「そう。無理におしゃれを目指して、間違った方向にがんばっちゃうよりも、清潔である方が好感度が上がるってものよ」
 といっても、それ以上パビェーダも思いつかなかったので、後は美容師さんにお任せした。
 そして、菫のほうはポニーテールにまとめてもらう。
 花音の髪型がポニーテールだから、山葉がポニーテールが好きだろうと思って決めたのだが、山葉をプロデュースするのに比べ、菫のプロデュースには気合が入っていた。
「基本は清楚系だけど、小悪魔な印象を出すために、目力強くして、ちょっとここら辺に白系のラメを入れて……」
 菫の方がプロデュースするのが楽しいというのもあるのだろうけれど、大好きな菫が山葉の恋人役というのが納得できなかったらしい。
 パビェーダのプロデュースで、菫はバッチリ、山葉はそこそこに出来上がって、2人は次に服を見に行った。

 相馬 小次郎(そうま・こじろう)は商業組合のガイドブックと自分の情報網を利用し、ショッピングをプロデュースした。
 ギャルゲーのデートはショッピングが多い、というのを参考にしたのは秘密である。
 山葉にはスーツにシューズ。
 それに眼鏡をハンドメイドで、こだわりのあるデザインのイタリア伊達男風にして。
 菫のほうは昔の映画である『ティファニーで朝食を』のポスターのような黒いドレスを用意した。
 細身のノースリーブの黒ドレスに黒いロンググローブが流れるような菫の黒いポニーテールの髪に合って、美しい。
「さて……ふふふ」
 コーディネイトが終わると小次郎は脳内で妄想を開始し、二人を見送った。

 一方、美容室の予約を取り、この後、菫と山葉が行く映画館とレストランを予約しておいた志方 綾乃(しかた・あやの)は、2人の様子を見て、段々と不安になっていた。
「菫ちゃんには悪いけど、山葉さんは彼女いるのに他の人とデートとか、あまりにも軽率すぎると思います」
 綾乃は【銃型HC】で、デートの現場を動画方式で撮影した。
 そして、それを友達の輪を使い、花音に届けることにしたのだ。
 花音は早速駆けつけた。
「いったい何があったのですか?」
「ごめんなさい、花音さん……!」
 綾乃は事情を話し、一緒に映画館に向かった。

 しかし、綾乃たちが探しに行く前に、菫と山葉は映画も食事も終え、夜の公園にいた。
「映画は泣けたし、レストランは美味しかったね〜」
 菫は山葉のほうを向き、山葉にねだった。
「ね、かがんで……」
 その意味を分かった山葉が迷っていると、そこに綾乃たちが駆けつけた。
「菫ちゃんーー!!」
「え、どうして……」
「やっぱりこんなのダメだよ。だって……これじゃあ花音さんが、かわいそ過ぎるよ……」
 そう言いつつ、綾乃は頬を染めて、想いを告白した。
「それに……私も……菫ちゃんのことが大好きなの!」
 全員の動きが一瞬止まる。
 そして……。
「自分たちのラブラブに俺を使うなー!!」
 山葉はまたも叫んで走り去った。
「あ、おーい、チョコ忘れてるよー」
 菫が声をかけるが、傷心の山葉は振り向かなかった。