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【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】

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【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】
【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】 【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】 【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】

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 第3章 「お前は、こんなくだらねぇことに加担するような大人になっちゃ、だめだぞ」

■□■1■□■「自分勝手で、短気で、乱暴者で、語尾が変で、元じじいだけど、大切な仲間なのよ!」

 「ふふふふふ、やはり、ざんすかは地祇に相手にされないみたいだな」
 つぁんだが、小さな町や村の地祇を引き連れて、
 荒野の東側から現れたざんすか軍を見る。
 「やかましいざんす!
 ユーは昔から自分だけじゃ何もできない奴だったざんす!」
 ざんすかが、つぁんだに怒鳴り返す。
 大荒野でつぁんだ軍とざんすか軍のにらみ合いが続く中、
 メイド服に、頭に赤い大きなリボン姿の神代 明日香(かみしろ・あすか)が現れた。
 「禁忌の力を解放した私の魔法、喰らうがいいですぅ!」
 明日香は、禁忌の書を手にファイアストームを放った。
 「わー」
 「きゃー」
 「ぎゃあ」
 つぁんだ軍の地祇がぶっ飛ばされていく。
 「なんであんな強い魔法使いがざんすかの味方、ぎゃああああああ!?」
 つぁんだも一緒にぶっ飛ばされる。
 「えいっ」
 明日香は、軽いノリで、ざんすかにもファイアストームを放つ。
 「ぎゃああああ!?
  何しやがるざんす!?
  ユーは誰の味方ざんす!!」
 ざんすかの言葉に、明日香は、さも当然というように答える。
 「エリザベートちゃんの味方に決まってるじゃないですか〜♪」
 明日香はほがらかな笑顔で言う。
 「面白くないのでにらみ合いなんてしてないでファイトーですよ〜♪」
 禁忌の書を手に、「えいえいおー」のポーズを取る明日香を見て、
 復活したつぁんだが叫ぶ。
 「奴はメイドの格好してるが魔法使いだ!
  近接攻撃に持ち込んでしまえば楽勝だぞ!」
 「あいつ許さないざんす!
  ぶっ飛ばしてぶっ殺すざんす!!」
 ざんすかも、明日香に向かって突進する。
 「アスカ……あーあ、ですぅ」
 エリザベートが肩をすくめて首を振る。
 「え? え? きゅうううぅぅぅ」
 明日香は、つぁんだ軍とざんすか両方にぶっ飛ばされた。
 明日香のパートナー、ノルンこと、魔道書ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)が、
 地面に落ちた自分の本体である禁忌の書を拾い、埃を払って抱きかかえる。
 「最近わかりました。明日香さんはエリザベート様が絡むと暴走するみたいです」
 「しかたない子ですねぇ。
  王の指輪を6個装備して、禁忌の書レベル4を使ったファイアストームとか、やりすぎですぅ」
 ノルンの言葉にエリザベートが言うが、自分への好意にはまんざらでもないようであった。
 「私は明日香さんの回収に行ってきます。
  幸いにも、『お星様化』は免れたようですから」
 ノルンは、とてとて歩いて、ぶっ飛ばされた明日香のほうに向かうのであった。

 かくして、これをきっかけに、戦いが始まった。
 「くっ、わけわかんない奴のせいで、もうボロボロじゃないかっ!」
 つぁんだがあせる。
 明日香のファイアストームがど真ん中に直撃したせいで、
 つぁんだ軍は早くも壊滅的被害を受けていた。

 「そこまでよっ!」
 高いところから声がして、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)
 パートナーの樽型機晶姫樽原 明(たるはら・あきら)が現れた。
 「なんだ、君は!?」
 「そう、つぁんだ。貴方にはふたつの罪があります。
 ひとつにはかつて己の欲望で同族たるざんすかを貶め殺害せしめたこと、
 そして恐怖を煽り他者の威光を借りて同族を支配しようとしたこと。
 さらには今再びざんすかを亡き者にしようとしていることよ!」
 「……みっつじゃないのか? 罪じゃないけどさ!」
 つぁんだのツッコミは無視して、祥子は続ける。
 「魔法少女えむぴぃサッチー! あなたの悪事は全てお見通しです!
 千里眼の持ち主たる広目天に代わって、お仕置きよ!」
 祥子がポーズを決める。
 「おーーーーるはいる・いるみんすぅぅぅぅる!!
  我輩、全自動イルミンスール賛称機としてざんすかに味方せねばなるまゐ!
  そうでなくともつぁんだの言い分ややり方は断じて見逃せん!
  ざんすかはやらせはせんよ!!」
 明は、ワイヤーアームを掲げて、ざんすかの味方を宣言する。
 さらに、そこに爆炎が轟いた。
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が、反対側の崖から現れた。
 「熱い拳に想いを乗せて!
  殴るっ、燃やすっ、ぶっ壊すっ!!【烈火の拳姉】、ここにさんじょー☆」
 透乃がポーズを取ると、スカートの中の赤いものがチラッと見える。
 「美少女戦士部として、魔法少女には負けられないよ。
  爆発は美少女戦士っぽくないとか気にしちゃいけないよ!」
 「それは誰に対してのサービスだよっ!」
 つぁんだが、透乃のチラリズムにツッコミを入れていると、
 さらに、後から、透乃のパートナーの剣の花嫁緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が現れる。
 「強く慎ましく、皆の助けに……【静寂の癒姫】、いきます」
 (でも、こんなことを大衆の前で行うなんて……。
  ああっ、恥ずかしいけどなんだか……)
 恥らっている陽子であったが、別の感情も生まれつつあった。
 「ツァンダの地祇だけにあのクイーン・ヴァンガードと同じね、
  力づくで他者を、世界を思いのままにしようとする……そんなことさせるものですか!
  いくわよ、明!」
 「おーーーーるはいる・いるみんすぅぅぅぅる!!」
 祥子と明が飛び出す。
 「君ら、なんでそんなイデオロギーなんだ?
  僕がこないだ会ったクイーン・ヴァンガードは別に悪い奴じゃなかったぞ、
  っていうか、イルミンって、教導団所属なのでは……」
 つぁんだの言葉はかき消された。 
 「むむっ、ここで、大活躍して主役の座をゲットするのは私なんだから!
  いっけえええええええ!!」
 「……正面突破なんて、あまりに無謀だとは思いますが、
 私たちがそうすることで、他の人の策が生きる、そう信じています」
 透乃が崖から地面に着地すると、
 陽子がナックル型光条兵器「緋想」を装備して続く。
 祥子と透乃は、いずれも格闘技を繰り出して、つぁんだ軍の地祇を、
 ちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた。
 陽子も、「静寂」とか「癒姫」とかいう名前とは程遠い、熱い戦いを繰り広げる。
 「我輩が全自動イルミンスール賛称機、樽原明であーる!!」
 明は、アームでつぁんだ軍の地祇を捕まえると、敢えて相手を逆さまにし、蓋の部分で担ぐように落下した。
 「樽ドライバーッッッ!!!」
 「ぎゃあああああああああ!? おかしいだろ!?」
 つぁんだが、近くの地祇を押しのけて後退する。
 「正直、ざんすかとかどうでもよくて、
  ミルザムの威光と武力を傘にきて高圧的に暴力的に振る舞い、
  他者を思いのままにしようとするつぁんだが気に入らなかっただけなんだけど、
  魔法少女としては、美少女戦士にも負けられないわ!」
 「ライバルがいるのは、ヒロインの証だもんね!
  どっちがたくさん倒せるか勝負だよ!」
 祥子と透乃は、つぁんだ軍の地祇を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた。
 
 つぁんだ軍の地祇を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた。
 つぁんだ軍の地祇を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた。
 つぁんだ軍の地祇を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた。
 
 「えいっ」
 陽子も、ナックル型光条兵器「緋想」で、思いっきり攻撃する。
 まったく、静寂や癒しとは無縁であった。
 
 そこに、緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)と、
 パートナーの地祇紫桜 瑠璃(しざくら・るり)が現れた。
 「やっぱりつぁんだ様もご近所さんとしては争って欲しくないのー。
 兄様も「争うよりかは平和的に解決した方がいい」って言ってたの。
 ざんすかさんとも平和的に解決したほうがいいのー!」
 瑠璃は、ツァンダから少し離れた場所にある名も無き細流の地祇である。
 同じ地域の年長者の地祇として、つぁんだには「様づけ」で敬意を払っているのだった。
 「くっ、このままじゃ……奴は魔法少女なのに魔法使ってないし!」
 つぁんだは戦況の悪化に歯ぎしりしており、瑠璃の話はまったく聞いていない。
 ざんすか軍側も、戦闘に夢中で、仲裁の言葉は届いていないのであった。
 「むぅ〜……瑠璃の言うことも聞〜い〜て〜な〜の〜!」
 「ぎゃああああ、何するんだ、殺す気か!?」
 つぁんだとつぁんだ軍にスプレーショットを放つ瑠璃に、遙遠が慌てる。
 「って瑠璃! 
  攻撃を止めなさい!
  争ったら駄目って言う方がなんで手を出してるんですか!」
 「ほえ? 兄様、なぁに? これやりすぎなの?
  でも、瑠璃の話聞いてもらえなかったの〜」
 「とにかく謝りなさい……!
  いや、つぁんださん……こちらとしては別に争う気があったわけではないんですよ?
  いや……ほんと迷惑かけて申し訳ありません」
 遙遠はぺこぺこ謝りつつ、瑠璃の頭を無理に下げさせる。
 「むぅ〜……ごめんなさいなの……つぁんだ様もごめんなさいなの……」
 「ぜえぜえ、し、しかたないな。
  君たちが僕の味方をしてくれるなら許してあげなくもないよ。
  僕は寛大なんだ」
 つぁんだは、冷や汗をかきつつも、上から目線な発言をする。
 「はい、つぁんださんのためですから。
  ツァンダの町が栄えているのは、つぁんださんのおかげだと、常々思っているんですよ」
 「ははははは、わかっているじゃないか!」
 瑠璃が争いをやめさせるのを望んだのでついてきたものの、
 つぁんだとざんすかの争いには実はあまり興味のなかった遙遠であったが、
 迷惑をかけてしまったからと、協力を申し出たのであった。
 興味ないことを表に出さず、友好的な関係を築くため、おべっかを使ったところ、
 予想以上の効果があり、遙遠は、ちょっとどうしようかと思う。
 「つぁんだ様、うれしそうなの。
  兄様、どうしてなの?」
 「しー、瑠璃、大きい声でそういうこと言うんじゃありませんっ」

 「はわわ、つぁんださん。
  『悪のラリアットじじい』ざんすかさんなんてお爺さんはこっちにいないのです。
  ここにいるのは、悪がきたいしょーざんすかさんなのです。
  人違いなのですよー」
 自分の意思とは関係なく、
 なぜかざんすか陣営に巻き込まれてしまっていた土方 伊織(ひじかた・いおり)が、叫ぶ。
 伊織としては、「ざんすかがおじいさんではない」ことを、
 つぁんだに突っ込むつもりだっただけなのだが、ざんすかの逆鱗に触れてしまった。
 「誰が悪がきたいしょーざんす!
  ユーもぶっ飛ばすざんす!」
 「はわわ、ざんすかさんはやっぱり悪がきたいしょーなのですー!」
 伊織のパートナーの英霊サー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)は、
 伊織の勘違いを楽しんで放置していたのだが、
 ざんすかが迫ってくるので慌てる。
 「仲間割れを始めたな!
  いまのうちにやっつけてやるんだ!」
 つぁんだも、走ってくる。
 「こうなったら、しかたありません。
  この不肖ベディヴィエール。
  全力で、ざんすか様を盾に晒してでもお嬢様だけはお守りいたします。
  ざんすか様は耐久度高そうですので、騎士の盾っぽい感じで使わせていただきましょう」
 ベディヴィエールは、ざんすかを持ち上げると、つぁんだの攻撃の盾にした。
 「ぎゃああああ、何しやがるざんす!!」
 「ははははは、ざんすかを面白いように殴れるぞ!」
 「許さないざんす!!」
 遙遠と瑠璃が見守る中、つぁんだの攻撃がざんすかバリアーで防がれ、
 キレたざんすかは、ベディヴィエールをお星様にする。
 「きゃあああああ、お嬢様―?
  身代わりバリアーはお約束なのですよー!?」
 ベディヴィエールは「るる9号」となった。
 「はわわ、ベディさーん!?」
 あわてて追いかける伊織であった。

 「待ちなさいよ!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、大声を上げてつぁんだを制止する。
 「ざんすかは自分勝手で、短気で、乱暴者で、語尾が変で、元じじいだけど、
  それでも今まで一緒に過ごしてきた大切な仲間なのよ!
  いまさら蒼空学園の地元ツァンダに地祇が現れても、
  ざんすかが仲間だということは変わらないわ!!
  どんなにざんすかが凶暴でも、危険でも、
  過去にどんな悪事をやらかしていたって!
  大切な仲間であることは変わりないのよ!!」
 「美羽、何を言っているざんすか!?」
 「というわけで、ざんすか、一緒に戦いましょう!
  グレートマシンガンを倒した、『ダブルラリアット』を放つときよ!」
 「なんだか釈然としないけどやってやるざんす!」
 美羽は、大真面目にざんすかと協力し、
 バーストダッシュに盛夏の骨気を加えた強化版レッグラリアットを放つ。
 炎の闘気をまとった美羽の脚が、ざんすかのラリアットとともに、つぁんだ軍の地祇に放たれる。
 「ぶっ飛ばしてやるざんす!」
 「ファイヤー!!」
 ジャック・サンマーのように叫び、美羽は【音速の美脚】を放つのであった。
 「くっ、あんなにスカートが短いのに、なぜめくれないんだ?」
 つぁんだが逃げつつ叫ぶ。
 「これはすなわち……乙女の魔法よ!」
 「私のだって魔法なんだからね!」
 「魔法少女は私よ!」
 美羽の発言に、透乃と祥子が対抗する。

 つぁんだ軍大混乱の中、
 島村 幸(しまむら・さち)
 パートナーの英霊アスクレピオス・ケイロン(あすくれぴおす・けいろん)
 同じくパートナーの魔道書メタモーフィック・ウイルスデータ(めたもーふぃっく・ういるすでーた)が、
 全員ざんすかコスプレして現れた。
 「あはははははははははははは!!
  さあ、ざんすか101人ざんすー大作戦です!
  逃げるざんすですー逃げるざんすですー逃げるざんすですー!」
 小人の小鞄をふたつ開けて、
 緑の絵の具で色づけしたビニール小袋に穴を開けたざんすかコスプレ衣装の小人達を、
 幸が大荒野に放つ。
 「ミーは最強ざんすですー!!」
 光術の目くらまし攻撃で、幸がつぁんだ軍を翻弄する。
 (あー、まぁなんだ。無事でいろよ、つぁんだ)
 つぁんだに同情しつつも、アスクレピオスがヒロイックアサルトで強化した氷術により、
 つぁんだ軍を転倒させる。
 「この口調、馬鹿みたいだよな……あ、馬鹿みたいざんす」
 「ピオス先生、もっとなりきるざんすですー!
  事前に研究しておいたざんすかの口調を真似するざんすです!」
 「あーはいはい、わかったよざんす」
 「ユーたち、なんだかムカつくざんす!」
 幸とアスクレピオスの会話に、ざんすかが怒る。
 「うんと、装填完了ざんすだよー!!」
 禁じられた言葉で最大強化した雷術を、メタモーフィックが放つ。
 「000210050000884……オールグリーン、構成ゲノム完了、お空に飛んでけー!」
 つぁんだ軍の上空ぎりぎりに、電撃が舞う。
 「わー!?」
 「ぎゃー!?」
 「きゃー!?」
 つぁんだ軍を驚かせるという目的は完了した。
 しかし。
 「えへへ……っびりびり?
  ひくっぐすっ、
  やだやだー、ビリビリやだぁ」
 メタモーフィックは、自分が雷恐怖症であることを思い出して泣き始めた。
 結果、ざんすかのコスプレした青年がマジ泣きするという状況になってしまった。
 「よくもフィックを泣かせたざんすですー!
  ザンスカールの森やジャタの森は研究材料収集で
  いつもお世話になっているので感謝の気持ちがあるざんすです!
  けっして余裕そうなつぁんだ泣かせてみたいとか、
  某でこっぱち校長を思い出すとか思ってないざんすですけど、
  髪色といい、偉そうなとこといい、
  似てるからしょうがないと思うのでざんすです」
 「わー、何するんだ、やめろー!」
 つぁんだは、幸に羽交い絞めにされて、両方のほっぺたを引っ張られたり、
 おでこをぺちぺちされたりする。

 そこに、さらに、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)と、
 パートナーの機晶姫ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)がざんすか軍の味方として現れる。
 「いくらざんすかさんが乱暴なラリアットじじいだったからって、リンチってのはどうよ……?
  少なくとも、されてもしかたないってほど悪い感じはしないんだが。
  それにキマクとヒラニプラの地祇って……昔からヒャッハー叫んでたりドリル持ち出したりしてそうで、
  ざんすかさんよりよっぽど危険な感じがするのは気のせいか……?
  そりゃ肉体の方が消滅したくもなるわな。
  蒼学生としては、ツァンダの土地神様、もとい地祇が負けられても困るが……。
  とりあえず、色々な意味でかわいそうなざんすかさんに味方しとこう。
  どんな意味かは……ノーコメント、だ」
 「ま、キマクとヒラニプラの地祇がどんなのか、っていうのは想像が飛躍してると思うけど、
  リンチはちょっとね」
 ゴム弾で攻撃するエヴァルトに、ロートラウトも同意し、怪我しない程度につぁんだ軍を攻撃する。
 「ぎゃー、今、かわいそうなのは僕だろうがー!!」
 「ふふふふふ、魔改造してあげるざんすですー」
 幸に捕まったつぁんだが叫ぶ。

 そこへさらに、地響きを上げつつ、戦車型機晶姫のディオライオス・クレーター(でぃおらいおす・くれーたー)が走ってきた。
 パートナーの闇咲 阿童(やみさき・あどう)は、
 やる気がない性格なのであまり移動もしたくないからとディオライオスの上に乗っている。
 「正直誰を討つとかどうでもいいが、数少ない大暴れ出来る機会だしな。
  沢山暴れて楽しむかな……。
  何故ざんすか陣営に加担したかだと?
  そんなの決まってる。
  昔ざんすかはリンチされたそうじゃないか。
  俺はいじめってのが嫌いなんだ。
 【風紀指導委員】としてざんすかを護らせてもらう。
  やるならやるで正々堂々戦うべきだろ」
  阿童が、普段どおりの、普通にしていてもにらみつけるような目つきでつぁんだを見て言う。
 「いや、どっちかっていうと、今、いじめられてるのは僕……」
 「ざんすか、味方、スル。
  ワレ、主、従ウ。
  ワレ、主、邪魔スル、敵、許サナイ。
  ワレ、敵、障害、壊ス。
  ワレ、主、護ル」
 つぁんだの言葉は、ディオライオスにさえぎられる。
 「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
 「げっ、ディオの奴、また暴走しやがった……」
 ディオライオスがめちゃくちゃに走り回り、
 ざんすかコスプレの小人が逃げ惑う。
 「何やってるざんすガフッ!?」
 ディオライオスは思いっきりざんすかを轢いた。
 そこへ、3メートルの西洋鎧型の機晶姫ノートリアス ノウマン(のーとりあす・のうまん)に運ばれて、
 繭住 真由歌(まゆずみ・まゆか)がやってくる。
 「所詮はキミも時代に流されただけなんだよ。
  ロリキャラになれば人気が出ると思っているのなら大間違いだ。
  ボーイッシュで勝気なロリ娘?
  ははっ、没個性にも程があるよ。
  ねぇ、そうは思わないかい? つぁんだ君」
 「な、何を言っているんだ?」
 幸から逃れたつぁんだが、ぺちぺちされていたおでこを押さえつつ、
 真紅のゴシックドレスに、血のように赤い日傘の真由歌を見上げる。
 「素直に恥じ入って反省して墓穴掘ってその上で首を吊ったらどうなんだい?」
 真由歌は、ロリキャラとしてのキャラ被りが許せないため、
 ざんすかもつぁんだも気に食わなかったのだが、
 つぁんだの方が被っているので、しかたなく、ざんすかの味方をしているのであった。
 「全世界にロリキャラはボクだけでいいんだよ。
  蹴散らせ、ノウマン」
 「…………」
 巨大な甲冑のごとき機晶姫は、つぁんだを踏みつける。
 「ぎゃあああああああ!?」
 「むう、人型ロボットのような機晶姫に、
  戦車型機晶姫か……。
  興味深いな」
 ノウマンとディオライオスを見ているエヴァルトに、
 つぁんだが必死になって言う。
 「君はああいうのが興味あるのか?
  ああいうのがほしければ売ってやるぞ!」
 「なにっ!?」
 ロボ大好きなエヴァルトの態度が変わる。
 「僕は商人だからね。
  ロボだってなんだって用意してやるよ」
 大ピンチのつぁんだは、明らかにバレバレだが、ハッタリ発言をする。
 「よォし、商談成立だッ!」
 「つぁんだちゃん、ボク、合体パーツほしいな!」
 エヴァルトとロートラウトが、つぁんだに寝返る。
 「あ、ダメモトだったのに……。
  ははははは、いいぞ、奴らを倒すんだ!」
 エヴァルトとロートラウトの陰に隠れて、つぁんだがふんぞり返る。

 「つぁんださん、商人なんだよね!? 冒険屋の私も雇って!」
 琳 鳳明(りん・ほうめい)が、つぁんだの目の前にやってくる。
 「なんだ君は?
  ん、教導団の制服?」
 「え? なんで教導団の制服着てるのに冒険屋名乗るのかって、
  え〜と、教導団生徒としてより冒険屋の方がお給料としてお金もらえそうだしね?」
 「なんだか知らないけど、わけわからないこと言ってるざんす!」
 復活したざんすかが言う。
 「冒険屋は身分の区別なく、自分の信念に則ってお仕事を受けるんだよっ!
  一番高い金額を提示した人の味方になるよ!」
 「よーし、じゃあ、100億Gやる!」
 「ええっそんなに!?
  よーし、がんばっちゃうぞー!」
 鳳明は、つぁんだの適当な発言を本気で受け取り、全力で戦い始めた。
 支払い能力についてはまったく考慮していないのであった。
 「お仕事する私はいつでも全力で一生懸命だからねっ」
 真由歌を、エヴァルト、ロートラウト、鳳明が、思いっきり攻撃する。
 「た、助けて」
 ノウマンに命令するが、真由歌からどう助ければよいかの指示がないため、
 どうしてよいかわからず、ノウマンがおろおろするうちに、脚の関節を攻撃される。
 真由歌を載せたまま、ノウマンは盛大に転倒した。
 「きゃああああああ」
 真由歌はノウマンの下敷きになる。

 そこに、雪だるまの姿の魔道書童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)が、
 つぁんだを説得に来る。
 「以前のざんすか殿は既に罰を受けたのでござろう?
 ならば、まだ貴殿らに迷惑をかけていない今のざんすか殿を討伐しようとは、おかしな話でござる。
 拙者の目には、無用な争いを生むつぁんだ殿の方が悪に見えるでござるよ。
 このままでは地祇の力を知らしめるどころか、
 『地祇は乱暴者』としてイメージダウンするだけでござる!」
 「ざんすかは昔から何も変わってないんだよ!
  みんな見た目に惑わされてるだけなんだ!
  ざんすかと同じことを、ヒゲのじじいがやってるのを想像してみろよ!」
 「むう……」
 つぁんだは、当然、おとなしく応じることはない。
 (ふふふ、でも、話し合いで解決を試みたという事実は、
  雪だるまのイメージアップにつながるはずでござる!)
 そんな打算をスノーマンが考えていると、高笑いが響きわたった。
 スノーマンのパートナーの黒衣の仮面男、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)であった。
 「はーはっはっはっはっはっはっは!!
  ミルザムが女王候補になったから、つぁんだがシャンバラ6大都市の地祇の長?
  ふっ、片腹痛いですね!
  そーいう事は、せめてミルザムさんが女王になってからいうのですね!
  まだツァンダは候補を輩出しただけではないですか!?
  それに、いつまでもグダグダ内輪で揉めてるシャンバラ王国に如何程の価値があるのでしょう!?
  時代は、雪だるま王国にこそ味方しているのです。
  なればこそ、雪だるま王国の女王を有するザンスカールの地祇ざんすかこそ、
  シャンバラ6大都市の地祇の長に相応しいのです!
  イルミンスールのご当地ヒーローとして……
  そして雪だるま王国騎士団長としても、俺はざんすかを支持します!」
  クロセルは、駿馬でつぁんだ軍に突っ込み、つぁんだめがけて突進した。
 「わー」
 「ひえー」
 「背が低い地祇にとって、馬の突進力は脅威でしょう。
  ふははははっ、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うとよいのです!」
 クロセルが、完全に悪役にしか見えない笑い声をあげる。
 「ぎゃああああ、何をするんだあああああああ」
 「はーっはっはっはっはっはっはっ!
  つぁんださんの身柄は俺が預かりました!」
 「おお、クロセル殿、
  怪しい仮面姿もあいまって、
  完全に少女をさらうただの野盗にしか見えないでござる。
  その点、雪だるまの拙者は、
  言葉による解決をこころみたのでござる」
 スノーマンが言う。
 「勝者によってつむがれるのが歴史というものです!
  俺は、仮面の騎士として、
  悪のつぁんだを捕らえた英雄として、末永く語り継がれることでしょう!」
 「どこまでブラックなんだ、黒い、黒すぎるぞ、うわあああああああああ」
 クロセルは、つぁんだを拉致して走り去った。

 ニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)と、
 パートナーの守護天使ユーノ・アルクィン(ゆーの・あるくぃん)
 同じくパートナーの細身の黒猫のゆる族、ナイン・ブラック(ないん・ぶらっく)は、
 罠を仕掛けていた。
 「これで、戦争をやめさせることができればよいのですが」
  力仕事を担当していたユーノがつぶやく。
  罪のない人が傷つくのは耐えられないユーノは、自分をないがしろにしてでも、
  他者を助けたいと考える性格なのである。
 「バカじゃねぇのォ?
  これで、余計混乱をきわめちまえば面白いと思うぜェ。
  5000年前から続く地祇の争いかァ。
  あーあ、悲劇的なこったねェ」
  ナインは、へらへら笑いながら言う。
 「ナインさん、なんてこと言うんですか」
 「おお、やンのか、アアン!?」
  いつものように、ユーノとナインがケンカを始める。
 「二人ともムキになっちゃって大人げないよ。
  どっち選んでも文句言われちゃうんだし、もー両方やっちゃえばいいじゃん!
  そのために罠仕掛けるの提案したんだからさ。
  ……あーあ、面倒くさーい」
 善悪の判断がつかないニコは、戦争をやめさせたいユーノと、
 戦争に乗じて楽しみたいナインの両方のやりたいことをやれるよう、
 罠で地祇の捕獲を提案したのであった。
 「おい、待てよ、ディオ。
  ったく、走るのは面倒だな……」
 蹴りを入れて、戦車型機晶姫のディオライオスを止めようとする阿童であったが、
 次の瞬間、派手な音をたててディオライオスが地面に沈んだ。
 「ディオ!? ぎゃー!?」
 阿童も一緒に巻き込まれる。
 「うふふ、やったー。
  地祇たちを一網打尽にする落とし穴、
  関係ないのが落ちちゃったけど、すっごい大物だよ」
 中立の道化的立場を楽しむニコが言う。

 大騒ぎの中、目の前にチョコをぶら下げて、暴走するじゃたがやってきた。
 「じゃたじゃたじゃたじゃたじゃたーッ!!」
 「あれは、じゃたさん!?
  おそらく、チョコへの身を焼かれるような欲望が、
  言語機能の崩壊をまねいたざんすです!! って、うわああああああ!?」
 「あーっ、幸ー!?」
 「ママー!?」
 幸がじゃたにぶっ飛ばされ、アスクレピオスとメタモーフィックが叫ぶ。
 「がるるるるるじゃた」
 「雇い主のつぁんださんを助けに行かないとってうわああああああああ」
 鳳明が、じゃたにかぶりつかれて倒れる。
 「わ、私の、100億G……あはははは、こんなにいっぱーい」
 お札のお風呂に入る夢を見つつ、鳳明は気絶した。
 「待て、俺のロボはうわああああ」
 「ボクのパーツがきゃああああ」
 エヴァルトとロートラウトも、じゃたにぶっ飛ばされる。
 「あれー、なんだかわけわかんなくなってるなあ」
 「ニコさん、危険ですので、撤退しましょう」
 「ヒャー、面白ェなあ」
 ニコとユーノとナインは、こっそりその場を離れることにした。

 こうして、戦場は大混乱になるのであった。