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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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第3章 拠点の行く末

 キマクの外れにある神楽崎分校では、ささやかな壮行会が開かれていた。
 作戦……というほどのものはないし、立ててもあまり理解の出来ない連中だ。
 持ち寄った菓子を食べながら、簡単な意気込みの語り合いをして、分校長代理の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)の鼓舞と、生徒会長羽高 魅世瑠(はだか・みせる)からの激励の言葉。
 そして、別の戦地へ向った分校長崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)からの言葉を、アルダト・リリエンタール(あるだと・りりえんたーる)が読み上げる。
「今まで色々やりたくないこともやらせてきたけど、もうそういうのはこれっきり。
いままで色々とごめんなさい、
私から分校長らしいことなんて出来た覚えがないけど、これからはみんなの話を聞いて、皆で分校を作りましょう。
正月のお祝いの時みたいに、何も考えずにはしゃげるようにしましょう。
もうすぐ分校の総長も帰ってくるから、その時はいい土産話を持ってこれるように」
 その言葉に、土産話だけじゃなく、百合園生を土産に持ってこーいだの、焼肉が食いてぇだの、勝手な言葉と陽気な笑い声がとんだ。
「じつを言っちゃえば、亜璃珠もわりとなやんでたのよ。ぶんこーせーをこんなことにまきこんでばかりでいいのかって。めさきのもんだいにおわれてぜんぜんかまってやれなかったんだもん」
 連絡要員として訪れていた崩城 ちび亜璃珠(くずしろ・ちびありす)が分校生達にこっそり話していく。
「それにほらー、あいつツンデレだからさ。そういうのすなおに口に出せないのさ。竜司や魅世瑠、キャラ達にはデレデレだったのよ?」
「じゃ、土産に、デレも持ってこーい!」
「総長のデレも持ってこーい!」
「報酬は分校役員らに1日デレられ放題ってことで!」
 分校生達がぎゃはははと笑い声を上げる。
 そんな彼等の言葉に、一緒になって笑った後、魅世瑠は椅子の上に立って、分校生達に激を飛ばす。
「一人一人考えてるこたぁ違うかもしんねぇけど、とにかく当座はキメラをなんとかしなけりゃ落ち着いてメシも食えやしねぇ。だから改めて頼むが、出撃する奴もそうでない奴も、今だけは力を合わせて協力して欲しい」
 そして、分校生1人1人を見回して大きな声で激を飛ばす。
「それ以上細かいことは気にすんな! しっかり働いてこいよ!」
 魅世瑠の言葉に、分校生からおおーという威勢の良い声が上がっていく。
 思う存分暴れられるということと、ご褒美が待っていそうだということが、彼等を奮い立たせていた。
 ヴァイシャリー家という近づくことさえも出来ない由緒正しい家からの依頼であり、報酬も出るというこは彼等のような自由人達でも少しは誇りに思うようで、乗り気な者が多かった。
 それから、魅世瑠は分校である喫茶店に残って、竜司が率いる分校生達をパートナー達と見送ったのだった。
「……さてと」
 分校でやらなければならないことも沢山ある。
 農家の人々もおらず、喫茶店は閉店状態。分校生も殆ど出て行ってしまった分校は少し寂しくもあったが、こういった時こそ、他の分校の奴等や、農作物泥棒が現れるものだ。
「草取りいかねぇとな。広すぎてあたし達だけじゃどうにもなんねぇけど」
 魅世瑠が微笑みかけた先には、小さな女の子達の姿がある。
 分校で教師をしている高木 圭一(たかぎ・けいいち)のパートナーの竹芝 千佳(たけしば・ちか)と、白百合団員を率いる班長のヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)のパートナーサリス・ペラレア(さりす・ぺられあ)
 それから、白百合団団長の桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)のパートナーのライナ・クラッキル(らいな・くらっきる)も連絡係として分校に待機している。
「……早く、こんなこと終わればいいな」
 千佳は寂しげな顔でそう言った。
 圭一の姿は既にない。千佳は圭一から詳しい事情までは聞かされていなかった。
「あたしも、何かお手伝いするね」
「そうだな、じゃ喫茶店の周りの草むしり頼むな。ハーフフェアリーの2人は小さいしな。何かあった時は大声で叫んで知らせてくれよ?」
 魅世瑠の言葉に、千佳はこくりと頷いた。
「ライナちゃん、だいじょうぶだよ、みんながやっつけてくれるもん!」
 サリスは不安そうなライナを元気に励ましていた。
「はやくおとなになって、みんなのやくにたちたいなぁ……。私も、みんなといっしょがいいから」
「うん、たくさんお歌おぼえて、みんなに力をあげたり、おうえんして、けがをなおしてあげたりしようね」
「うん、みんないなくなっちゃったらやだもん」
 故郷を思い出し、少し涙ぐむライナの頭をサリスは手を伸ばして撫でてあげて「だいじょうぶだいじょうぶ」と言い、可愛らしい声で歌い始める。
 ライナも一緒に、小さな頃に故郷で歌っていた歌を歌いだす。
 そんな2人の姿に微笑んで、魅世瑠は千佳に喫茶店を任せると、田畑へと見回り、草むしりに出かけるのだった。

「お前等火の元には注意しろよ〜!」
 壮行会中も見回りを行っていたフローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)が、農家の家側で花火をしている分校生に声をかける。
「しかし遊んでる場合じゃねぇだろ?」
 呆れ顔で言うと、分校生達はへらへらと笑みを見せる。
「ちゃんと見張りしてるって。さっきも泥棒追い払ったところ」
「祝賀会用の花火の練習してんだよ。すげぇの用意して皆を驚かせようと思ってな」
「キャーなんて言って百合園生抱きついてこねぇかな」
「鼠花火ってヤツがよさそうだよな」
「危ないお嬢様! って、お姫様抱っこするんだ」
「腕鍛えておかねぇとな!」
 フローレンスはため息をつきながらも、彼等がここにいることで家や周辺が守られていることは確かなので、良しとする。
「見張り忘れんなよ。花火も楽しみにしてるぜ」
 そう言葉を残すと他の田畑の見回りに移る。

「飾りつけはじゅんびだけにしておいて、かんたんにかざれるようにすればいいかな?」
 ラズ・ヴィシャ(らず・う゛ぃしゃ)は見回りの合間に、ホールに寄って片付けと救護場所の用意、その後に行えたらと思っているパーティの準備を進めていた。
「疲れたりケガしたひとは寝たいよね。このあたりがお休みのばしょ。こっちにはテーブル入れておいて、たべたりのんだりできるんだよー」
「万が一の時には反撃拠点に転用することになりますけれどね」
 アルダトもラズと一緒に、ホールの準備を進めていた。
 分校生達に自由にさせると、ゴミ捨て場から持ってきた変な家具やゲームが散乱し放題となり、直ぐに足の踏み場もない状態になってしまうのだ。
「でも、ダーツ等は残しておいた方が楽しめそうですわね」
 残す物、仕舞う物を分けて、部屋を片付け、飾りをつけていく。
 人手もなく、バレンタインパーティの時よりシンプルだけれど……きっと喜んでくれるだろう。