校長室
嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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倉庫に避難した攻略隊のメンバーは、ジュリオと自分達の治療をしながら仲間を待っていた。 彼をおいて突破を図れば、自分達だけは帰還できるだろうが見捨てることは出来なかった。家族と別れ、長きに渡り、ヴァイシャリーを護ってきた彼は助けられるべき人でもあるから。 治療といっても、ジュリオを魔法で回復させることは出来なかった。怪我が癒えればまた襲い掛かってくるだろうから。このまま意識を奪っておかねばならない。 「到着にゃう」 可愛らしいだけれど、緊迫した声が響いた。 次の瞬間の陽太により、扉が開かれる。 「ロープ持ってきたにゃう」 ヨヤ達と共に到着したアレクスがロープをエメに投げた。 「ありがとうございます。……すみませんが、縛らせていただきます」 エメはロープできつくジュリオの手足を縛り上げ、更に体にぐるぐるロープを巻きつけて身動きできないように縛る。 「手伝います」 真紀は服を裂いて、ジュリオの口と目に布を巻きつけて、目と口を塞ぐ。 「体力が持たなそうです。回復させてもいいでしょうか?」 蒼が蒼白なジュリオの顔を見て、そう尋ねる。 「では1度だけお願いします。暴れるようでしたら、どなたか、意識を奪う魔法をお願いします」 エメはそう言い、ジュリオを担ぎ上げる。 アレクスが下から支え、蒼がヒールを終えた後、一行は用具小屋から飛び出した。 イルマとヨヤが迫る光条兵器使いに飛びかかり、倒していき、傷だらけのクリストファー、クリスティーが盾となりエメの前を走り、上の階を目指す。 「外までの道は確保してあります。さあ、早く!」 階段の上から、ステラの声が響く。 真紀も手を貸し、ジュリオの体を持ち上げながら、階段を駆け上がり1階のエントランスへと走り込む。 「無事でなにより、一気に駆け抜けよう」 陳到が1階で皆を迎え、ガードラインで護りながら宮殿の外へと導く。 「まだ戦えるヤツは残ってくれよ。宮殿内の掃除が残ってるぜ」 ウィルネストはそう言い、現れた光条兵器使いに魔法を放つ。 エメ、蒼、アレクス、真紀、サイモンの5人はジュリオを護りつつ、別邸を目指し、残りのメンバーは宮殿内の鎮圧の為に残ることになった。 「コンピューターの中に重要なデータが入っていそうですけれど、流石にわかりませんしね」 機器類のボタンには触れずにおいた。 アリアが確保したのは、机の引き出しに入っていたマニュアルと思われる書物だ。 「読めないじゃん……」 色々探してみるが、読める書物はなくイーディはがっかりしながらも、写真にとったり、重要そうな書類やキーなどを集めたりしておく。 「古代文字なだけでなく、専門用語だからね。パラミタ人でも読めるようなものじゃないよ」 グレイスもファイルをいくつか選んで、抱え持った。 「では、そろそろ出ましょう。分かったことは少ないですが……。持ち帰ったもので何かが分かると信じて」 フィルがそう言い、それぞれ片手で持てる分くらいの書物を持って撤収することにした。 「カレンさんも早く」 一人、真剣な表情で調べているカレンに近づいて、フィルは彼女の腕を取り、魔法陣の場所へ歩く。 「状況が分かりませんから、宝物庫の方には戻らず、ウィルネストさん達の後を追い、宮殿へ出て別邸を目指します」 フィルがそう言い、皆が頷く。 「それじゃ、出よう」 グレイスが魔法陣を開き、皆で地下道へ、そして宮殿の中へと向う。 宮殿へと出て、光条兵器使いの姿が見えた途端。 「……っ、兵器、魔道生物、全て壊すべきだ……!」 真剣でありながらも、半ば放心状態だったカレンが突如大声を上げたのだった。 カレンは怒りに打ち震えていた。 地下の施設が、キメラを作り出す以上に……邪悪でおぞましい目的に使えるのではないかと気付いてしまったから。 彼女は禁じられた言葉で魔力を上げると、ブリザードを放った。続いて、凍てつく炎を。更に魔法を連続で光条兵器使いに発動していく。 「カレンさん……!?」 フィルは驚いて、後ろからカレンを押さえつける。 「全部破壊するつもりなら、精神力を温存しなければなりません。落ち着いてください」 アリアは冷静にカレンに声をかける。 「でも、前の敵がいなくなったじゃん。急いで駆け抜けるじゃん!」 イーディはグレイスを気遣いつつ、先行してエントランスへと走る。 「ごめ……ん。でも、なんか、この光条兵器を使う敵さえも、何かと掛け合わせること、とか……何か凄い力を持ったアイテムに意思をつけてしまうこととか、人工的に女王の血を持つ存在を作ってしまうこととか……そんな、ことも……出来てしまうような……」 「そうだね。悪用されないようにしないとね」 カレンの言葉に、グレイスはそう答えてカレンの腕を引いて、一緒に走る。 装置を破壊してくるべきだったかもしれないと少し思いながら、5人は別邸に向って全力で駆けるのだった。