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【ろくりんピック】欲望と陰謀の聖火リレー?!

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【ろくりんピック】欲望と陰謀の聖火リレー?!

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聖火リレー 葦原島

 葦原明倫館のエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が聖火のトーチを掲げ持って走る。
(唯斗の奴、いつの間にわらわ達まで走者として登録したのやら)
 しかし嫌ではない。
 沿道の観衆が彼女に声援を送り、どこからか応援の祭囃子や太鼓の音が聞こえてくる。
 露店も立ち並び、児玉 結などもクレープ代わりに手巻き寿司を手に観戦している。
 こうした祭りの雰囲気は嫌いではない。
 エクスは気合を込めて走っていく。

 葦原島。怪人プロメテウスが捕まった事で、聖火リレーは妨害の危険が減ったはずだった。
 コースやランナーを警備するスタッフも、リラックスした様子が見える。
 エクスから聖火を受け渡された紫月 唯斗(しづき・ゆいと)も、余裕で沿道に手を振りながら走り始めた。
 そこに水が一条、飛んだ。
「?!」
 唯斗はひらりと身をかわし、かけられた水流をかわした。軽身功と殺気看破で造作のない事だ。
「男に水を掛ける奴がいるとは……」
「ああっ、兄さん〜」
 沿道から声援を送っていた紫月 睡蓮(しづき・すいれん)が心配そうな声をあげる。
 突然、リレーコースにお面をかぶった人物が現れ、水鉄砲を唯斗に発射する。
 唯斗は水をかわすと手刀で水鉄砲を払った。さらに流れるような動きで、足払いを食らわせる。
 襲撃者は見事に、すっころんだ。
「いった〜い! ここまでする?」
 コケた衝撃でお面が外れた。
 唯斗に水をかけてきたのは、聖火リレーを取材する秋野 向日葵(あきの・ひまわり)だった。よく見れば腕には「報道」の腕章がついたまま。そのせいで警備スタッフも、彼女を止めてよいのか戸惑ったのだ。
「なんで向日葵が聖火を消そうとする?!」
「消そうとしてないわよ。ちょっと盛り上げようと思っただけだもん」
「盛り上げる?」
 ポカンとしてオウム返しした唯斗に、向日葵はまくしたてる。
「だって……怪人プロメテウスは捕まっちゃったし、ろくりんピックの他の競技も盛り上がってるし……今、視聴率を稼ぐなら戦国モノにイケメンの取り合わせだと思ったんだもん!」
 いなおった向日葵の言葉に、唯斗は呆れる。
「別にイケメンじゃないけどな。『眠いの?』とは時々、聞かれるけど」
 睡蓮が「唯斗兄さんは、とても格好いいですよ」と言う。
 しかし向日葵は唯斗のつけた覆面を指した。
「そこは覆面効果で、なんとかなるわ!」
「…………」
 向日葵は彼を急かすように、背中を押す。
「ほらっ、次のランナーも待ってるだろうし、先に進もうよ。お詫びに後でインタビューしてあげるから」
「なんだかなぁ。まあ、女の子のインタビューなら、何でも答えちゃうよ」
 唯斗は納得いかないながらも、ふたたび走り始めた。


 水を飲みに行っていたエクスが、戻ってくる。
 エクスや唯斗の応援をしていた睡蓮が、彼女に気付いて手を振る。
「ここにおったか。……? 唯斗はどこかな?」
「インタビュー受けてます」
「ほう、祭りの盛り上げをしておるのかな?」
 エクスは何気ない調子で、インタビューの場に近づいた。

 カメラの前。唯斗は向日葵の向けるマイクに、笑顔で答えていた。
「学校の名誉と、全世界の人々の心をつなぐ為に頑張ってます!
 コレを見てる人も見てない人も、楽しんでくれ! こんなでっかい祭、楽しまなきゃ勿体無い!
 祭を邪魔しようとしてる奴等も文句があるならお前等も参加してみろ。面白いぜ?」
「なるほどー。……え?」
 唯斗は向日葵からマイクを奪うと、カメラに向き直る。
「最後に……世界の権力者とか偉い奴等に言うぜ。これ以上女を泣かせる様な事すんなよ? シャンバラ建国の一件でもたくさん悲しんだ奴がいる。頼むからさ、泣かせないでくれよ。それでもやるなら……潰すよ」
 不敵に笑って言い放った。満足の表情で、向日葵がマイクを奪い返すのに任せる。
 唯斗の言葉に、エクスが唖然としていた。
「あの馬鹿!? 世界に喧嘩を売る気か!
 ……何やっとるか、この大馬鹿が!」
 エクスに耳を引っ張られ、唯斗は「イテテテテ」と画面から退場する。


 今も昔も、人々の興味を強く惹きつけるのは、食だ。
 草刈 子幸(くさかり・さねたか)は握り飯を手に、向日葵のインタビューに断言した。
「自分は! 草刈 子幸と申します! 何卒宜しくであります!
 聖火をおかずに、力の限り食べるであります!!」
 草薙 莫邪(くさなぎ・ばくや)がパートナーの言葉にダメ出しする。
「オイ、台詞が違えぞ!『聖火を掲げて、力の限り走るであります!』だろうが!!」
 しかし彼が背負った器には、大量のおにぎりが入っている。具は梅干だ。
「俺は歩くおひつじゃないっての」
 莫邪はぶつぶつ言うが、子幸は走りながら食べる事に挑戦(?)するのだ。
 ただもう一人、一緒に伴走する鉄草 朱曉(くろくさ・あかつき)は、クーラーボックスの中に、熱中症対策の霧吹きスプレーや冷たいタオルを入れている。
「わっはっは、天下の聖火も、さっちゃんにかかりゃあ一品のおかずじゃのぉ」
 朱曉は鷹揚に笑って、大汗をかきながら飯をかきこんでいる子幸を扇で扇いでやっている。
 莫邪は頭を抱えた。
「なんでバカツキが冷たいタオルで、俺が山のようなおにぎりで……って、子幸! もう前のランナーが来てんぞ!」
 莫邪は、大会側が用意した弁当を食べている子幸を、リレーのコースに押し出した。
「おおお! では、いただきますであります!」
 子幸はそんな台詞で聖火のトーチを受け取ると、食べ物を抱えたままバタバタと走り出す。
 おにぎりを背負った莫邪と、熱中症対策の品をクーラーボックスに入れた朱曉も後に続く。

 約三分後。
「うぐぐ……腹が減っては戦はできんであります……!」
「また腹減ってんのかよ、出る時も食ってきたじゃねえか。ほら、おにぎり……が、ねええええ!」
 ぷしゅ〜と力が抜けている子幸に、莫邪はカラになった器を投げつける。
「もう全部、食ったのかよ! ペース配分考えろ!」
「この猛暑で走るには、ちょっと糧食が少なかったかのぉ〜」
 朱曉は冷たいお茶を、なぜか自分でごきゅごきゅと飲んでいる。
「こらバカツキィッ! お前、ちったあ役に立てよ!!
 ……ッたく。おら、御免よ!」
 莫邪は沿道に飛び込み、人垣をかきわけて、露店へと走る。
 そうして買い込んだ大量の食物を、のろのろと歩いている子幸に「ほらっ」と差し出す。
 子幸はもりもりと食べ始め、
「この熱く燃える炎! 心もカロリーも燃えるであります! 燃え盛るであります! うああああああ!!」
 猛スピードで走り出した。
「ちょ……待て、こら! 沿道に手ぇ振るとかしねえのかよ!」
 莫邪と朱曉が、子幸を追いかける。
「こうして汗をかくんも、たまにゃあええのぉ」
 朱曉はからからと笑うが、莫邪はそれどころではない。


「あー、グルメものにすれば視聴率が取れるかなぁ」
 中継車では、向日葵がボヤきながらお茶に手を伸ばす。
「うぷっ」
 向日葵は口に含んだ茶を噴き出しそうになり、あわてて飲みこんだ。
「えぅ……どうして、こんな濃くて苦いのよう……おしおきよ」
 茶を淹れたADを恨みがましい目で見る向日葵。
「ハッ……さてはダークサイズの仕業?!」
 そして向日葵はふと気付く。
「そうだ。女の子に水をぶっかけるなんて事件、ダークサイズのせいだって事にしておけば、あいつらを退治するいい口実に……」
 ブツブツつぶやく向日葵をセイカ先生がたしなめる。
「マスコミが偽情報を流してはいけませんよ。
 第一、教導団が許しません」


 聖火リレーも、後は空京に帰るのみだ。
「うわあー、夏休みがもう終わっちまう〜」
 イルミンスール魔法学校の学生寮では、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)がうめいている。
 ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が彼に聞く。
「アキラ、夏休みの宿題は進んでおるのか?」
「げふっ!」
 アキラは死んだフリをする。
 この夏はろくりんピックのテレビ中継ばかり見ていた為に、夏休みの宿題はまったく進んでいなかった。
 ルシェイメアは愕然とする。
「なにぃ?! こんなに残っておるのか? きりきり頑張って仕上げるのじゃ」
「もう今からじゃ遅いぜ、ははは……」
 あきらめようとするアキラに、ルシェイメアはドリルを突きつける。
「これから31日まで徹夜で宿題じゃ!」
「んな無茶なああぁー」
 学生寮にアキラの悲鳴がこだました。

 ろくりんピックも佳境を向かえ、最終決戦へとなだれ込みつつあった。


担当マスターより

▼担当マスター

砂原かける

▼マスターコメント

 まず最初に、リアクションをお待たせしてしまい、大変申し訳ございませんでした。

 聖火は消されることなく、無事にシャンバラを一周する事ができました。
 また怪人プロメテウスは捕獲され、教導団の獄中で取り調べ中です。

 なお、聖火リレーのサルヴィン川渡りにNPCの山葉涼司が登場していますが、これはサプライズであり、応援ポイントの消費によるものではありません。

 また当シナリオの聖火リレー関連はドタバタコメディ調という事で、シリアスアクションをかけられてきた方でも、マスタリングにて若干ドタバタ風味やお笑い風味が盛られている場合がございます。
 同様の理由から、平素よりもメタ発言よりの描写になっている部分もございます。
 どうぞご了承ください。

 なお『【ろくりんピック】最終競技!』のシナリオでは、聖火リレーの最後の走者も募集しております。