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精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~

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精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~
精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~ 精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~

リアクション

 
「さ、再びここへやってきたわけだけど……やっぱり鳥はいないわね。
 参ったわ、焼き鳥食べたいのに」
「あ、焼き鳥食べたかったんだー。でもうな重美味しいよー(もぐもぐ」
「あんたまだ鳥探してたのか! そっちもこんな寒いところでなに一人ほかほかのうな重食べてるのっつーか頭に乗せるな! 米かあんたは!」
「そうよ、そうでなければこんなところに用なんてないわ、寒いもの。
 ……本当はあるんだけどね。ほらこれ、何か分かる? 宝箱よ、宝箱。
 ここってせっかくのダンジョンじゃない? きっと遠い未来にまた誰かが探索すると思うのよ。
 だったら、最深部にお宝を残そうと思って。
 ふふふ、我ながらなんてステキな案かしら」
「あぁ、それで月実はそんなでっかい箱を持ってたわけね……ってそっちの精霊はまだ食べてるの!? ところ構わずに食べるの止めてよ、さっきも凄い犬が集まってきてたじゃん! ……って、連れてくるな!」
「もぐもぐ、もぐもぐ……なにリズ、どーしたの? わんわん? いっぱいいるねー」
「ふぅ、重いわ、宝箱。
 しかし寒いわよねここ。避暑地には最適ね。
 まだ何かいたりしないかしら。……そう、例えば鳥とか。
 ねぇ、あなたたちは焼き鳥ならなに食べたい?」
「え、焼き鳥? えっとねぎまとか――」
「焼き鳥? あたしうなじゅー!」
「うなぎは鳥じゃない!」
「私はそう……ドードー鳥やダチョウが食べたいわ」
「ダチョウはこんな寒いところにはいない! 前に来たから分かるでしょ!」
「……そうね。少し前にここで私たち、戦ったのよね。
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 「月実、たすけてー!」
 「危ない、リズ!」
 「きゃぁっ、あ、ありがとう月実」
 「全く、下がっていなさい。あんな氷龍、私ひとりで十分よ」
 「う、うんわかった」
 「行くわよ、はああああ!」
 「クククオロカナニンゲンメ、コノワタシニカテルトデモ」
 「ご生憎様ね。すでにあなたの攻撃はすべて見切っているのよ」
 「ナンダト!?」
 「ふ、図体の割に大したことないわね(がしゃーん」
 「バ、バカナコノワタシガイチゲキデ……ガアアアアァッ!」
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 ……今思い出しても、手に汗握る熾烈な戦いだったわ」
「ほへー、月実ってばすごい戦いをやってたんだねー。
 やっぱり人間ってすごいんだ、氷龍を一撃で倒しちゃうなんて(もぐもぐ」
「月実あんた戦闘でなにもしてなかったでしょ! そっちのうな重もその場にいたでしょ、忘れてんの!?」
「うんうん、リズも大変だったねー。
 あたしはうな重食べるのに忙しいよー(もぐもぐ」
「あの激しい戦いを忘れないため、私たちは最深部に宝箱を置きに来たのよ。
 次にこれを開けた人が、ここで起きたことを語り継いでくれることを願って、私たちは宝箱に想いを込めるの。
 だからこんなに重いのね、宝箱。……先に言っておくけど、ギャグじゃないわよ? ギャグは私の担当じゃないの。
 ……というわけで最深部に到着よ。何事も事件がないのがステキで仕方ないわ……どうしたのリズ、頭痛いの?」
「……いや、今回は私も会話の合間合間に参加してたからいいけどさ……よくやるなぁって……」
 一ノ瀬 月実(いちのせ・つぐみ)の言葉に、リズリット・モルゲンシュタイン(りずりっと・もるげんしゅたいん)がもはや呆れを通り越した感情で呟く。ちなみに、「〜頭痛いの?」まで、月実とキリエのパートのみで2000バイトである。
「……あら、開かないわね。まぁいいわ、それじゃここに置いていきましょう。考えたら、最深部に入るのにはそれなりの準備がいるわよね。これは準備を整えるためとして利用してもらいましょう」
「……で、中身はなんなの? まさか空ってわけじゃないでしょ?」
 リズリットが尋ねると、宝箱を地面に置いた月実が胸を張って答える。
「ふふふ、見て驚きなさい。このために作ったステキなものよ」
 やけに自信たっぷりな月実に不安を抱きながら、リズリットが開け放たれた宝箱の中身に目をやる――。

 『カロメちゃん・氷龍味』

「想像ついてたけどやっぱこれかよ!!」
 激昂したリズリットが振るった拳は、月実が宝箱を滑らせたことで直下の氷を砕く。
「確かに見た目は、でっかい箱の中にちょこんと入ってるだけだから淋しいかもしれないけど、それに見合った価値はあるはずよ。
 ……カロリー的な意味で」
「つうか、入れといたら腐っちゃうじゃんか!」
 リズリットのその言葉に、月実は真剣な表情を作って、そして答える。
「……じゃあ、氷漬けにしておけばいいわね? 氷龍だし。
 キリエ、キリエ? あらどこに行ったのかしら」
「もう疲れたよ……ツッコミってこんなに体力使うんだね……」
 キリエ・クリスタリア(きりえ・くりすたりあ)を探す月実に引き摺られるようにしながら、リズリットが嘆きの声をあげる――。

「あれー、月実がなんか箱置いてった。話聞いてなかったけどなんだろう、何が入ってるのかな」
 その直後、ふらりとやって来たキリエが、月実の置いた宝箱を開け、中のカロメちゃんを見つける。
「あ、カロメちゃんだ! いただきまーす(もぐもぐ」
 あっという間にカロメちゃんがキリエのカロリーと化していく。
「っと、開けっ放しはよくないってリズにいつも怒られてたっけ。ゴミは箱に戻して蓋をして……うん、よし」
「キリエ、そこにいたの。帰るわよ」
 ちょうどそこへ、キリエを探していた月実と、ツッコミ疲れですっかり眠ってしまったリズリットがやって来る。
「あ、月実。今行くよー(もぐもぐ」
「あらキリエ、何食べてるの?」
「うん、カロメちゃん! さっきそこで見つけたんだー」
「そう、よかったわね。……そうよ、結局焼き鳥食べ損ねたわ」
「あははー、イナテミスに行けばあるんじゃないかなー」
 そんなことを話しながら、一行は洞穴を後にする。

「あ……ありのままあの時起こった事を話すぜ!
 『俺は奴のアイシクルブレスで氷像になったと思ったら、いつの間にか溶けていた』。
 な……何を言っているのかわからねーと思うが、
 俺も何をされたのかわからなかった……
 頭がどうにかなりそうだった……瞬間冷凍だとか瞬間解凍だとか、
 そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
 というわけでカヤノどういう事なの?」
「あ……ありのままあの時起こった事を話すぜ!
 『僕も奴のアイシクルブレスで氷像になる思ったら、凍り付いたはずの玲奈に助けられていた』。
 な……何を言っているのかわからねーと思うが、
 俺も何をされたのかわからなかった……
 頭がどうにかなりそうだった……ミラージュだとかその身を蝕む妄執だとか、
 そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
 ……これでいいか玲奈。何で僕がこんな事を言わなければ……」
 
 如月 玲奈(きさらぎ・れいな)ブレイク・クォーツ(ぶれいく・くぉーつ)に問い詰められて、カヤノがあからさまに狼狽える。
(な、なんなのよこいつら、こういう問い詰めが流行ってんの?
 ……つーかあれ、あたいもメイルーンも悪くないし!
 『ギャグで書いてきたと思ってギャグで処理したら、今回のアクションでマジレスが返ってきた』って頭抱えてるどっかのバカがいけないのよ!
 あたいみたいにもっと心読めるようになりなさいよね!)
 どう答えようか窮しているカヤノの答えを待つ二人にため息をついて、レーヴェ・アストレイ(れーう゛ぇ・あすとれい)が洞穴の内部状況の調査に取り掛かる。
(あの二人はスルーしましょう。氷像になったはずのレナが直後に動ける状態だった理由、カヤノさんなら分かると思い聞きにきたのですが)

 その後、延々悩んだ挙句「メイルーンもさんざん攻撃されて、疲れてたんじゃない?」と口にしたカヤノに、「「んなわけあるかー!」」と玲奈とブレイクがツッコミを入れようとしたが、カヤノは氷の壁を張って離脱を図ったのであった。

 離脱を果たしたカヤノが、洞穴の入り口付近までやって来ると、そこにちょうど赤羽 美央(あかばね・みお)と出くわす。
「あっ、ミオ見つけた! あんたこの辺に雪だるま王国作る気ない?」
「……は?」
 流石に、突然そんなことを言われては面食らう美央であった。

「……そうですか、朔さんがそのようなことを……」
 洞穴の周囲、時折降ってくる雪が雪面を新たに彩る中、カヤノから朔のことを聞いた美央が納得したように呟く。
「あたいたちもさ、あんたたち利用しちゃってるわけ。ミオにはまだ言ってなかったっけ、エリュシオンの精霊のこと」
 言ってカヤノが、精霊はパラミタ全土に分布していて、シャンバラとエリュシオンとでは用いている技術も共有している知識も異なること、そして、もしエリュシオンの精霊と争うことになった場合、シャンバラの精霊だけでは自らの生活を守れないと判断した彼らが目をつけたのが、イナテミスとその背後にあるイルミンスールだったこと……を説明していく。
「……あたいが話せることは、これで全部話したつもり。ま、黙ってるのも嫌だしね。……それで、どうする? あんたが雪だるま王国作る気あるって言うなら、必要なこととか話すけど」
 頷く美央に、カヤノが応えるように口を開く。
「洞穴の周囲は、だいたい円状に雪が積もってる部分が広がってるわ。理由は……今ならメイルーンがいるからって言えるし、ちょっと前ならこのリングがあったから、って言えるけど、それ以前のことは分からないわね。どっちも精霊に関係してるから、精霊の加護でもあると思っとけばいいんじゃない?
 洞穴を中心に円状の部分はずっと雪原で、それを超えて南に森があって、そこを抜けるとイナテミスな感じね。洞穴の東は海岸線近くまでずっと雪原。他も大体それくらい。雪原の部分ならどこでも使っていいけど、洞穴の北に置くのはあたいは勧めない。だって、もしエリュシオンの精霊が攻めてきた時、真っ先に狙われるじゃない。それは考えておいてね」
 洞穴の中はね……まだ人間が住めるように作ってないし、あたいはよくても他の精霊がどう思うか分かんないしね。あんたたちが仲良くしてくれるなら、その内中に移転すればいいんじゃない?
 うーんと……他にある? ま、必要なものとかあったら言って。用意できるものなら用意してあげるわ。……ミオ、最後に言っておくわ。ここに雪だるま王国を置くということは、あんたたちはこの洞穴を、イナテミスを、そしてイルミンスールを守るための『盾』になるってことを意味する。もちろんあたいも、イナテミスも、イルミンスールもあんたたちを守ろうとする。だけど、どんなことに巻き込まれるかは誰にも分かんない。それでもミオ、あんたが納得して雪だるま王国を作るって言うなら、計画をまとめてあたいに頂戴。責任者はあたいだし、一応目通さないとね。……ま、責任者なんだから、『ここに作りなさいよ』って言えるんだろうけど、そういうの嫌いなの。お互い納得して作りたいじゃない?」
 言うだけ言って選択を迫るカヤノに、美央は――。