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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ!
地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

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 『ファミリー』パーティ 
 
 
 麗しの蒼い海、美しい青空。
 血のように赤いトマトが山と積まれ、カフェからは芳しい香りが漂う。
 目にも楽しい店が並ぶ道を歩いて行くと見えてくる、一際大きな家。
 それが雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)の家だった。
「ただいまー」
 百合園女学院から空京へ。そこから上野、成田、ローマ経由でパレルモ空港。シチリア島までの道のりは遠い。
 まずは荷物を置こうと、リナリエッタはベファーナ・ディ・カルボーネ(べふぁーな・でぃかるぼーね)と共に、自分の部屋に向かった。
 
「この部屋も久しぶりだわぁ」
 実家にあるリナリエッタの部屋を見たら、百合園女学院での彼女しか知らない皆は驚くだろうか。
 天蓋つきの豪華なベッド、趣味の良いアンティークの家具、そして部屋を埋め尽くす勢いの、レースのドレスを着たアンティークドールたち。
 今は髪をピンクに染め、派手なギャル系メイクや服装で身を飾ってイケメン探しをしているリナリエッタだけれど、幼少の頃は末娘ということもあり、何不自由なく育てられたお嬢様だった。
 黒髪のツインテールなロリィタ嬢だったのだけれど、今やそれはリナリエッタの中では黒歴史だ。
 今とは全く違う趣味の部屋。それでも、やっぱりここは自分の部屋で、ほっと息をつける場所であることに変わりは無かった。
 ふかふかのベッドにぽんと倒れこみ、身体を伸ばし……鼻の頭に皺を寄せる。
「ちょっと埃っぽいわねぇ……」
 ゆっくりしようと思っていたのだけれど、まずは掃除をしたほうが良さそうだ。
 窓をいっぱいに開けて風を部屋に入れながら、たまった埃を叩き出し始めると、ベファーナもそれを手伝った。
 部屋の掃除を終えても、さっぱりさせたいというリナリエッタの欲求は止まらない。
 ついでだからと、リナリエッタはベファーナと出会った別宅へと掃除に出かけて行った。
 
「ああ、懐かしいですね」
 古代の城を利用した別宅を掃除しながら、ベファーナがしみじみと呟いた。
「ベファが別宅でお昼寝してたのを私が見つけたのよねぇ」
「ええ、勿論そのこともですが、これ、この棺、実に懐かしい!」
「棺ぃ〜?」
 そんなものを懐かしめるのは吸血鬼だからなのか、と思いきや。
「これをいっぱい作って色々埋めたんですよねぇ。生きたまま見せしめとか実に楽しい……」
 いかにも良い思い出を回想しているかのように、ベファーナは目を細める。内容は物騒なのに、態度は普段の通り爽やかで温厚なままだ。
「いいけど、懐かしんで掘り起こしたりしないでよぉ?」
「いけませんか?」
「掃除する場所が増えちゃうでしょ〜。掃除が終わったら飾りつけもしたいんだからぁ」
「……そうですか。仕方ありませんね。こういうものは掘り起こしてしまったら、案外がっかりするものかも知れませんし」
「案外っていうより、確実にじゃなぁい?」
 軽口を楽しみながら掃除を終えると、今度は広間を豪華に飾りつけ。パーティ会場らしく整えた。
 参加者はリナリエッタの家族、そしてイタリアンマフィアの父親の『ファミリー』。
 急に思いたってのことだから会場は急ごしらえのものだったけれど、母の作る美味しいイタリア料理と、家族が別の一家からぶんどった……いやいや、謹んで戴いた最高級ワインがあれば不足は無い。
 新入りの父親の部下、チンピラ崩れにはパラミタの怖さを尾ひれをたっぷりつけてびびらせてみたり。しばらくぶりに会う部下と、再会を祝ってグラスをあわせてみたり。
 そんなリナリエッタと共にベファーナも楽しんだ。昔は人間の絞りたて赤ワインで晩酌していたベファーナだけど、今はリナリエッタがパートナーだからとグラスの中身はイタリアワイン。それもまた美味だと思う。
 食べて飲んで喋って笑って。
 シチリア島の夜をリナリエッタたちは心行くまで楽しむのだった。