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神々の黄昏

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神々の黄昏
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 1.神々の戦い


 風が砂を攫い、空へと巻き上げていた。
 
 フマナ平原――。
 
 シボラとエリュシオンの国境付近にある、荒れ果てた大地である。
 断崖とクレーターと、延々と続く砂漠。そして点在する寒村。
 時折見えるのは村へ向かうキャラバンであろうが、存在は稀だ。
 
 だから、5万名もの騎士団がこの地に現れたのは、決して物見遊山ではなかった。
 かの部隊の名は、「龍騎士団」と言う。
 パラミタの諸国に知られた、軍事国家・エリュシオンの「神の騎士」たる軍勢だ。
 
 いま龍騎士達はそれぞれの乗り物――ワイバーンやドラゴンを御して、行進を止める。
 先頭に立つ老騎士が片手を挙げたためだ。
ケクロプス団長」
 参謀らしき、龍騎士が老騎士の様子を窺う。
 ドラゴンの手綱をとる利き手の筋肉は隆々としていて、それだけでも彼が並々ならぬ兵と分かろう。
 だが彼ほどの者をしても、ケクロプスは「絶対」の存在であり、ゆえに「神」とあがめられていた。
 ケクロプスは老齢とはいえ、重装備の甲冑を身にまとい、その姿は歴戦の勇者にふさわしく威風堂々としたものである。
 日に焼けた浅黒い顔に深い皺を刻んで、両目を細める。
「来る!」

 奴が!

 一隊は老騎士の視線の彼方を目で追う。
 逆光の中、大男と少女が歩いていた。
 彼等の行くところ、大地は揺れ、隆起し……まるでそれ自体が生き物であるかの如くリズミカルに躍動する。
 手には「ブライド・オブ・シックル」。
 血まみれのそれは、既に老騎士の部下・千人をナラカへと送りこんだ証拠である。
ドージェ……『シャンバラの3柱』の内、1柱か」
 ケクロプスの眼光が一瞬和らぐ。
 少女・マレーナの胸元に、セリヌンティウスの首を認めたので。
「不肖の弟子とはいえ、生きておったか」
「? いかがなされましたか? 団長殿」
「何でもない……。
 行くぞ!」
 
 そして、戦いは激しさを増してゆくのだった。