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静香サーキュレーション(第3回/全3回)

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静香サーキュレーション(第3回/全3回)

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【◎6―8・一件落着】

 太陽がもうほとんど隠れてしまった頃。
「だいじょうぶですの? しっかりしてください」
 鈴子に解放されていた日下部社は、ようやく目を覚ましぱちくりと瞬きを繰り返した。
「あれ? 俺……どうしたんやっけ」
「やー兄! よかった。なかなか起きないからしんぱいしたんだよ?」
 隣には千尋がいて、どうやら先に目を覚ましていたらしい。
「あ、そうなんか? 悪かったな」
「ほんとだよ! 男の子は、もっとしっかりしなきゃね!」
「なんや知らんけど、もう事件も解決しとるみたいやし。よかったよかった……ん?」
 そこでふと、千尋がこの百合園女学院では言ってはいけないことを言った気がした。
「あとねー。やっぱり、やー姉って言うのに慣れないよー? やー兄はやー兄だもん! やっぱり、ちーちゃんはやー兄って呼ぶね☆」
 それが意味するところと、そして最悪なことに現在隣にいる人物が、百合園女学院生徒会執行部『白百合団』団長、桜谷鈴子であることを確認して。
「ごめんなさい。すこーし、お話を伺っても、よろしいですわよ、ね?」
 社は即座に走った。
 乗ってきた白馬も忘れて走った。
 後ろからなにかが迫ってくるような気配を感じながら、ひたすらに地平線の彼方まで走り続けた。

 そのさまを苦笑しながら眺めるラズィーヤと、遅れてやってきた神倶鎚エレンと、そのパートナー達。その中のアトラは、思い出したように切りだしていく。
「そういえばラズィーヤ様、ホントは気づいてらしたんじゃないんですか? 静香様と亜美さんの入れ替わりを」
「ええ。そうですわよ」
「やっぱり。じゃあ、いつごろからわかってたんですか?」
「それはえーと…………もちろん、最初からですわよ」
 今のは嘘っぽいな、と誰もが思った。
「それで、結局のところ亜美さんへの処罰はどうなるんですか?」
「そうですわね。すべては、あの猿の手が悪かったことですし。わたくしとしては別に罰を与えるつもりはありませんわ。静香さんもそうでしょうし……あとは、亜美さん自身がどうするかだけですわ」

 その亜美はというと、しばらくいたたまれずにいたようだったが。
 騒動を聞きつけてきた真口悠希が間に入る形で、
「その。ごめんなさい、静香」
「いいよ、もう」
今ようやく静香と仲直りの握手を交わしていた。
「おかえりなさい……静香さま、亜美さま」
 ついでとばかりに悠希も手を乗せ、微笑みあった。
 でもすぐに恥ずかしくなった亜美は手を離して、自分のパートナーである魔道書を掴んで去っていってしまった。
「やれやれ。なにはともあれ、一件落着かぁ……」
 ぐっ、と伸びをして肩の荷をおろす静香。
 そこへ茅野菫が近づいてきた。
「よぉ。全部片付いたみたいじゃん」
「ああ、うん。秘密を暴露したりして、苦労した甲斐があったよ」
「おっと、そのことだけど」
「ん?」
「結局のところさぁ。本人しか知らない情報を話したからって、その情報が本物かわからないんだから意味はないんじゃん。つまり、秘密の暴露は単なる羞恥プレイだったんだよ。あっはっはっは」
 ふつうは気がつきそうなものだが、今になってようやくそのことに気がついた静香は。
 どうか秘密を暴露するところまで、時間が巻き戻ってほしいと切に願った。
 もちろん、ループが起きなかったのは言うまでもない。


                                     おわり

担当マスターより

▼担当マスター

雪本 葉月

▼マスターコメント

 マスターの雪本葉月です。
 全三回のシナリオを書き終わり、充実した思いと反省の思いがあります。
 皆様のアクションから色々と展開を考え、次のシナリオに繋げるのは面白く、同時に難しくありましたが。それでも完成させた時には満足感があるものです。
 ただ、やはりまだまだ描写のやり方が甘いとも痛感させられました。特に百合園女学院は男子禁制の部分があるため、考えるべきことも多くありましたしね。

 全三回通じてのテーマは『もしも』です。
 某ボックス的な感じで、静香達がもしもの世界を体験するという感じでした。
 あとこれは余談ですが、実は第二回がはじまる時点では、三回目はもう少し恋愛面を強くしようかとも考えていたりしました(静香と亜美の百合っぽい展開とか……)。亜美のパートナーも、もっと早く出すつもりでしたし。
 しかしいつの間にか、猿の手なんてものが出てきて、なんやかんやでバトルっぽい部分が多くなっていきました。
 でももしも、恋愛シナリオっぽくしていたらどうなっていたのか? なんてことを考えたりもします。最後に選べる道は、結局ひとつきりなんですけどね。

 ともあれ私のキャンペーンシナリオにお付き合い頂き、どうもありがとうございました。