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リアクション
2.
「だ〜ひゃっはっは!! 俺様以外、みんな不幸になぁ〜れ!!」
ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)が奇声をあげる。アルマイン・デットのマジックカノンが、次々と火を噴いた。
「あれが、タシガンの領主ですか?」
相変わらず高見の見物を続けるウゲンの姿をちらりと見やり、サブパイロットのシメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)は、ほぅと声をあげた。
「なかなかの魂の輝きですね」
彼の言う魂の輝きとは、「心のままに行動すること」によっていたっている。その理論でいえば、ウゲンはたしかに、輝く魂の持ち主だろう。
とはいえ、ゲドーはそのような言葉は、耳に入っていない。
「詳しいことはわからねぇが……ともかく薔薇学の奴らのイコンを攻撃すりゃあいいんだろ? シパーヒーのパーツも必要だしな」
ゲドーの狙いは、ウゲンに協力することというよりは、シパーヒーのパーツを手に入れ、自身のイコンの一部とすることだ。
「俺様のために、首でも腕でも、置いてけぇ! ひゃっはっはっ!!」
戦闘に出たシパーヒーを、ゲドーは高笑いしつつマジックカノンでねらい打つ。しかし、突如地上から砲撃を受け、アルマイン・デットの機体が揺れた。
「誰だぁ!?」
見下ろした地上には、黒い【ヴァラヌス鹵獲型】イコン、六天魔王が、マジックカノンの銃口でゲドーを狙っていた。
「なんだぁ? 邪魔しようっていうのか。……救世主サマ、まずはあっちから不幸にしてやろうぜぇ」
刻印の刻まれた舌をのぞかせ、ゲドーは再び高笑いをする。
「良いでしょう。私が救世しましょう、私の意志で!私の思い通りに!!」
アルマイン・デットが、その羽根を羽ばたかせ、六天魔王へと迫った。
「……よかろう、来るがいい」
メインパイロット、織田 信長(おだ・のぶなが)が、可憐な口元を歪めた。
信長と桜葉 忍(さくらば・しのぶ)は、タシガンの地を旅している最中に、ウゲンの企みを聞きつけ、イコン基地へ立ち寄ることにした。
「俺はウゲンの事はよくは知らないが、今やろうとしている事だけは止めないと大変な事になるぞ」 忍は焦燥感を隠さずそう口にした。元来、お人好しで優しい性格の忍だ。このような状況を、黙って見過ごせるわけがなかった。
「ふむ。……ウゲンとやらが何を企んでいるかは私の知った事ではないが、少し奴の遊びに乗ってみるのもまた一興じゃな」
「信長、ウゲンが何を企んでいるのか本当は気付いているんじゃないのか?」
忍は、信長の瞳をまっすぐに見つめ、尋ねる。
「フン、私がもしウゲンの考えていることが解っていたとしても、どうにもならんよ。……今はな」
どこか謎かけめいた返答をし、信長はイコンへと乗り込んだ。
「それより、忍よ、私は私なりのやり方でこの戦いを楽しませてもらうぞ!」
「……ああ。俺は俺のできる事をするだけだ」
忍もまたそう答え、彼らは戦場へと飛び込んだのだった。
そして。
滑空してきたアルマイン・デットを、六天魔王のかぎ爪が迎える。両手の十指の爪が、激しい音をたててアルマイン・デットの装甲に食い込んだ。
「ちっ!」
舌打ちをし、ゲドーは一旦機体を上昇させた。至近距離からスピアを思い切り打擲するつもりだったが、接近戦はむしろ不利だ。むこうは飛べないということを考えれば、上空からねらい撃つ他にない。
ダメージは、シメオンがすかさず回復させる。体勢を立て直し、ゲドーは吠えた。
「だ〜はっはっは! 吹き飛べぇ!」
「……逃さぬよ」
信長が呟き、マジックカノンの照準を合わせる。
二つの銃口が、ほぼ同時に火を噴き、空中で爆発する。
しかし、その力は、六天魔王がわずかに勝っていた。
「フン! 私に勝とうなぞ五百年早いわ!」
「……けっ、まぁ、ヴァラヌスなんぞ用はねぇ。とっとと、シパーヒーのパーツを奪って逃げるだけよ!」
ゲドーはそう言うと、中指をたて、その場を離脱した。
「追う?」
「放っておいてよかろう。それよりも、気を抜くでないぞ、忍」
まだ戦いは終わってはいない。信長の言葉に、忍は強く頷いた。
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