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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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「よし、そこのボルトを締めてくれ」
 コア・ハーティオンが、星怪球バグベアードに言った。星心合体ベアド・ハーティオンの後頭部にあった触手が、器用にスパナを操ってマスドライバーの崩れかけた橋脚に補強板を取りつけていった。
『キョウド50パーセントキョウカ。オウキュウショチ カンリヨウ。ドウダ、ミライ……。ミライ、イナーイ……。ションボリ……』
「バクベアードよ、今は作業をすべきときだ。急がねばならない」
『ワカッテル……。シゴト、ガンバルー』
 コア・ハーティオンに注意された星怪球バグベアードが、キリキリとボルトを締め直していった。
『タシカニ、コノマエノ タタカイデハ、テキニ スピードデ、ゼンゼン オイツケナカッタ。スピード、ジュウヨウ。イマノ ワガハイタチノ ハンノウソクドデハ、テキニ タイオウ デキナイ。テキ ぱたーん サイブンセキ。カイシ……。シュウリョウ』
「は、早いな!?」
『ねっとわーくニヨル ヨソクコウドウヲ テイショウ。ソレデ だめナラ はーてぃおんノセイ。アキラメー』
「えっ……」
 ちょっと納得のいかない、コア・ハーティオンであった。
 
    ★    ★    ★
 
「請求書の宛名は、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)様でいいんですね」
「ええ、そうですわ。よしなにお願いしますわ」
 オクスペタルム号に荷電粒子砲を装備してもらったエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が、宇宙港の職員にそうはっきりと告げた。
「わあーい、早く撃ってみたいなあ♪」
「ダメですわよ。必殺武器は、ここぞというところで使うものですわ」
 さっそく試したくてうずうずしているノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)に、エリシア・ボックが釘を刺した。
 さっきまでメイドロボなど乗務員総出で取りつけ作業を行っていたのだが、ノーン・クリスタリアはずっと彼らを応援していたのだった。もちろん、ノーン・クリスタリアの存在に熱狂した乗務員たちの作業は早く、なんとか出発までに改装を完了させていた。
 
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「こっちだ、こっちに運んでくれ」
 天城 一輝(あまぎ・いっき)が、名目上エステル・シャンフロウが恐竜騎士団から買い取ったとする武器弾薬を、誘導してフリングホルニにどんどん積み込んでいった。
 ニルヴァーナに行った後は、どこに行くか分からないので、補給を受けるのはこれが最後になりかねない。搭載しているイコンの損耗率を考えると、弾薬や修理部品は大量に必要であった。
「アルバトロス一機では、ちょっと手が足りないですわね。宇宙港の運搬用飛空艇も貸し出してもらいましょうか?」
 小型飛空艇アルバトロスに乗ったローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)が、天城一輝に訊ねた。
「すまん。そうしてくれ。俺のはお星様になっちまったからなあ。それで、フリングホルニの気密処理はどうなっている?」
「ユリウスがチェックしているはずですわ」
 そう言って、ローザ・セントレスが、停泊しているフリングホルニを見あげた。
 フリングホルニのイコンデッキでは、ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)が資材の整理に忙殺されていた。
 なにしろ、戦闘後であるので、破壊されたばかりのイコンパーツの残骸などが、まだイコンデッキに山積みにされている。それらを廃棄するのも一苦労だ。
 幸いにして、異界での運用も念頭において設計されているフリングホルニは、気密に関しては完全であった。通気口にあたる部分は、すべて装甲シャッターが降りるようになっている。後は、それが完全に機能しているかのチェックだけであった。なにしろ、異界に出るのは初めてでもある。また前回のエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)のような侵入者が現れないとも限らない。
 そちらの方は、コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)が、艦内を掃除しながら細かくチェックしていた。
 
    ★    ★    ★
 
「こ、これは……。やはり、奴らはこれが目的だったのだな!」
 ゴールデン・キャッツのぐちゃぐちゃになった貨物室を目の前にして、マネキ・ング(まねき・んぐ)が怒りに燃えていた。
 せっかく宇宙港を制圧して、月基地からニルヴァーナへの干しアワビの大量輸出を夢見ていたマネキ・ングとしては、これは許しがたい。
「こうなれば、再戦して、完膚なきまでに叩きのめしてくれる。エリュシオンの蛮族共め、アワビの恨み、思い知るがいい……。ということで、我は、あれを取りに行ってくる。留守の間、オリュンポスの貴重な戦力として、オリュンポス・パレスの修理に協力してやってくれたまえ」
「あれか……。ついに出すのか……。分かった、こちらは、修理に専念しよう」
 そう言って、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)がマネキ・ングを送り出した。
 墜落したゴールデン・キャッツのすぐそばには、同様に墜落した機動城塞オリュンポス・パレスが大地に斜めになって転がっている。さすがに墜落しているため、宇宙港まで動かすことができないのが現状だ。
 セリス・ファーランドは、ゴールデン・キャッツの無事な部品を取り外すと、それを機動城塞オリュンポス・パレスへと運んでいった。
 機動城塞オリュンポス・パレスの方は、何やら大勢の機晶妖精や施工管理技士たちが群がるようにして急ピッチで作業を進めている。
「なんとも、どこからこんなに作業員が……。裏金の力なのか?」
「ここに、ブーストスラスターユニットを二基増設して、機動力強化を行います。とにかく、宇宙港のドックまでなんとかして移動させるのが目的です。怪しげな主砲は、アンチプロトン砲に換装ですね。ああ、セリス君、運んできたパーツはあちらへ渡してください」
 エリート研究員と相談していた天樹十六凪が、セリス・ファーランドを見つけて指示した。前回、ドクター・ハデスが言っていたサイクロトロンにちょっと興味を持った天樹十六凪が、このチャンスに起動要城オリュンポス・パレスにもちゃっかりそれを搭載してしまおうと画策しているのである。
 そのころ、宇宙港では、ミネルヴァ・プロセルピナが、ドックの手配と資材の確保に走り回っていた。
「では、この作戦に参加した機動要塞がいずれ来ますから、修理用ドックの使用をお願いしますね」
 ミネルヴァ・プロセルピナが、うそぶく。
 もともと、秘密結社オリュンポスの面々は、マスドライバーを占領しようとして運悪く先にスキッドブラッドと遭遇してしまっただけである。
 宇宙港はアルカンシェルのメンテナンス用のため、ドックや桟橋としてはその規模の機動要塞を固定することができるようにはなっている。輸送用の大型飛空艇まで対象に含めたのか、設備が複数あったのが今回役にたっていた。
「ああ、それと、そこの瓦礫、資材として使ってもよろしいかしら?」
 ミネルヴァ・プロセルピナが、絶対無敵要塞『かぐや』の残骸をさして、職員に訊ねた。
「瓦礫じゃないわい!!」
 それを耳にしたアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が怒鳴る。
「まったく、怒鳴らないでください。こっちは、修理で大変なんですから」
 耳許で大声を出されて、ヨン・ナイフィード(よん・ないふぃーど)が文句を言った。
「もう、いっそ、あの人に残骸を売って、そのお金で新しく買い直した方がいいんじゃないんですかあ?」
 この先の、外装の総取り替えを思って、ヨン・ナイフィードが溜め息をついた。
「その資金は、こんなことをした奴らからふんだくると言っているだろう。で、奴らの破片から、何かつかめたか?」
 アキラ・セイルーンが、スキッドブラッドの破片らしき物をサイコメトリしているルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)に訊ねた。
「ええっと、ちゅどーん、ちゅどーん、ちゅどーんじゃな。爆発のイメージしか見えんのう」
 こりゃダメだと、ルシェイメア・フローズンが答えた。
「仕方ない。俺はこれから、エリュシオンの領主様とかに文句言いに行ってくる。二人は、すぐにアリスを呼びつけろ。もちろん、ピヨも一緒だ! おれは、あの空母の中でVIP扱いしてもらってくる!」
 怒りに燃える、アキラ・セイルーンが、ルシェイメア・フローズンとヨン・ナイフィードに、アリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)に連絡してジャイアントピヨを連れてくるように命令した。
「あーあ、また無茶なことを……。仕方ないのう、こちらはこちらで、修理に専念するかのう」
「そうですね。つきあわされるアリスさんがかわいそうですが……」
 顔を見合わせて、ルシェイメア・フローズンとヨン・ナイフィードが小さく溜め息をついた。