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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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北入り口

 
 
「じゃあ、頑張るのだよー」
「おう、頑張るぞー」
 ザーフィア・ノイヴィントにロイヒテン・フェアレーターで北の入り口まで送ってもらった新風燕馬が、元気よく手を振った。
 近くに、何やら小型の空飛ぶ円盤が止まっている。
「ふっ、貴様も、こちらにお宝の匂いを感じてやってきたのか」
 入り口の前に仁王立ちになった国頭武尊が、新風燕馬を見て言った。
「何をやってるんだ。さっさと中に入って……」
 言ったとたん、新風燕馬が、入り口が凝固剤で封印されていることに気づいた。
「というわけだ。入れん……。なのでなんとかしろ!」
 なんだか上から目線で、国頭武尊が新風燕馬に命令した。
「仕方ないなあ……。ザーフィア、戻ってこーい」
 新風燕馬が、ザーフィア・ノイヴィントを呼び戻した。
「なんなのじゃ。もう諦めたのか?」
「これ壊して」
 文句を言うザーフィア・ノイヴィントに、新風燕馬が入り口を指さした。
「まったく、世話の焼ける……」
 ザーフィア・ノイヴィントが、ロイヒテン・フェアレーターを人型に変形させた。
「下がっておるのじゃぞ!」
 ザーフィア・ノイヴィントがそう言って、ロイヒテン・フェアレーターの無尽パンチを放った。さすがにイコンの一撃で、封印ごと、入り口が破壊される。パンチが戻っていくと、なんとか人が潜り込めそうな穴が開いていた。
「よし、入る……ああっ」
「おい、早く来な」
 入ろうぜと言おうとした新風燕馬であったが、国頭武尊はさっさと入ってしまっていた。
 遺跡内は、照明がついていて、比較的楽に探索することができた。
 だが、そのほとんどは、意味の分からない機械室などで、はっきり言って二人には何があるのかもよく分からない。
「お宝は……。もっと奧か」
 二人同時にトレジャーセンスで同じ方向を指し示す。
 進んで行くと、だんだんと工場的な雰囲気から、研究所的な雰囲気に遺跡内部が変化していった。
「いったい、お宝はどこにあるって言うんだ?」
 無造作に部屋部屋の扉を蹴っ飛ばして開けながら、国頭武尊がぼやいた。
 とはいえ、いくつかの部屋は、ロックがされていて中に入ることができない。
「おっ、ここは何だ……」
「何か、いいもん見つけたかい?」
 何かを見つけたらしい国頭武尊の所に、新風燕馬が駆けつけていった。
 ラボのような部屋の中が、通路に面したはめ殺しの窓から見える。そこは、機晶姫の研究施設のようであった。パッと見たところ、入り口は見えないので、どこか他の場所にあるのだろう。
「これは、機晶姫の製造工場か?」
 居ならぶシリンダーの中にならんだ多数の機晶姫を見て、国頭武尊が首をかしげた。ポンチョのような服を着た、幼女型の機晶姫だ。
「えっ、これって……。おい、ザーフィア、サツキ、どう思う?」
 携帯で写真を撮った新風燕馬が、すぐにそれをザーフィア・ノイヴィントとサツキ・シャルフリヒターに転送して意見を求めた。
『これって、サテライトセルですか? よく似ていますが、同じものでしょうか?』
 かなり驚いたように、サツキ・シャルフリヒターが言った。
「さあ。似ているとは思うけど。もっと、他も探してみよう」
 そう言うと、新風燕馬がその場から歩き出した。
「おい、どうして行っちまうんだ。この窓を壊しちまえば、中に入れるぜ」
 貴様が何もしないんなら自分がと、国頭武尊が窓を破ろうとする。
「やめておいた方がいい。前に、ここと似た場所に入った奴は、一斉にその機晶姫に襲われてえらい目に遭ったと噂で聞いている。実際、俺も巨大イコンの中でそれと同じ機晶姫に襲われて大変な目に遭った」
 そう言うと、新風燕馬は先へ進んで行ってしまった。
「ちっ」
 軽く舌打ちすると、国頭武尊はその後を追った。
 女王の加護のせいか、確かにここは安全ではないという気がする。
 もちろん、この程度の数の機晶姫を相手にしたって負ける気はしないが、手間がかかりすぎる。雰囲気的に、こういうのはコントロール室があるはずだ。そこを押さえれば、もっと楽にいろいろと手に入れられるはずだった。
 トレジャーセンスに従って進んで行くと、今度は先ほどよりはもっと巨大な窓が現れた。
 そこからは、何やらイコン格納庫のような物が見下ろせた。
「これは、まさか……。いや、少しデザインが違うな。色も違うし……。二人はどう思う?」
 再び携帯で画像を送りながら、新風燕馬がサツキ・シャルフリヒターたちに意見を求めた。
『確かに、似てはいるがのう。いや、どちらかといえば、アニメイテッドイコンの方が近いような……』
『ええと、これは多分アニメイテッドイコンの一種で、タンガロアではないでしょうか。おそらく、ブラッディ・ディヴァインのアジトで発見されたという破壊されたイコンと、遺跡の西で発見されたというイコンの残骸はこれと同じ物と思われますが。主に、鏖殺寺院が使用しているイコンで、フラワシで操縦する、ある意味無人機となります』
 サツキ・シャルフリヒターが、艦隊で共有しているデータを参照して新風燕馬に説明した。
「鏖殺寺院のイコンを、なんでこの遺跡で作っているんだ?」
 わけが分からねえと、国頭武尊が口をはさんだ。
 ここから見える工場では、作りかけのタンガロアの部品が見える。ここで、タンガロアを生産していることは疑いようがない。
「とにかく、あれとかあれとかあれとかを、いろいろと動かしてる部屋があるはずだぜ。そこを押さえちまえば、この遺跡を俺の物にしたも同然だぜ」
 今度は、国頭武尊が先に立って歩き出した。思わず、ほしい物はぶっ壊して手に入れるというパラ実的な遺跡探査方法をとりたくもなるが、やはり無傷の方が価値は高い。どうにも、ここの施設は危険という感じとお宝という感じが同居している。もっとも、危険なお宝という意味であれば、そのまま文字通りということになるが。
 やがて、二人は捜していたコントロールルームのような物を発見した。
 喜び勇んで中に入ってはみるものの、はっきり言って何がなんだかさっぱり分からない。
「調べてみるか」
 国頭武尊がサイコメトリをしてみる。
 コンソールに手を翳すと、それを操作するポータラカ人、すなわち当時のニルヴァーナ人の姿が浮かんできた。何やら、スイッチを入れている。同時に、何か水晶柱の塊のような物の姿が見えた。
「こいつは、イレイザー・スポーンか!?」
「何が見えたんだ?」
 驚いた顔をする国頭武尊に、新風燕馬が訊ねた。
「いや、ここのスイッチをだな……」
「おい!」
 止める間もなく、国頭武尊がコンソールのスイッチに触れてしまう。
「いったい、何のスイッチを入れたんだ」
「さあ。まあ、何もおきな……」
 そう国頭武尊が言ったとたん。ドンという大きな音がした。
 急いで通路に様子を見に行ってみると、先ほどのイコンの工場内に何かが浮かんでいる。
「げっ、さっき見たイレイザー・スポーンじゃねえか」
「お前がスイッチ入れたから、現れたんじゃないのか!?」
 さすがに、新風燕馬も焦る。なぜなら、突如現れたイレイザー・スポーンは、そこにあったタンガロアに次々に貼りついて寄生していったからである。
「さっきのスイッチを切るんだ。いや、また入れるのか? なんでもいいから早く!」
「お、おう」
 新風燕馬に言われて、国頭武尊は急いでさっきのコントロールルームに戻った。
「ええっと、このスイッチだったはずだが……」
 国頭武尊が、おぼろな記憶で適当にスイッチを入れる。
 その直後に、大きな音が響き渡った。ガラスの割れるような音だ。
「ヤバい、さっきのイコンがイレイザー・スポーンに操られて暴れだしたみたいだ」
『何やってるのじゃ。相手が悪すぎる、早く脱出するのじゃ!』
 繋ぎっぱなしの携帯から状況を理解したザーフィア・ノイヴィントが、新風燕馬を叱責した。対イコン用の武器を持っていない今の装備では、あまりに不利すぎる。
「いったん退くぞ!」
「お、おう。後で仕返しに来るからな、覚えとけよ!」
 通路に手を突っ込もうとしているイコンに捨て台詞を吐くと、国頭武尊は新風燕馬と共に急いで遺跡を脱出していった。