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リアクション
第八章 「崩壊」
最上階。
狭い戦場。小規模の戦い。それゆえ、一度傾いた流れを取り返すのは難しい。
白竜の援護から流れを失ったアウィスたちは、どんどんと追い詰められていた。
「てめえらなにやってる！ 俺様の盾になって俺様を逃がせ！」
表情に恐怖の色を滲ませながら部下達の背中を蹴り飛ばし、自身は転げるようにドアの方へと走っていくが──白竜が放った弾丸が足を貫いた。
「がっ……！」
がくんと沈み込むようにアウィスは膝を落とすと、そのまま床に這いつくばってしまう。
その姿に、先ほどまでの帝王然としていた時の姿はとても想像が出来ない。
「お前たち、あんな醜態を晒すボスにまだ付き従うつもりか」
白竜が銃口を親衛隊に向ける。
「……」
親衛隊は足を撃ち抜かれても逃げようとするアウィスの姿を見て、武器を捨てると両手を挙げて見せた。
戦闘終了。
誰もがそれを確信して、胸をなで下ろした一瞬──その気が緩んだ瞬間を狙って、デメテール・テスモポリス（でめてーる・てすもぽりす）が明人を襲った。
「もらったー！」
疾風迅雷の速さでデメテールが明人の懐へ飛び込むと、素早くペンダントだけを切り離した。
紐を切られたペンダントはゆっくりと宙を舞い、明人は咄嗟に手を伸ばす。
遠く離れていくペンダントに指先が触れる刹那、デメテールは高い跳躍でペンダントをかすめ取ってしまう。
「ペンダント確かに頂いたよ！」
着地して見せびらかすようにペンダントを見せるデメテールはそのまま身を翻して明人に背を向ける。
明人は追いかけようと足を動かすが──アルテミス・カリスト（あるてみす・かりすと）に上から取り押さえられてしまう。
「今のうちに！」
「りょーかい」
デメテールは窓を割って飛び出した。
「なんてことを……！」
エリシアは反射的にアルテミスを銃撃するが大剣によって弾かれてしまう。
そのまま大剣を振るうと、明人から離れて切っ先を向けた。
「数分ほど、粘らせていただきます。安心してください、殺す意思はこちらにありません」
底を尽いた体力と精神力。絶好のタイミングで鍵を奪われた明人は「やられた……」と呟き、考え、携帯を取り出した。
エリシアと白竜は通話を妨害されないように銃撃でアルテミスを牽制する。
数コール目で、時計塔にいるアキラ・セイルーン（あきら・せいるーん）に繋がった。
『どうした？』
「ごめんなさい……鍵を盗られました」
『それで、俺達はどうすればいい？』
アキラに訊ねられて、明人は一度口を一文字に結び、
「時計塔を壊してください……！」
ハッキリとした口調で伝えた。
「あいよ」
アキラは短く返事をして、通話は終わった。
