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リアクション
その戦いの合間を縫ってリネンとフリューネがファナティックを目指す。
その二人に横槍が入りそうになる、がフェイミィの的確なアシストによりそれもならず。
「ありがとう、フェイミィ」
「……引き立て役は気にいらねぇ。……だが、リネンの隣はお前が似合いだよ! さっさと行け!」
フェイミィなりの激励を聞いたフリューネは更にスピードを速める。
「ったく。いくぜ、遊撃隊。フリューネたちに負けんじゃねぇぞ! ついでに、フェイミィよりイーリ、ド派手に支援頼むぜ!」
『ガンファイア・サポート』を要請した数秒後、凄まじい支援攻撃がファナティックの部下たちを襲う。
「賢しいわ」
それまで動きのなかったファナティックが攻撃を開始。機晶ユニットからビーム砲を発射し、次々と砲弾を撃墜。
そしてファナティック本人も攻撃に移る。
「まずはお前らからか。安心して空の塵となるがいい」
「塵になるのはお前よ、ファナティック!」
乱戦を掻い潜りファナティックの元にたどり着いたリネンとフリューネ。それまで一緒だった二人が左右に分かれる。
「まあ、そうくるであろうな」
に対して未だ冷静なファナティック。機晶ユニットがリネンとフリューネを攻撃。
その攻撃を紙一重でかわす二人。が、リネンの方へファナティックが向う。
「見たところお前がフォロー役だろう。先に潰しておこう」
「あら、できるかしら。言っておくけど、空を制するのは私たちよ?」
「ぬかせ」
リネンとファナティックが激突。
ファナティックの、機晶石の影響により禍々しいフォルムとなった鎌状の武器と、
リネンの【アーリエの剣】が激しくせめぎ合う。
「炎を纏う剣か。ちゃちなものだな」
「そっちこそ趣味の悪い鎌ね。でも私ばかりに気をとられていいのかしら? ……フリューネ!」
リネンが叫ぶとほぼ同時にフリューネが愛槍片手にファナティックを穿つ。
「はぁっ!」
「……予測していないとでも思ったか?」
ファナティックは何もしない。代わりに、それまでリネンを狙っていた機晶ユニットがフリューネに狙いを変えていた。
「!?」
放たれたビーム砲を辛うじてかわしたフリューネ。
だが目の前にはファナティックの姿が。
「まず、一人―――」
ファナティックがフリューネの首を鎌で跳ね飛ばそうとする。その刹那。
「一人、とはお前のことか?」
ファナティックとフリューネの真横に、レン・オズワルド(れん・おずわるど)が武器を構えていた。
「!」
鎌がフリューネの首をかき切ろうとした寸前でファナティックが飛び退く。
しかし、レンは追い縋る。ファナティックの懐から離れはしない。
「貴様っ」
「滅する!」
【魔導刃ナイト・ブリンガー】でファナティックを一閃。
見事な一太刀。これ以上ないというほどの一撃。
「ぐ、ああああっ!」
苦しみの声を上げるファナティック。
更に追撃を喰らわす為に、レンがもう一歩踏み込む。
「……なんてな」
けろりとした不気味な表情でレンを見やるファナティック。
全ては演技、フェイクだった。しかし、対するレンも不敵に笑う。
「ああ、わかっていたさ。お前は大根役者のようだからな」
「だが、お前はもう踏み込んだ。逃げることは適わんだろう!」
「その通り。だが、忘れてはいないか? 俺一人で戦っているというわけではないことを」
「なにっ!?」
ファナティックが後ろを振り向く。
「三度目の正直は、当てる!」
眼前にはフリューネの姿があった。そのままファナティックの右腕を槍で攻撃。
「ぬ、ぬうっ!」
「その腕、もらいうけるわ!」
腕に突き刺した槍を振り上げ、右腕をもぎとる。
「ちぃ!」
もぎとられても痛みに狂うことなく後退するファナティック。
ファナティックに手痛い一撃を食らわしたフリューネのところへ、レンとリネンが集まる。
「ありがとうリネンにレン。おかげでようやく一太刀入れられたわ」
「気にするな。しあし、やはり侮れん。石の使い方が、巧い。バルクの比ではないな」
「そうね。厄介なことに、あの機晶ユニットも攻撃が激しいわ」
それぞれ情報を交換しあう。だが、それも束の間。
「めんどうな。この右腕の代償は高くつくぞ」
ファナティックの気が更に高まる。
その背後で、機晶ユニットが爆散する。
驚いたファナティックが機晶ユニットのあった箇所を見れば、そこには桜月 舞香(さくらづき・まいか)がいた。
「あら、ごめんあそばせ。目障りだったから壊させてもらったわ」
「……次から次へと、この無知者どもが」
機晶ユニットを壊されたからか、ファナティックの体表が赤く光る。
それを見た舞香が貶すように言う。
「あら、それで怒ってるの? 芸がないのね、このユニット同様」
「もうよい、一瞬で潰してやろう」
「人魚たちの聖域を踏み荒らす下劣な奴に負ける気なんてしないわ。つべこべいわずかかってきたらどう?」
挑発を続ける舞香。だが、ファナティックもそうやすやすとは挑発に乗らない。
「お前は後だ。あの三人のほうが面倒だからな」
「そう? なら遠慮なく、機晶ユニットは壊させてもらうわね」
そう言って舞香は【ワイルドペガサス・グランツ】に跨り、次の機晶ユニットのところへ急行する。
「……モード変更、向ってくる敵を優先的に排除しろ」
―――モード、ヘンコウ。
それまでファナティックの援護を最優先にしていた機晶ユニット。
だが、モード変更を行ったことにより自衛を最優先し始める。
「あら、ちょこざいね!」
『剣の舞』で遠距離から攻撃をする。だが、攻撃は当たらない。
「簡易の自律回路を埋め込んである。避けるくらいはできよう。さて、これで機晶ユニットもそうそうやられんだろう」
改めてファナティックが三人に向き直る。
それとほぼ同時にファナティックの後ろから更なる敵?が現れる。
「な!? まだこれほどの戦力を温存していたの!?」
フリューネが驚きの声を上げる。と、同時にファナティックも首をかしげる。
「……こんな奴等は知らぬが」
「フハハハ! フーハハハハハハ!」
空中に響き渡る笑い声。いつもより一割り増しだ。
「ま、まさか……」
雲のように白、くはない少しくすんだ白衣を風になびかせ、眼鏡をきらりと光らせながら現れた人物。
「我が名はドクター・ハデス(どくたー・はです)。秘密結社オリュンポスの大幹部である!」
「私たちも」
「いますよ!」
ハデスのパートナーであるヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)とペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)も声をあげる。
「なんだ貴様らは」
いきなり現れたハデスに殺意の声をもって問いかけるファナティック。
「お前だけでは勝てるかどうか。そこで、だ。我らを雇わぬか? 報酬は、お前の機晶技術の供与でいい」
「……」
言われたファナティックは考え、そして無表情で言った。
「勝手にしろ。その力、せいぜい我の役に立てるといい」
「交渉成立だな! ではゆくぞ! 空賊94名、飛行機晶兵28名、戦闘員6名、総勢128名! 全力で迎撃するのだ! フハハハハハ!」
もてるだけの力を投入したハデス。更にヘスティアとペルセポネに指示を出す。
「お前たちは先頭にたち、眼前の契約者たちの足止めするのだ! その間に【要塞化】を終わらせる!」
ハデスの指示にヘスティア、続いてペルセポネも迷うことなく返事をする。
「かしこまりました、ご主人様…じゃなかったハデス博士」
「わかりましたっ、ハデス先生っ! まずは、変身!」
【ブレスレット】からパワードスーツを装着(今回は成功しました!)したペルセポネ。そのまま合体へと移行する二人。
「「機晶合体!」」
二人の声と共に合体が開始される。
ペルセポネの装甲が次々とヘスティアに装着されていく。
「って、こ、これ以上脱げるのはだめですっ! だ、だめー!」
防御面を司るヘスティアのパーツがパージされ続け、
残ったのは芸術性さえ感じるビキニ上のきわどいパーツだけだった。
「装甲OK.火気管制OK.オールグリーン. ……移行完了! アーマード・ヘスティア!」
「で、ですっ!」
無事、に合体を完了させたヘスティアとペルセポネ。間髪いれずに攻撃を開始する。
「最初から、全力で行きます!」
一方からは【18連ミサイルユニット】、もう一方からは【機晶魔銃】をもって【クロスファイア】を実行。
その制圧力は申し分ない。
攻撃されたフリューネたち三人は、迫り来る十字砲火を回避。
「本当に、やる気のようだな。なら容赦はせん!」
回避しながらもヘスティアに狙いを付けたレンが、愛銃で狙撃。
「左方向から、弾数2、回避します」
すぐさま【ディメンジョンサイド】を展開した上で、【ポイントシフト】。
レンの攻撃を回避し、更に攻撃を続けるヘスティア。
「フハハハハ! よいぞ、アーマード・ヘスティアは実に良い! さあ、今のうちに陣地を更なるものにしよう……」
「ここは空中だ。どうとするの」
「なに、先ほどいくつか小型船をくすねて来た。プラスで空賊たちで壁を作れば問題はない! 憎い! この天才の発想が憎い! フハハハハ!」
ハデスの高笑いが空中に木霊する中、三人は必死に猛攻を耐え忍んでいた。
「どうするのフリューネ! 既にヘリワードには連絡してるけど、一旦引く!?」
「……いいえ。これ以上守りを完璧にされたら崩すのに時間がかかるわ。辛いけれど、攻撃を回避しつつ陣地の構築を邪魔する」
「とんだ難題だな。だが、フリューネがそうするというのなら、俺もそうするまでだ!」
「わかったわ! フリューネもレンも、死んだらだめだからね!」
「ええ。……フリューネ・ロスヴァイセは引きはしないわ! かかってきなさい!」
女義賊が、猛る。
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