葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

蒼空学園遠泳大会!

リアクション公開中!

蒼空学園遠泳大会!

リアクション

 楠見 陽太郎(くすみ・ようたろう)の参加はいつの間にやらパートナーのイブ・チェンバース(いぶ・ちぇんばーす)が決めていた。パートナーが決めた割りに、なぜか1人コースで陽太郎が泳ぐことになっていたのだ。
(ふふふ、長い距離を泳いで疲れた彼を癒すのってパートナーの仕事として相応しいわよね)
 イブのそんな思惑に気づかず、エントリーされたからには完泳目指して頑張ろうと、陽太郎は泳ぐ。
「マイペース、マイペース」
 順位争いには参加せず、自分自身が出せるベストな力で泳ぎ続ける。
 ゴールで待つイブの元を目指して。

(え、イェルナ、手伝ってくれないの? ……真夏のビーチでナンパしてる? 吸血鬼のくせに? パートナーの僕を放っておいて?)
 スタート前のパートナーとのやり取りを思い出し、アルフィエル・ノア(あるふぃえる・のあ)は遠泳に対する情熱を再沸騰させていた。
 最高でも最低でも優勝をもぎ取り、薄情なパートナーを見返してやるのが、アルフィエルの目標であった。
 自分のペースを守りながらも先頭集団に食いつくように泳ぎ続ける。時には自分の体力と相談し、波に乗るようにして楽をし、距離が開いてしまえばスピードをやや上げて追いつく。
 必死になりすぎて溺れてしまわないように注意をしながらも繰り返し、先頭集団の後方を泳ぎながら終盤まで差し掛かっていた。
 あとはラストスパートをかけて抜いていくだけだ、と己に言い聞かせ、アルフィエルはスピードを上げ始めるのであった。

 黒いブーメランを履き、グラウェン・ロックベル(ぐらうぇん・ろっくべる)は泳いでいた。
 パートナーのマユラ・スノーフリークス(まゆら・すのーふりーくす)には飛空挺で併走してもらうつもりであったのだが、運営スタッフに止められたため、急遽、2人で並んで泳いでいる。
 パートナーコースに切り替えようと思ったのだが、先にグラウェンが1人コースに受付を済ませてしまったため、マユラが追加で1人コースに参加する形になったのだ。
 マユラを気にしながら泳いでいるため、順位争いからは程遠いところを泳いでいるけれど、中間地点も通り過ぎ、あとはゴールを目指すだけ。
 完泳を目標に、2人は泳ぎ続けた。

 イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は、パートナーであるアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)の参加を知らなかった。
 泳ぎ始めて、自身に近づいてくる気配があり、妨害しようとバタ足を強めた。
「きゃあ!」
 バタ足により跳ね上がった水飛沫に上がった声に聞き覚えがあり、振り返ればパートナー、アルゲオが居たのだ。
「アル!? いつの間にエントリーしたんだ!?」
「イオ、あなたに対抗するために、こっそりとです!」
 訊ねるイーオンにアルゲオはそう応える。
 そうして、互いに前を譲らず泳ぎ続けること、数十分。
 中間地点が来ようとしている現在、併走するように泳いでいるのだ。
「本当にウィザードなんですか……」
「泳ぎは得意だし、体力もあるからな。そこらのセイバーには負けないが自信ある!」
 ぼやくアルゲオに応えるイーオン。
 2人は並ぶように中間地点を越え、泳ぎ続けた。

 休日の暇を持て余したラグ・ナロク(らぐ・なろく)は、学園内で配布されていたビラを手に、砂浜へとやってきて大会に参加した。
(少なくとも暇は潰せるだろう……)
 けれど、スタートして泳ぎ始めると、やるからには上位入賞したいという思いがこみ上げ、自身のペースを守りながらも徐々に順位を上げていくのであった。

 ツインテールにしている黄色い髪はお団子に纏め、白と黒のフリル系ワンピース水着に身を包んだユーミ・ミレミリアム(ゆーみ・みれみりあむ)は只管泳いでいた。
 彼女は大会という名に勝負事を期待し、更に泳ぐことは大好きで参加したのだ。
 目指すは優勝。出来ずとも完泳。
 けれど、もし自分自身が泳いでいる傍で、溺れる者が居たときには救護班が来るまでの間、救助するようにしようと思いながら、ただただ泳ぐ。

『ただ海に来て、のんびりしたかったのよ。泳ぐ気はないけれど』
 威河 冰凪(いかわ・ひなぎ)が海に来た理由はそれだけであった。
 けれど遠泳大会しているからには参加しないわけにはいかないだろうと思い、パートナーのディアス・カーライル(でぃあす・かーらいる)に代わりに泳いでもらい、自分は応援することにしたのだ。
「ま、優勝とまでは言わないけど、まさか、ドベなんて無様な姿さらさないわよねぇ?」
「少しは自分のパートナーを信用しろって」
 スタート前にはそのようなやりとりを交わし、ディアスは泳ぎ始めた。
 飛空挺に乗って併走しても良いものならしようと考えていた冰凪であるが、ディアスに鬱陶しがられたのと、運営スタッフに止められたので、ゴールで待つことにする。
(なんでオレが冰凪の代わりに泳がなきゃならんのだ? いや、応援してくれるのは嬉しい、嬉しいが……絶対自分が海に来たかっただけだろう?)
 ディアスはそんなことを思いながら泳ぐ。
 先頭集団の後ろの方に食いつきながら、周りで起こるトラブルをやり過ごし、中間地点を越え、終盤へと差し掛かった頃、ふと顔を上げるとゴールである砂浜に冰凪の姿が見えた。
「あら、結構頑張るわねぇ」
 動いた口がそんな風に言ったように思えて、少しでも上位に入ろうと、残りの距離をディアスはスピードを上げていった。

(競争という形式で泳ぐなら中々楽しめそうだな……)
 気ままに泳ぎながら、レギ・リーゼリア(れぎ・りーぜりあ)はふとそんなことを思った。
 泳ぐのは得意な方である。
 そのため、折角海で遠泳大会という夏らしい機会があるからには、参加して楽しむことで、気分転換にならないかと考えたのだ。
 周りの皆が上位を目指している中、レギは勝敗を気にせず、自分のペースで泳ぐ。泳ぎまくるつもりはなく、泳ぎきることを目指して、ただ只管泳いだ。