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【2019修学旅行】激突!! 奈良の大仏vsストーンゴーレム

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【2019修学旅行】激突!! 奈良の大仏vsストーンゴーレム

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【第十一章 エピローグ】


 こうして長い一夜は終わった。
 夜通し戦い続けた生徒たちは、次の日全く使い物にならず、旅館で一日中休むことを許された。そしてその夜。
 昨晩、東大寺に向かったのと全く同じバスが、十八時丁度に旅館の前へ止められた。中庭に集められた生徒たちは昨日と異なり、みな一様にうれしそうな笑顔を浮かべている。
 旅館の入り口の自動ドアが開き、小柄な人物が姿を見せた。ゆるやかにカーブした長い髪を背中に垂らし、白すぎて青く翳って見える端正な顔いっぱいに「フキゲン」を浮かべた少女。エリザベート校長、その人である。後ろにはアーデルハイドがこちらは穏やかな微笑みを浮かべてついてきていた。
 校長の顔つきを見て、喜びに満ち溢れていた生徒たちがどよめき、そして沈黙する。
「昨日は皆さん、ごくろうさまでしたぁ。これから皆さんを、豪華料理店に招待しますぅ。さて」
 エリザベートはそこで一旦言葉を区切り、赤い瞳で生徒たちをゆっくりと眺め渡す。
「私の気のせいかもしれませんがぁ、どうも昨晩は生徒たちの意志の統一がされていなかったように感じられましたぁ。中には東洋魔法の権化の味方に回ったものもぅ、いませんでしたかねぇ?」
 何人かの生徒たちがさっ、と顔を伏せる。中には開き直り、堂々と見返すものもいた。東大寺を守ると固く決めたものの心に後ろ暗いところなどないのだから。更に、イルミンスール学園の将来をも見越して、反対したものさえいるのである。
「まあ済んだことは不問にしましょうぅ。しかしぃ、料理店招待は別ですぅ!!!」
 ええ〜! という嘆きのつぶやきがそこここからもれた。何しろ、生徒たちの殆どはつかれ切っていて昼間はずっと眠り続け、朝から何も口にしていないものさえいるのである。
「さあバスに乗りなさあい。自分の胸にたずねて、良心の呵責が起こらないものは堂々とバスに乗れるでしょうぅ。さあ!」
 その時だった。後ろに立っていたアーデルハイドが、エリザベートの頭の天辺に拳骨をお見舞いしたのである!
「い、いたぁ〜い、何するのですかぁ、大ババ様ぁ!!!」
「うるさい! 大ババと呼ぶなと日ごろからゆうておるじゃろ! 全く自分の胸に聞けとはよう言うものじゃ。おまえは肝心なときに気を失って、大仏との戦いには一切関与しておらぬじゃろ! 最後まで見届けていないものが、どうこういう資格などない!」
 エリザベートは殴られた頭を手でさすりながら「そんなぁ」とつぶやいたが、唇をとがらせて黙った。
「さあ生徒たちよ、全員バスに乗るのじゃ。料理は全員が腹がはちきれんばかりに食べても、まだあまるくらい用意してあるからのう!」
 わああああ! という歓声が上がり、生徒たちはわれ先にとバスに乗り込んでいく。
 そんな中、如月 玲奈は昨夜詰め込みすぎたせいで、まだぽんぽんに膨らんだままの自分の腹を見下ろしてから、隣のジャック・フォースを軽くにらみつけた。
「もう、食べ過ぎてきっと何にも食べられないよ〜。ジャックの馬鹿っ!」
「意地汚く詰め込むからだろ」
 言い返すジャックの腹も膨らんでいる。だが、ジャックにとっては質より量が重要なので、食べ過ぎたことに全く後悔はなかった。レーヴェ・アストレイだけはすんなりとまっすぐな腹をして、魔術書を片手に二人を呆れたような顔で見ていた。

 生徒たちがすべて乗り込んだバスが出発する直前に、ひとりの生徒が咳払いをして席を立つ。「二大怪像 奈良最大の決戦」監督の、カレン・クレスティアである。
「えっへん。さて皆さん、これから楽しい食事会です。その前に、このバスの設備をお借りして、昨日の戦いを収めたDVD鑑賞会をいたします!」
 そんなことやってたのかよ! と驚いたような声が上がった。
「あっ」と後方座席で声をあげたのはユリ・スノーウォーカーとララ サーズデイの二人である。この二人も昨夜、撮影班として東大寺の境内を飛び回っていたのだ。ユリが立ち上がる前に、カレンはDVDの再生ボタンを押した。
「皆さんの雄姿、とくとごらんあれ!」
 ジャジャーン、というサスペンス調の音楽とともに始まったそのビデオは、驚くべき代物であった。そのスゴさといったら、監督のカレンもあっけにとられたほどである。
 そこには、何も映っていなかった。
 正確にいうと、何もない静まり返った東大寺の境内で、生徒たちだけが右往左往しているさまが映っていただけなのである。
「あれっ、あれっ!?」
 カレンはDVDのスイッチを押して映像を戻したり、先送りしたが、昨日戦ったはずの仏像どころか、破壊された門や生徒たちの放った火炎すら映っていない。
「やっぱり」
 ユリとララは顔を見合わせて頷いた。二人の撮影した映像の中身も全く同じだったからだ。生徒たちも、あれは錯覚だったのか、夢だったのかとざわめきだす。
「どうなってるの〜!?」
 頭を抱えたカレンの肩を、一番前に座っていたアーデルハイトがそっと叩いた。
「錯覚ではないぞ。魔法の戦いはある種夢のようなもの。我々はあの大仏の掌の上で転がされていたのかもしれないの。けれど、必死で戦ったものたちについた力は確かに本物じゃ。修学旅行は、授業の一環じゃからの。なあ、エリザベート?」
 エリザベートはまだ不機嫌そうな顔はしていたが、頷いた。
「全く、疑り深い生徒たちですわぁ」
「あああ、後世に残る予定だったボクの傑作がー!」
 カレンだけはまだ納得がいかないらしく、DVDのボタンをいじり続けた。
 すると画面がストップし、大仏の顔が画面の中央に大きく映し出された。
 大仏はこちらに向けて思いっきり、舌を出していた。
「きぃぃぃぃ! 大仏め、来年は見ておれぇぇぇぇ!」
 頭をかきむしるエリザベートの金切り声が、車内に響き渡った。

 おしまい。


担当マスターより

▼担当マスター

佐藤かえる

▼マスターコメント

 はじめまして。新人マスターの佐藤かえると申します。

 最初に、リアクションの執筆、公開が遅れてしまったことを謝罪いたします。お待たせしまして、大変申し訳ございませんでした。次回からは期日にきちんと公開できるよう気をつけます。

 今回、緊張の中シナリオガイドを提出させて頂きましたが、参加者の皆さんが掲示板で活発に討論して下さったおかげで、私もあらかじめ考えていた筋をさらにふくらませることが出来ました。
 更に楽しい、また興味をそそられるアクションを寄せて下さってありがとうございます。
 また、アクション欄にマスターあてのコメントを書いてくださった方々、とても励みになりました。ありがとうございます。

 仏像との戦いということで、参加者の皆さんも悩まれたのではないかと思いますが、その分か提出いただいたアクションがバリエーション豊かで、人のつながりを優先したリアクションに昇華できたのではないかと思っております。
 修学旅行シナリオということで、生徒の皆さんに楽しんで頂きたいと思い、アクションはなるべく拾ったつもりです。
 マスターとしては、シナリオガイドでのストーンゴーレムの能力について、もう少し分かりやすく説明すればよかったという反省がありました。もし悩まれた方がおられましたら申し訳ありませんでした。
 また、プロフィール欄においての関係性も拾いきれなかったのではないかと思っております。この方とからみたい、などご希望がございましたら、アクションに書き込んで下さるとありがたいです。

 反省点は、次回のシナリオガイド、およびリアクション執筆に生かしていければと思っております。
 ご参加下さいまして、本当にありがとうございました。

 【魔導人形兵団】の方は称号がありますのでご確認下さい。
 

 今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。