First Previous | 
2 | 
3 | 
4 | 
5 | 
6 | 
7 | 
8 | 
9 | 
10 | 
11 | 
12 | 
Next Last 
リアクション
8.慰霊塔
 たどり着いた場所は慰霊塔だった。
 光の玉は、慰霊塔の中へ吸い込まれるように消えていく。
 そこに1つの名前が刻まれていた。
「岩波ハルオ」と刻まれてある。
「岩波……たしか、定食の名前と同じだな?」
 岩造が顎先に手を当てて、スッとシイナを見る。
「ああ、先頃あった空京の事件で、勇敢に戦った生徒の名だ」
「それって、さっきの……」
 言いかけた皐月。
 七日に袖をつかまれて止める。
「悪霊なんかじゃなかったのですね」
 春美が言って、一同が頷いた。
「戦うことが嫌いなくせに、弱い者いじめが大嫌いな先輩だった」
「きっと……先輩はこれを見せたくて、夜な夜な現れていたんじゃないのかな?」
 と美羽。その手には、3種のアイテムであるギター、本、献立表が握られている。
「ああ。『本当の勇気は武器や力で決するものではない』――彼はきっと、そのことを我々に伝えたかったのだろう」
 とシイナ。
「仲間の力が必要だ、てこと」
 サラ・アーネスト、と彼女は友の名を呼んだ。
 お手製手榴弾を受け取り、慰霊塔の前に供える。
「だから、これは……」
 と言って、いったん苦笑する。
「当面彼に預けることにしよう」
 その様子を見た勇者達は、互いに目を合わせて微笑した。
 自分達がここへ来た目的は、これで本当に達成させられたのだと。
 
First Previous | 
2 | 
3 | 
4 | 
5 | 
6 | 
7 | 
8 | 
9 | 
10 | 
11 | 
12 | 
Next Last