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伝説の焼きそばパンをゲットせよ!

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伝説の焼きそばパンをゲットせよ!
伝説の焼きそばパンをゲットせよ! 伝説の焼きそばパンをゲットせよ!

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 雪だるま王国の面々も、此度の収穫に満足していた。特に自ら伝説の焼きそばパンを得た赤羽 美央(あかばね・みお)は、女王としての栄光を感じていた。
 額にヒールの、後頭部にトウの足跡をつけたルイ・フリード(るい・ふりーど)も、女王から下賜された伝説の焼きそばパン半分を味わっていた。
「へーか! お待たせしましたぁ!」
 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が、焼きそばパンを掲げて走ってくる。その後には童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)が、混乱の中踏まれたのであろう足跡を、体のアチコチにつけていた。
 赤羽 美央(あかばね・みお)は口をモグモグさせながら、小さく「ご苦労」とねぎらった。
「さぁ、お召し上がり下さい」
 クロセルが差し出すけれども、赤羽 美央(あかばね・みお)は動かない。「これで十分」と食べかけの焼きそばパンを指差した。
「そんなぁ。せっかく、へーかのために買ってきたのにー」
 それならと赤羽 美央(あかばね・みお)は受け取った。うれしそうに目を輝かすクロセルにそのまま返した。
「褒美です」
 クロセルはフルフルと首を振った。自分が食べるのでは、せっかく仕込んだ練りワサビの意味がない。へーかが涙ぐむ愛らしいお姿を見るための仕込みなのだ。
「じゃあ、ルイさん、半分だけじゃ、足りないでしょ。しっかり食べないと筋肉を維持できないですよ」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)は、クロセルの心遣いに感謝しながらも、丁寧に断った。
「ご褒美にクロセルさんが頂いたのだから、クロセルさんがお食べなさいな」
 仕方なくクロセルはスノーマンと半分こした。
「ありがとうございますー。美味しいですー」
 女王の配慮に感激してであろう涙を流す2人に、赤羽 美央(あかばね・みお)は、女王としての行動が間違っていなかったことを確信した。

 リア・レオニス(りあ・れおにす)瑞江 響(みずえ・ひびき)と校舎の屋上でパンをかじっていた。
 日当たりの良い屋上は、絶好のランチスペースで、他の生徒も昼食を広げていた。
「もうちょっとだったんだ」
 響はサンドイッチをくわえて悔しがる。
「かなりの混雑だったからな。買えなくっても無理ないさ」
 リアはゲットした焼きそばパンを美味そうに食べる。伝説の冠を裏切ることのない美味な焼きそばパンだ。
「本当に買おうと思えば買えたんだよ」
「へぇ」
「ただその時にさ、いきなりパンが降ってきたんだ」
「うぐっ」
 喉を詰まらせたリアの背中を、響が優しくさする。
「ほ、ほう、それで?」
「つぶれたパンをそのままにしとくわけには行かないだろ」
「まぁ、そうかもな」
「味は変わらないんだから買ってきたよ」
 リアは黙々と焼きそばパンを口に運ぶ。
「全く、食べ物のパンを放り投げるなんて、どこのどいつだよ。分かったら、徹底的にぶちのめしてやる」
 竹刀を振ると、小気味良い風斬り音がした。
「まぁ、過ぎたことを覚えていても仕方ないさ。焼きそばパン、食えよ」
「良いのか?」
 響はありがたそうに受け取った。
「元々、分けるつもりだったんだから。そっちのつぶれたのをくれよ」
「悪いな」
「気にするな」
 リアは、文句を言うことなく、中身のはみ出しかけたカレーパンをかじる。ただし響が竹刀を振るたびに、ピクッと背筋が伸びた。

「みんなー、おまたせー」
 芦原 郁乃(あはら・いくの)は、いくつもの袋を抱えて、教室に戻ってきた。
 秋月 桃花(あきづき・とうか)蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)は、すっかりテーブルの支度を整えていた。
「買えたのですね」
 桃花の言葉に、郁乃は自慢げに胸を張った。ただし年齢の割には、いくぶん寂しいそれではあるが。
「3つもありますが、そんなに売ってもらえたのですか? 確か1人2つ限定だったような」
 マビノギオンが小首をかしげると、郁乃は「そうだよー」と答える。
「これが伝説の焼きそばパン」
 袋を開けると、香ばしいソースの香りが漂った。
「買えないかなーって思ったんだけどさ。親切な人がいて、私を購買部の前まで放り投げてくれたの」
 とても親切とは思えない行動を、あっけらかんと語る郁乃に、桃花は「怪我は無かったのですか」と驚く。
「うん、むしろその前に、お尻の下敷きになった時の方が危なかった。あんなでっかいお尻があるんだねー」
 次から次へと面白そうな話が続く。
「で、こっちが焼きそばバーガー、こっちは韓国風焼きそばパン」
 残りの2つを開けると、これまた良い香りが周囲に広がる。
「こちらも購買部で売っていたのですか?」 
「ううん、なんだったかなー、ウニモグ?」
「車ですか?」
「車は車なんだけど……、うーん、エコマグ?」
 クラスメイトが「ああ!」と思い出す。
「リサイクルのマグカップ」
「いや、肥料、肥料」
「エンジンパーツじゃない?」
「ね、郁乃、早く、次の問題」
 そんな掛け合いをする郁乃達を、秋月 桃花(あきづき・とうか)蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)は、にこやかに見つめていた。
「クイズじゃないって! そうそう、エニグマ! エニグマ!」
「漫画の……」と言いかけたクラスメイトを、あわてて郁乃が止める。
「購買部の近くで、移動喫茶エニグマってお店が開いてたの。そこで売り子をしてたソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)さんが、勧めてくれたんだ。どっちも良い匂いがするし、買っちゃった」
 秋月 桃花(あきづき・とうか)が丁寧に切り分けて、食べ比べが始まった。
「やっぱり伝説の焼きそばパンがおいしいね」
「そうかな、私は焼きそばバーガーが好きだなー」
「韓国風焼きそばパンも美味しいよ。味に深みがあるって感じ」
 僅差ながらも、1:伝説の焼きそばパン、2:焼きそばバーガー、3:韓国風焼きそばパン の順位がついた。
 こちらこそ本当の食べ比べだったが、惜しいことに椿 椎名(つばき・しいな)の耳には届かなかった。