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【新入生歓迎】ゴブリン軍団を撃退せよ!

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【新入生歓迎】ゴブリン軍団を撃退せよ!

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「それでは皆さん、かんぱーい!」
 琳 鳳明が高く声を上げて、紙コップに注いだジュースを掲げる。作戦に参加した新入生たちが一斉に返事を返し、それぞれが好きに手をつけていく。
「いやあ、一時はどうなることかと思ったけど、なんとかなってよかった」
 レイシャ・パラドクスがサンドイッチをつまみながら言う。
「少しは反省してください。まったく……」
 ルーク・カーマインのあきれ顔。
 その光景を眺めて、セラフィーナ・メルファ(せらふぃーな・めるふぁ)がほほえましそうに笑みを浮かべた。
「準備しておいて、よかったですわね」
「まーね。やった甲斐があったってもんだね」
 鳳明もにこにこと笑っていた。
「はあ……」
「どうしたの?」
 小さくため息を漏らす正木 エステルの姿に気づいた刹那・アシュノッドが、短く声をかける。
「いえ、人を探していたのですが、どうやら、ここには居なかったみたいで」
「戦場で人捜しって、変わってるわねえ。ゴブリンと仲の良い人だったとか?」
「分かりません。ですが、まともなことをしているはずがないと思います」
「何それ。いったい、誰を捜しているの?」
「実は……」
 エステルが言いかけた時、
「戦いを見せてもらったよ。いい戦いぶりだった」
 ふと、横から声をかけられた。松平 岩造(まつだいら・がんぞう)だ。
「は、はあ……ありがとうございます」
 刹那が振り返り、軽く頭を下げる。
「かしこまらなくてもいい。先輩として、後輩がどんな風に戦うのか興味があっただけだ。いざとなったら、助けに入ろうと思ってたんだが、その必要は無かったみたいだな」
「いえ、私たちはいつもと同じように戦っただけです。作戦を立てて指示してくれた人たちが居たから、これだけの結果が出せたんですよ」
 と、一角を示した。


 刹那が向けた視線を向けた先では、小暮 秀幸と金本 なななが先輩たちに囲まれている。
「なかなかの指揮でしたわ。分断をやり通せたのは兵士たちの力ですけども、あれだけ思い切った作戦を立てられるとは、驚きましたわ」
「ああ。軍として動かす事ができていた。もっとも、隊列を乱すものがいないでもなかったが」
 島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)とダリル・ガイザックが秀幸に話しかけている。
「自分の指示が徹底していなかったせいです。恐縮です」
 褒められながらも、その背後からはクレーメック・ジーベックがその言動を観察しているのだ。これは怖い。
「金本さんも、どんな気分?」
 なななに問いかけているのは、ルカルカ・ルー。
「うーん、緊張したけど、でもみんなのおかげで……」
「そうじゃなくて、戦友ってものを手に入れた気分は?」
 にっこりわらって、ルカルカが問う。
「あ……そうか、そうだね。そういえば、そうだ」
 回りを見回して、今気づいたとでも言うように、なななが口を押さえる。
「夢中すぎて、少し気が抜けているみたいね。でも、始めてなのにすばらしい結果だったわ」
 島本 優子(しまもと・ゆうこ)が、そっとなななに言う。なななは照れたように頭を掻いた。アホ毛がびょんびょんと揺れる。
「あ、ありがとうございます。なんだか、終わってみると現実味がないかなーって」
「まだシャンバラでの日も浅いでしょうし、いろいろと大変……」
 と、優子が言いかけた時。
 沈みかけた夕陽に届くような、大きな悲鳴が聞こえた。


 時は少し遡る。
「毎日をムダにしないためには、目標を決めておいた方がいいぞ」
 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が、新入生を前に話を続けている。
「強くなるにしてもどれぐらい強くなるか、偉くなるにしてもどれだけ偉くなるか、できるだけ具体的に考えるのもいい。たとえば、そうだな……」
 牙竜が視線をさまよわせ、上級生の姿を捕らえた。そこにいたのは、
「ところで如月くぅん? 君がくれたこの像なんだけどね……」
「し、師匠。これは、そのー……」
 師王 アスカ(しおう・あすか)が、自分によく似た像を手に、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)に詰め寄っている。その表情はぴくぴくとこわばっている。
「……この胸は一体、どういうことかしら? 挑戦状と受け取って構わないの?」
 アスカが示す像の胸元は……まあ、なんというか、その部分だけ、本人に似ても似つかない状況になっている。
「ちょうど良いわ。新入生が見ていることだし、戦闘の見本でも見せてあげましょう?」
 すう、っとアスカが像を振りかぶった。その体勢になると、不思議と像は鈍器にしか見えない気もする。
「うぎゃああああ!」
 優子が聞いたのはこの悲鳴だ。
「あそこで殴られているのは、西ロイヤルガードの如月正悟。あれでも、それなりに偉い立場のはずなんだ」
 その様を見て、牙竜がいくらか自身なさげに言った。
「もう片方は……ま、まずい! 師王アスカ……い、いや、殺意様だ! 普段は芸術家として評判な令嬢だが、殺意のオーラに目覚めた時は近づいてはならない!」
 妙に説明的なことを言いながら、牙竜が急いで逃げ出そうとする。が。
「完全に聞こえてるんですけど? ちょーっとこっち向いて見ましょうか?」
「く、こうなったら……」
 アスカが迫る。牙竜が振り返り、構え……
「あ、あの!」
 と、そのとき、クローラ・テレスコピウムが手を上げ、ふたりの間に割って入った。思わず、アスカと牙竜が手を止める。
 緊張と恐れで大きく深呼吸してから、クローラはふたりに言った。
「……どこか、よそでやってくれませんか」
 まさに正論だった。