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リアクション
7.戦闘兵科
「どんどんいきましょう。
続いては、コミュニティ『戦闘兵科』のPVです」
画面にCG、フレームワークで映る建物が、ぐるぐると回る。建物内部の各所には、「制圧対象」というマーカーが付された赤い光点が明滅していた。
建物の横に、人型のアイコンが並ぶ。横に「突入部隊」という表示。
視点が切り替わり、いくつもの液晶モニタが並ぶコンソールパネルと、その前の席に座るセルマ・アリス(せるま・ありす)の姿が出てきた。
セルマは、コンソールパネルから生えているマイクに顔を寄せ、口を開いた。
「状況開始」
暗がりに整列するレイヴ・リンクス(れいう゛・りんくす)を含むパワードスーツ着用の突入部隊が画面に映り、ヘルメットを被った。
同時に、画面隅に「00:00:00」が表示され、カウントを開始し始める。
スナイパーが、目標となる建物の歩哨に狙いを定めた。「プシュ」という空気の抜けるような音が鳴り、同時に歩哨がその場に転倒する。
隊長らしい者が合図をすると、パワードスーツを装着した突入隊員が建物に接近し、ドアの蝶番を撃ち抜くと同時に戸板を蹴倒して突入した。
「パワフルっつーか、ラフだよね」
「兵法巧遅よりも拙速に、って事だろう」
「いや、ありゃ巧くて速いわ。
あんな速くて荒っぽいのにちゃんとツーマンセル隊形は維持しているし、常時誰かが周囲警戒してるから隙がない」
「訓練されてるな」
「『戦闘兵科』は、確か『軍事訓練』のコミュニティだったな。さすがだ)
ドアを蹴り開けて、ライフルに装着されたマグライトの光が室内の壁を走って「クリア!」と宣言──そんなカットがいくつも差し挟まれた。時折ドアが開くと同時に銃撃が飛んでくることもあるが、グレネードや飽和攻撃、あるいはパワードスーツの装甲に頼っての強行接近後に至近距離からの「制圧」などで敵勢力を片っ端から「無力化」していく。
「制圧」「無力化」──それは「戦い」でさえありえない。圧倒的火力にものを言わせた、あまりにも素早く効率的で、手際の良い「作業」だった。
「アルファ、クリア!」「ブラボー、クリア!」「チャーリー、クリア!」「デルタ、クリア!」「エコー、クリア!」……
無線で飛び交ういくつもの「クリア」の宣言の後、「オールクリア、制圧完了、状況を終了する」というセルマの声が響いた。
突入した時と同様、部隊は迅速に建物から離脱していく。
──「状況終了」と同時に、画面隅のタイマーは停止していた。「状況」が始まってから5分と経っていない。
画面が暗転し、白い文字が浮かび上がった。
「安全を守る迅速な打撃力 /戦闘兵科」
「なかなかカメラ映りいいじゃないか、隊長?」
客席の隅で、ニヤニヤしながら如月 正悟(きさらぎ・しょうご)がセルマを冷やかした。
「勘弁してください。あれ人手が足りなかったんで仕方なく……表に出るのは俺の柄じゃないってのに」
「次はお前が主役の映画作るよう映研に進言してやろうか?
カンフーアクションからエロエロなサスペンスまで、ジャンルは選ばせてやる」
「あの、全部イヤです」
セルマは心底嫌そうな顔をした。
「本映像を企画されたレイヴ・リンクスさんにお話を伺います。
パワードスーツ部隊の突入作戦ですが、大迫力ですねぇ」
「数は力、というのがご覧頂けたと思います。もっとも、その数もそれぞれがきちんと動かなければ、ただの的の集団にしかなりません」
「一糸乱れぬ集団行動、お見事でした」
「しかるべき訓練をすれば、誰でもあの程度の動きは出来るようになります。『戦闘兵科』の訓練が目指すのは、作戦の成功と、100パーセントの生還です。
興味があれば、気軽に声をかけて下さい。
共同作戦の申し出もお待ちしています」
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