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四季の彩り・ぷち~海と砂とカナヅチと~

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四季の彩り・ぷち~海と砂とカナヅチと~
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リアクション

 
 第12章 BBQパーティー!!

「ふ〜、海開きだぜ。この瞬間を待っていたぜ」
 両手を腰に当て、健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)は正面の海に対して感慨深く言った。服装は赤いアロハシャツ。熱い自分には相応しい。
(とはいっても、俺は泳げないから……)
 彼は、背後に用意してあるバーベキューセットと集まった皆を見渡した。1人だけじゃさすがに退屈だし、と誘いをかけたのだ。
「バーベキューパーティーを開催するぞ!」

「海開き……夏って感じですわね! 暑くなってくるのは嫌ですけど……」
 初めてのバーベキューを、八塚 くらら(やつか・くらら)はとっても楽しみにしていた。念のため、と彼女は熱中症対策で持参したパラソルを立て始める。彼女の脇では、緋田 琥太郎(あけだ・こたろう)が浜辺を見回している。
「ヒャッホウ、海だ! 思いっきり楽しむぜー!」
 ――そして水着美女! 目の保養目の保養。
 内心でそう言葉を続けながら、バーベキューセットからは背を向けてセレンフィリティ達をはじめナイスバディな美女を堪能する。
 そこで、水着姿の少女が3人、こちらにやってくるのが見えた。天鐘 咲夜(あまがね・さきや)セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)は勇刃の前で歩みを止め、それぞれに言う。
「お、お待たせしました……」
「お、お待たせいたしました……」
「うん、どうしたんだ、咲夜、セレア?」
 どこか恥ずかしそうな2人に、勇刃は一度きょとんと瞬く。その時、冠 誼美(かんむり・よしみ)は無邪気に走りこんできた。
「あ、お兄ちゃん、見てみて! 私の水着、どうかな? 似合う?」
 ピンク色のビキニ姿で、くるりと一回転。
「え? 水着?」
 言われて、勇刃は改めて3人の水着姿を眺めた。咲夜は赤いビキニを、セレアは青いビキニを着ている。
「健闘くんのために選んでみたんですけど、この水着、似合いますか?」
「咲夜様と香奈恵様が選んでくださった水着ですが、いかがですか?」
「うん、凄く、なんていうか……」
 咲夜達にも水着の感想を求められ、勇刃は照れたように頬をぽりぽりとかく。
「麗しい3人の天使、今は目の前に揃っているぜ!」
 ――『似合う』なんて使い古されているコメント、勇刃はしないのだ。
「そ、そうですか、よかった。ありがとうございます」
「そうですか……ありがとうございます」
 咲夜は嬉しそうに、安心したような笑顔を浮かべる。セレアはポッ、と頬を染め、誼美は少しはにかんでお礼を言った。
「えへへ、ありがとう。ちょっと恥ずかしいけど、でもお兄ちゃんがこういうのが好きなのかなと思って、挑戦してみたよ! 思い切っちゃってよかった。うん、今日もいい日差しだね! お兄ちゃん、一緒に頑張ろう!」
「今日も思いっきり頑張りましょう! うふふ!」
 誼美は手でひさしを作って太陽を見上げると、集まっている皆に混ざっていく。咲夜も機嫌よく、それに続いた。残ったセレアはまだ恥じらいを残した表情で勇刃に言う。
「肌を晒すのは少々恥ずかしい気分ですが、健闘様が喜んでいただけるのなら、いくらでも、お見せ致しますわ……。どうか、わたくしの魅力をとくとご覧くださいませ、健闘様……」
「え、えーと……」
 なかなかに大胆な発言に、勇刃は困ったようにたじろいだ。恋人同士でも、こう直球で言われるとどきりとしてしまう。そして、誤魔化すように慌てて話題を変えた。
「あ、そんなことより、早く食材を焼かないと」
 皆に混じり、バーベキュー用の網の上にそれぞれが持ってきた食材をお披露目していく。
「俺はベーコンのアスパラ巻きを持ってきたぜ! こういうのはバーベキューだと普段よりおいしく感じるような気がするしな!」
「私はかぼちゃを提供だよー。焼いて食べたりとか、おやつとしてもおいしいよね」
 琥太郎と月音 詩歌(つきね・しいか)が言い、くららも持参の袋を取り出す。
「私はマシュマロです。食後のデザート? 的な、オヤツ用に。焼きマシュマロとかおいしいですよね」
「お? まともなバーベキュー用の食材は?」
 以上、という感じのくららに、琥太郎があれ、という顔で聞く。
「持ってくるわけないじゃないですか。面白くないですし」
 折角、皆で食材を持ち寄るのだから闇鍋的な要素があった方が面白い。
「ボクは向日葵の種を持ってきたのー。大好きなのー」
『…………』
 陳宮 公台(ちんきゅう・こうだい)の肩に乗ったハムスターのゆる族、キャロ・スウェット(きゃろ・すうぇっと)が小さな袋に入った向日葵の種を皆に見せる。まさかの食材である。しかし納得の食材でもある。
「私は魚ですな」
 公台が、何とも反応に困る沈黙を破って魚の入ったスチロール容器を示した。龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)も、重量のありそうなビニール袋を出す。
「玉ねぎを持ってきた。しかし、肉は……今のところベーコンのアスパラ巻きしかない訳だが……もしや、現地調達か?」
「それなら大丈夫だ! とりあえずシュラスコと野菜は俺が用意しておいた!」
 勇刃が分厚く切られた牛肉や豚肉、鶏肉が串に刺さったものをどんっ、と出して皆がおおー、となる。さすが主催。主催が肉持って来なかったら現地調達なバトルシーンが追加されるところであった。
「さて、張り切ってやるか! 火をつけて……」
「それなら、わたくしに任せてくださいませ! もちろん、ちゃんと加減しておきますわ!」
 そう言って、セレアは爆炎波で炭に火をつけた。
 ……何とかコンロはバラバラにならずに済み、バーベキューが始まった。

 ベーコンの焼ける食欲のそそる良い匂いがしてくる。最初に焼けたアスパラ巻きを皆が各々食べ始める頃、咲夜と勇刃の焼くシュラスコも表面がいい感じになってきた。
「まあ、健闘様、なんて素晴らしい腕前……。健闘様のことを、もっと尊敬してきましたわ……」
 トングで適宜ひっくり返す勇刃の手さばきに、セレアはうっとりとしている。
「野菜切れたよー。簡単に、大きめに切ってみたよ!」
 薄桃色のビキニを着た詩歌がカットされた野菜を持ってくる。かぼちゃは焼けにくいから、こちらはちょっと厚み薄めだ。
「あ、じゃあ早速焼くね!」
 誼美が空いた場所に野菜を置いて焼き始める。向日葵の種も端で香ばしく。
「バーベキュー楽しいのー♪ 沢山食べるのー♪」
「キャロ殿、あまり耳元で叫ばないで頂きたいのですが」
 水着に浮輪、それにシュノーケルを首にかけてキャロはご機嫌だ。その声を間近にして公台は顔をしかめるが、鼻歌を歌いだされて溜息を吐く。見てないとどうなるか分からないから、と保護者としてついてきた廉も、キャロに言う。
「キャロ、食いすぎて動けない。なんて事になるなよ」
「わかったのー。気をつけるのー♪」
 ご機嫌で、キャロは素直に返事をする。でも、あまり守りそうにもないと思ってしまうのは何故だろう。
「陳宮、ところで暑くないのか」
「……暑くないわけ無いでしょう」
 廉に聞かれ、公台は少々仏頂面でそう答える。海でも、何故かいつもの服だ。正面から見ると髭が在る為に男性に見えるが、着物を重ね着しているその姿は後ろから見ると女性のように見える。
 答えからして暑いらしいが、汗ひとつかいていずにしれっとしている。熱中症に気をつけた方が良いかもしれない。
「よし! 肉が焼けたぜ!」
「おお!」
 勇刃の声に琥太郎がテンションを上げ、早速肉を何本もゲットしてかぶりつく。野菜はまあ、1割くらいの割合で食べればいいかな。
「まずは肉だよ肉。とりあえず肉食ってりゃいいんだろ!」
「うお待て! それは俺の肉だ!」
「いや俺の肉だ!」
「キャロも食べるのー!」
「「……はい。」」
 肉の争奪戦をしていた勇刃と琥太郎はぴたりと止まり、それぞれちまっ、と一切れずつキャロに肉をあげた。小指大だ。
「ありがとーなのー♪」
 そんな光景を、くららは野菜を食べながらのんびりと眺めていた。どちらかといえば彼女は、こうしてわいわいやっているのを見ているのが好きだ。肉と野菜の割合は大体3:7くらい。
「あら、あれは……」
 そこで、くららは海側から飛んでくる黒いペガサスに気がついた。ペガサス――アンブラは勇刃達の傍に着陸し、彼にまたがっていた赤羽 美央(あかばね・みお)がモフタン連れで降りてくる。美央は両腕にぴちぴちとした魚を抱えられるだけ抱えていた。
「良い匂いです。このお魚も焼いてもらいたいのですが……良いでしょうか?」